「ア・ニュー・スピリット・イン・ペインティング」展
“A New Spirit In Painting”
1981年1-3月、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された新表現主義の台頭を告げる展覧会。
企画はクリストス・M・ヨアヒミデス、ノーマン・ローゼンタール、ニコラス・セロタ。彼らは展覧会の企画段階から作家訪問やディスカッションなどで調査を重ね、現代のヨーロッパ美術が置かれた複雑な状況を把握するように努めた。
展覧会の主な狙いは、作品の形式ではなく精神の流れを重視し、歴史的パースペクティヴのもとで新しい絵画の方向性を考察することである。
展示は38名の出品作家を世代別に概観できるもので、構成の中心には当時の美術界を席巻した新表現主義の動向が据えられた。まずは新表現主義の作家たちが、先導者(バゼリッツ、ペンク、キーファーら)、まだ大衆への認知度が低い若い世代(ジュリアン・シュナーベル、ザロメら)に分けられ、この二つの世代に影響を与えた60年代から活躍する作家たち(ステラ、トゥオンブリー、アンディ・ウォーホルら)が加えられたほか、歴史的射程を持たせるため、より年長の画家たち(ベーコン、バルテュス、デ・クーニングら)も展示に含められた。
展覧会開催の動機には、官僚主導で政治に左右される大型美術展や、現代美術の難解化、アカデミズム化への批判があった。同様のコンセプトは、ヨアヒミデスとローゼンタールの企画による「ツァイトガイスト」展(1982)へと継承された。
参考文献
The Iconic Building,Charles Jencks,Rizzoli,2005
『10+1』No.49,「『批判的工学主義』のミッションとは何ですか?3 歴史・メディア編」,南後由和,INAX出版,2007
著者:中島水緒