近代美学入門まとめ
①芸術
②芸術家
③美
④崇高
⑤ピクチャレスク
①「芸術」②「芸術家」
古代から中世まで「アート」という言葉は「技術」を意味していた 近代になると、「アート」が「芸術」を意味するようになり、同時に「芸術家」という言葉が生まれる それにともなって、芸術とは職人仕事とは違って作者の内面を表現したものであり芸術家とは独創的な世界を創造する天才という考え方が広まった 芸術家が神に比類する存在まで祭り上げられる
③「美」
芸術の概念が誕生した時に、芸術を他の技術から区別する特徴として考えられたのが「美」である 近代における美の概念の転換
美しいものとは均整のとれたもの(プロポーション)であり、美はもの自体が持つ性質であるという思想が支配的であったが、美はそれを感じる人の心の中にあるという思想が優勢になる(なにを美しく感じるかは人それぞれ的な、美は主観的なもの) このことは美が道徳や有用性から独立した、自律した価値とみなされるようになることを促した ④「崇高」⑤「ピクチャレスク」
美が主観的なものと考えられるようになるにしたがって、それまで美の概念に当てはまらなかった不規則で無秩序なものに対して独特の魅力が見出されるようになる
大自然が引き起こす恐怖と混じり合った高揚感は「崇高」と呼ばれるようになった さらに、崇高ほど巨大で凶暴な自然ではなく、比較的穏やかな自然の景観に対して「ピクチャレスク」という美意識が生まれる
「ピクチャレスク」は不規則かつ無秩序な自然の一部を切り取って統一感(調和)を与えるような人間の美意識である ピクチャレスクは崇高の概念から発展したものだが調和があるという点では美と共通している
こうして「美、崇高、ピクチャレスク」という近代の美意識が成立した
これらは近代ヨーロッパ特有の美学であり、いつの時代のどこの地域でも当てはまるものではない。しかしこれらの価値観(アート=芸術、芸術家の独創性、美の主観性、自然への美意識、風景)は現代の我々にも常識化している部分であり、ゆえに一旦相対化する必要があるんじゃなかろうか、ということでこの本を書いたところもあるみたいな話
以上は『近代美学入門』の”おわりに”からだいたい抜粋してあります
🌾私なりの補足
近代美学入門で少しわかりづらいのは、「美」という言葉の取り扱いについてだろう。
この本は美学入門なので、「美」という言葉がたくさん出てくる。それぞれの章で扱われている「美」という言葉は、《芸術を他の技術から区別する特徴として考えられた「美」》《調和のとれたで滑らかな「美」》《主観的な美》《崇高美》であったりする。これら全ていっしょくたな「美」として読むと混乱する。
例えば、崇高やピクチャレスクの章でこれらにに対比される”美しいもの”というのは近代以前からある考え方の調和のとれた、滑らかな美のことであったりする。ただ、現代での”美しいもの”は、崇高さやピクチャレスク的なものも網羅される。この本はそもそもそういう経緯について書いてくれている本なのだが、これらそれぞれの美は「美」という言葉に集約せざるを得ない。つまりそれぞれの「美」にそれぞれの内容があるのだが、それが全て「美」という言葉であらわされるので少し混乱する人もいるかもしれない。