社会的役割
人間の行為を説明するために,G.H.ミードによって積極的に展開された概念。自己と他者との相互作用過程において,各行為者の行為がある程度組織化,構造化されたものである場合に,その一連の首尾一貫した行為の系列をさして役割 (ロール) という。たとえば,母親と子供との相互作用過程に注目した場合,母親の個々の行動が首尾一貫しており,しかも母親の「一般化された愛情」が子供によって期待されているとき,子供のパーソナリティに母親の役割が内在化される。ところで,一定の役割行動が社会的な位置をもつためには,自我の首尾一貫した行動系列が他者によって認知されること,つまり役割認知が行われることが重要である。言い換えれば,この役割認知に基づく他者の役割期待を実現する行動が役割行動であるということができる。社会心理学者の役割理論がその主力を自我-他者関係の文脈においたのに対し,社会学者は,この視角を役割行動と社会構造のレベルに拡張させた。抽象化の類似性からすれば,役割の対応物は社会学の場合地位であるということができる。自我の役割が他者によって知覚,認知され,かつそれを自我が内在化して役割取得するとき,そこに自我に関する権利-義務の系列が構成されることになるが,これが地位である。一つの役割に対しては一つの地位が対応するが,自我-他者関係の文脈が異なれば,同一の自我のうちには当然,複数の役割が生じることになる。 (→社会的地位) (ブリタニカ・オンライン・ジャパンの解説) 社会的役割とは、社会的な状況で行為者によって概念化される1つに結合した振る舞いと権利と義務のこと。