ハイパー・リアリズム
Hyper-Realism
1960年代中頃から1970年代中頃にかけて盛んに試みられた、キャンヴァスに投影された映像をなぞって描かれたリアリズム絵画。別称「スーパー・リアリズム」。主にこの名称はヨーロッパで用いられ、アメリカでは同種の傾向を「フォト・リアリズム」と呼ぶことが多い。
代表的な作家としては、ロバート・ベクトル、リチャード・エステス、マルコム・モーリーらが挙げられ、また同様の視点からポリビニール彫刻を制作するデュアン・ハンソンやジョン・デ・アンドレアを含めることもある。写真映像のなかに真実を追求しようとした彼らは、一様に陳腐なイメージの平板な絵画を量産したが、概してその作品は批評家受けせず、また「ポップ・アート」ほどには大衆の支持も得られなかった。ただし、一様に無機的なイメージを追求するその姿勢は、同時期のミニマリズムとの共通を指摘されてもよいだろう。
「アプロプリエーション」が主流を占めた1980年代、ジャン・ボードリヤールが提起した“超現実”としての「ハイパーリアル」は作家たちにとって強力な理論的根拠のひとつであったが、恐らくその問題系は「ハイパー・リアリズム」とは似て非なるものである。
執筆者:暮沢剛巳