遊動生活
遊動生活ともいう。動物の空間利用方式の一つ。運動能力に比較して相対的にかなり広い地域を巡回利用するもの。その広さや巡回利用のしかたはさまざまである。元来は人間の遊牧に似た生活をする有蹄類についていわれたが,今日ではもっと広い意味で使われる。遊動をする動物は原則として拠点をもたず,日によって利用区域を異にするが,年間を通してみればかなり規則的な巡回パターンを示す生活を営む。その地域を排他的に占有することはないが,利用のしかたは多少とも占有的である。 サルや類人猿は他の動物たちと同様、あまり大きくない集団をつくり、一定の範囲内を移動して暮らしてきた。どれほど快適な場所であろうと、長く滞在すれば荒廃する。食料はなくなるし、排泄物で汚れてしまう。だが頻繁に移動すれば、環境を過度に汚染するのを防ぐことができる。汚染された環境もしばらくすれば元に戻る。時間が経ったらまたそこに帰ってくればいい。
このように移動しながら生きていく生活を遊動生活と呼ぶ。遊動生活は高い移動能力を発達させてきた動物にとって、生きるための基本戦略だった。