チャンス・オペレーション
Chance Operation
コインと8×8のチャートを使用したケージの《易の音楽》(1951)が、この手法を全面的に導入した最初の作品とされる。8×8チャートは曲名通り儒教の『易経』からとられており、音の高さ、リズム、強度、速度、レイヤー数をコイン投げによって決定するために使われた。 ケージはこうしたチャンス・オペレーションをスコアの作成だけでなく、レクチャーや実生活における選択にも用いた。さらに、この手法はケージのパートナーである舞踏家のM・カニングハムや、ケージの生徒を含むフルクサスのメンバーによって、ダンス、パフォーマンス、詩、写真などに適用されていった。 チャンス・オペレーションの考案以後、ケージはスコアの作成以外の音楽実践にも偶然を取り入れる、いわゆる「不確定性」へと進んでいった。 参考文献
『サイレンス』,ジョン・ケージ(柿沼敏江訳),水声社,1996
『実験音楽 ケージとその後』,マイケル・ナイマン(椎名亮輔訳),水声社,1992
『聴取の詩学 J・ケージからそしてJ・ケージへ』,庄野進,勁草書房,1991
『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』,白石美雪,武蔵野美術大学出版局,2009
著者:金子智太郎