論文日誌
論文ダウンロードしてばっかだけど読んでないので日誌にしてまとめることにする。
読み方
アブストラクト→結論→実験結果(方法)
ここまでやったら整理して、興味が惹かれれば他の部分も読んでいく
どんな論文?
方法
結果・結論
関連研究
疑問
感想
2023/05/16
フォーマットに沿ってないのであんまり利用可能性は高くないが、このぐらいの粒度でも良さそう
2022/11/27
どんな論文?
カイ・T・エリクソン(1976)"Everything in its Path"で提起された概念「集合的トラウマ(Collective trauma)」を現代日本の文脈で解釈、検討し直す。 EiiPの心理学的、社会学的な位置づけと批判
これに対して共同性に着目することで、個別の立ち位置を確保する
キーワード
共同体の喪失
結果・結論
関連研究
疑問
感想
EiiPはその際に聞き取った500名を超える膨大なインタビューと綿密なフィールドワークから執筆された。
すご。
かりふぁ.icon500名と名前を交換して質問するのすごいな
2022/01/30
激オモロ論文 これはinterestingのほうのオモロです
どんな論文?
所謂「心理テスト」(本論文では「通俗的心理テスト」)のフィードバックが自己イメージや行動に影響するかを調べた
また、学術的心理テストの結果とどう異なるかを検討した
外向的であると偽のフィードバックを受けた女子学生は、自らを外向的であると考え(自己イメージ)、初対面の人物に対して外向的に行動するようになることを示した。
行動への影響は学術的、通俗的どちらも同じであり、心理的安寧への影響では通俗的心理テストの方が高かった。
方法による問題点を調べるため補足調査を行い、考察の妥当性を高めている
方法
通俗的心理テスト、学術的心理テストの二種類を使う
それぞれに選択肢形式と自由回答形式を用意する
そのうち(4つ)のいずれかに回答し、内向的/外向的とする偽のフィードバックを受ける
その後、初対面の人物(サクラ)と待合室で同席したときの行動(3分30秒間)を観察し、3人の評価者が評価する。
サクラは話しかけないが、入室と同時に被験者に会釈する。
3分30秒経ったら被験者を呼び出し、自己イメージ、結果の納得度、心理的安寧について質問紙調査を行った。
実験計画は2*2*2の三要因計画(8条件)、被験者は64名(8条件に8名ずつ無作為に振分け)だった。
また、フィードバック文を現実的なものに近づけるため、それぞれについて個別に外向性/内向性のフィードバック文を用意した。
結果、通俗的心理テストと学術的心理テストではある程度異なるフィードバック文になった。
このフィードバック文の違いによる結果かどうかを調べるため、フィードバック文の望ましさ等の補足調査を行った。
結果・結論
どちらも偽のフィードバックに自己イメージが影響された。
通俗的心理テストの場合の方が強い傾向があった
学術的通俗的に関わらず、フィードバックの結果によって行動が(外向的/内向的に)影響された
初対面の人物に対する行動について、複数の指標で結果のフィードバックに影響されていた。(p<.05)
全体として、結果の納得度(すなわち、偽のフィードバックに対しての納得度)は高かった
これはテストの形式の違いを超え、バーナム効果が検出されたことを意味する
心理的安寧は通俗的心理テストの方が高かった。
通俗的心理テストの方が“楽しく”やれた、など。
補足調査によって、フィードバック文の違いや望ましさによって左右されたものではないと考えられる。
筆者によるまとめ
①通俗的心理テストの影響は軽視できないものであり、“気軽な楽しみ”に留まらず自己成就現象を引き起こしている。
妥当性に疑いがあることを考えると、その点で、通俗的心理テストへの否定する立場は正当性があるかもしれない
通俗的心理テストの結果のフィードバックが行動にまで影響するかどうかという問題を扱った研究は少なく、その点で貢献できた
②心理テストのフィードバックは、それが偽であろうと、テストの種類や形式を超えて納得できるものと捉えられた。
③通俗的心理テストのほうが、学術的心理テストよりも、心理的安寧を与えることが示された。
通俗的心理テストが、確かに楽しみを得られるものであることを意味している。
本研究の知見の一般化の際には、次の二点が問題(懸念)として上げられる。
被験者が女子の大学生だけに限られ、それ以外の人々にどこまで当てはまるか定かではないこと
本研究は実験室実験であり、日常的な場面にどこまで通じるものであるかは定かではないこと
関連研究
バーナム効果(Dickson,&Kelly 1985 :Goodyear1990 他展望論文) 待合室の技法 (Fazio,Effrein,&Falender,1981) 大村(1992),工藤(1990),Halperin&Snyder(1979)等
感想
め~~~~っちゃいいんですよこれ。研究テーマも面白いし、何より実験計画をどうするかっていうのの苦心というか、練り方がすごい良い。
めちゃめちゃいろんな角度から分析して、より多く検討しようという感覚が見えて惚れ惚れしちゃうよね
まぁぼくは統計の数値の意味あんま自信なくて、操作に妥当性があるかはちょっとわからないんだけど……
でも少なくとも、一読した段階では妥当性ありそうな感じがする
傾向だけになってるとことかもあるけど、他の部分から複合して確かに考察出来そうなんだよな~
素晴らしいのが、異論、反論として考えられる本研究の弱点を、補うような補足調査を行ってるとこですよね。
こう、なにかねちっこい感じの、可能性潰してやるぞ!という感じが見受けられる
ただ、「外向性のフィードバック文の方が望ましい」と考えられそうな結果が一個出てたんだよな。
コレに対してその一つ前の結果持ってきて、「望ましさによって左右されるなら心理テストの種類の違いの方が行動に影響するはずだ」って考察するのはもはや感動すら覚えるな。
合ってる間違ってるは別にして、研究者がこう考えられる、と絞り出すの良いよね……
一般化は早いんだけど、こっから教訓を得るとすると、「僕らはどのようなテストだろうと結果に納得し、その結果に沿うように動き始めてしまう」ということだな。
一般化は早いんだけど(2度目) 教訓として気をつけてもいいような気はするよね。
は~~面白かった。ねよねよ。
2021/12/27
あまりにも面白くて読みたくなったし書きたくなった
どんな論文?
コミュニケーションにおける非言語行動の内、カイネシックス(身振り)を取り扱う
カイネシックスの中でも、エンブレムと言われる、文化的に定められた身振りを検討する
ポール・エックマン(1979)が行った分類のうちの一つ
インタビュー番組を元にしたデータからどのような場面で使われるか検証する
cman.iconこのインタビュー番組が「徹子の部屋」なのだ!これだけでめちゃめちゃおもろい
方法
2004/09/29放送の『徹子の部屋』を録画、書き起こししたデータシートを使う
これには非言語行動(パラランゲージ、カイネシックス)を記録する欄がある
黒柳(K)とタケカワ(T)で発話者を分ける。
言語、パラランゲージ、カイネシックスと発話者2名で記録が6つの欄になる
非言語行動は略式記号によって書く。
分析にあたり、エンブレムを細かく再定義した
イラストレーター(分類の一つ)と区別するのが難しいものがあり、分類のため
1. 文脈外にあっても比較的正確に意味が伝わる
2. 言葉とかなりの部分で置き換えることが出来る
3. 文化固有のものであることが多い
4. かなり意識的に使われる
結果・結論
この分析では、4つのエンブレムが得られた
挨拶の「おじぎ」と「へりくだり」(頭を下げる)
考えていることを示す(上を向く、首をかしげる)
感情を表す(口に手を当て、恥ずかしさを示す)
物体の代替を表す(携帯電話を手で表す)
エンブレムには従来の定義だけではなく、ダイナミックで色々な種類があることがわかった。
これからの研究課題
イラストレーターとの精微な区別
文化に共通したエンブレムの研究
関連研究
Ekman.Paul(1979)
著者(近藤富英)は他にも2005、2006、2008に徹子の部屋を使った考察を書いてるらしい。
cman.iconおもろそうだから読みたいな。
疑問
「あらためてエンブレムは以下のように定義する」
これ、自ら定義して、悩みつつ分類している
↓のダイナミックだったって話はここから来てるんじゃないか?
分類方法(定義)自体が新しく、大枠だからよりダイナミックなのでは。
でも、元々の論文の分け方もあんまり適切な切り分けじゃない気もするな。
もうちょっとMECEな分け方できるんじゃないかな、エンブレムとイラストレーター。
このへんはもうちょっと勉強するか、研究が進むかすればどうにかなりそうではある
そもそもアカデミック内ではちゃんと定義付けされてるんだろうか?
「ダイナミックで色々な種類」
これ、どう解釈したらいいんだろうな。
ポール・エックマンの方の分類を見ないとわからない気がする
そこの分類(定義)とは違って、より~という文脈だろうから
感想
とにかく、アカデミック文体で徹子の部屋が大真面目に扱われるのが面白い。
「資料として用いるために適当と判断した番組(徹子の部屋)」面白すぎる
「青空と緑が映るガラス窓を模した背景をバックにして、二人のための椅子とソファーが……」
淡々と徹子の部屋のスタジオセットの説明があり、その後図示される。面白すぎる。
「①と②に黒柳とタケカワがそれぞれくつろいだ様子で座っている。」じゃないんだよ。
題材は面白すぎたんだけど、分析のための手法がめっちゃ良くて関心した。
動きと言語、ノンバーバルとバーバルをデータとして見る質的研究、こんな方法もあるんだな~
“実際”をフィールドワーク的に示すってのがあんまりやられてないのかもだな。
つまりポール・エックマンの分類が“実際”に即してるかどうか、はあまり意識されてないのかも
ちゃんと勉強したらぜんぜんそんなことないかもだが
11/11
展望論文(レビュー) ざっと見れるの展望論文ばっかだった。
どんな論文?
物語説得の定量的研究とプロセスモデルについてのレビュー。物語説得の特徴、理論、モデルの発展について要約と説明が為されている。 物語説得の全体像を実証的観点から把握する。
その後、それらを分類分けし、統合出来る部分は統合を行う。
おそらく、この分類と統合がこの論文の独自性であり、価値があるところ。cman.icon
対象は「物語に第三者として接した際に生じる態度変化について行われた、心理学領域の量的研究」、かつ特定の物語に接触したことの効果を研究したものに絞る。
結果・結論
物語を用いて他者の態度に働きかける試みは、実証的研究の観点からもその有効性が示されている。
今の所、感情の変化を介した態度変化の知見が頑健な結果をもたらしている。
cman.icon<(頑健な結果を齎しているって何…? →統計的な頑健性のことっぽそうだ) プロセスの詳細、条件の解明、質の違いによる影響、説得・態度変化モデルにおける物語説得の位置付けなど検討すべき点は多い。
感想
このレビュー論文、多分だけどめっちゃおもろいな。
軽く見ただけでも、思考ルートと感情ルートにプロセスを分類してそれぞれに付いて検討するとか、めっちゃ“良い”ことをしている。
物語読解での感情と現実場面での感情は根本的なところで大きな性質の違いがある、とか、マジでめっちゃいいな。
「物語への関与尺度」というのが出てきた。引っ張ってきてる感がすごい。やっぱ絶対面白いぞこの論文!
物語説得のプロセスを生起させるのに、やはり重要なのは“移入”なのかな。ちょっとちゃんと読みたいぞ。
ちゃんと読みたいが、今日はもう目がしょぼしょぼしているのでだめだな……物語説得についての本とかも探してみよう。
11/10
著者情報:教育学博士 コミュニケーション論が専門
どんな論文?
性的に露骨なメディアが大学生のセックスに対する態度にどのように影響するかを調べ、性的メディアへの接触の項目と性に対する態度との間に正の相関関係があることを示した。
方法
性的メディア接触について、一つでも接触したことがあるものを性的メディア群、まったくない物を非接触群とする。
『青少年と生活環境等に関する調査研究報告書』(2002)で使用された調査項目を参考にした5つと、独自に追加した2つの項目について調査。
両者間で答えに差があるかどうかを検討する。
結果・結論
5つの項目において、偏りは有意であるとされ、連関が示された。
性的メディア接触群のほうが、性に対して寛容な態度を持っている。(と筆者は考察している)
関連性は示されたが、因果関係が証明されたわけではない。
関連研究
Weaver(1991)
疑問
調査環境が気になる。性的態度に関する調査はセンシティブであり、人目がある状態だと無意識の嘘が交じる可能性が高い。(そうでなくても、態度の問題は自身の考えではなく社会的正解を選びやすいのではないか)
余談:これに名前なかったけなと調べてるときに「社会調査」のウソという本を見つけた。ちょっと気になる。 性的メディア接触を最初に聞く質問用紙であった場合、プライミング効果の影響は考えられそう。 男子104人、女子246人の調査で、接触群103人、非接触群240人なの、めっちゃ怪しくないか?
接触群が過少に申告されているのではないか。2004年の大学生そんなもんか?
本当に接触したことがないのか、というのは所詮自己申告であり、疑わしい。
男女で別れているんじゃないか?
その場合、男女における性的メディア接触がどの程度受け入れられているかという差を考慮に入れないといけない気がする。
また、偏りが性的メディア接触の差ではなくただの男女差である可能性すら存在してしまう。
独自項目二点が恣意的に扱われている気がする
「罰せられる恐れがないとしたら、同意が得られなくても、行為を持っている相手にキスするかもしれない/セックスをせまるかもしれない」という項目。
“罰せられる恐れがない”“かもしれない”という語句の持つ力を無視して、この項目を「同意なしに性的行為を行う考え」として扱っている。
“罰せられる恐れがない”というのは多義的に捉えられ、単純に法的な罰ではなく、相手からの罰も含まれる解釈が成り立つのでは。
「セックスをせまるかもしれない」が「セックスする」に論文中で置き換えられるのも気になった。
「する」と「せまる」は似て非なる語句。「せまる」には相手の拒否権がある。
もちろん、同意は絶対に必要であるという前提なのは注釈として書いておくが。にしても選択の誘導が強いんじゃないか。
感想
総括すると、紀要論文だから仕方ないかなぁと思うけど、ちょっと突っ込めるところ多いな。
ただ、多分こういう問題意識がある先生で、その問題意識が言いたいんだろうなぁと思う。
実施方法にもよるけど、対応の考察は結構良いこと考えてるなとは思った。
情報機器の発展によって周囲の大人(学校家族地域社会)の影響力が低下し、仲間とメディア情報の影響力が高くなっているのでは。
対策として、1自主規制やフィルタリング、2メディアリテラシー教育、3周囲の影響力を取り戻す(日常的に参加出来るような場所の提供)ことが必要だろう。