生きとっ短歌
1 昔から患っていた淋しさと共に歩むと決めてみました
2 あやまって僕らはずっとあやまってえくぼは罪で歪み刻まれ
3 二日酔いヘドロみたいな感情に呑まれてしまい眼も開けられず
4 寂しさを手放したくて芯を折る 終わりのみえぬシャープペンシル
5 間違えばただただ二人削れてく消しかすだけが端に積もって
6 戒めと償いだけの下心上辺の言葉「アイ」とルビふる
7 アイですか、心のですか?まなざしの?私のことはどうでもいいよ
8 服を買うお洒落な服を買うための資格がいるのいつも僕らは
9 すかしっ屁すかしきれずにバイブ音スマホの画面ですかさずすかす
10 窓越しに予感をくれるひっそりと雪に隠した世界の秘密
11 冬の風忙しそうな顔をしてすれ違ってた頃もあったね
12 春風に気づいてしまう優しさに私はそれが欲しかったんだ
13 たおやかにふれ合う風は新しい世界へ運ぶ羽衣のよう
14 頭髪を優しく撫でる手のひらと野原を巡る風は似ている
15 青空は淡く優しく目に沁みる日曜の朝ほどけた気分
16 焼きたてのパンが並んでいるみたいワクワクするの春の予感は
17 図書館で読書している偉人たち無数の星のきらめき捜す
18 コンコンと何度叩けばいいですかどこまでいっても失礼ですね
19 逃げ腰で刀も振れず負け惜しみ模擬試合では調子いいのに
20 暗号を解き明かすのが生業でいつも姿を偽っている
21 求愛と媚びと狡さと怠慢が腹を満たして思考を侵す
22 行動が言葉の柵に囲われて枠組みになり家畜になった
23 使いきり 人格カードをセットして冷たくなってゴミ箱にいく
24 冬の風新鮮過ぎる冷たさが寂しさに似て孤独を誘う
25 騙し合い愛想ばかり振りまいて愛情なんて何も知らない
26 放課後の緑に染まる教室で飛行機雲をなぞったあの日
27 雨雲が眠気とともに垂れ込める廃墟の中で夢を見ている
28 振り回す果物ナイフ傷口の溢れる蜜を舐めてみたくて
29 身にまとうフィクションなんか脱ぎ捨ててアマゾン川でピラニア釣ろう
30 水槽の黄色い線の内側で放流される魚を見てる
31 この気持変換キーが見つからずいつもコピペで済ませてしまう
32 しがみつくいつか別れるその花を能う限りの水で枯らした
33 わからない眺めていたい、ただ君を。臆病だから触れずにいたい
34 踏切で立ち止まるたび生きていて赤い点滅心臓が鳴る
35 夕暮れが灯る孤独を浮き彫りに伸びてく影を折り畳んでは
36 いくらでも代わりはいるよだってほら与えられてるだけなんから
37 歯車が連結してくぎこちなく君の力で僕は動ける
38 錆びついた脳の部品を取り出して月になれたらあなたを照らす
39 いつか見たあなたがくれた風景を追い求めてる夢だとしても
40 何もかも一度忘れて唱えるのただ飛びたいとほうきに乗って
41 だとしても泳ぎ続けるつたなくも水平線の光の先へ
42 果てしないスライムだけでレベル上げ村から出れず何も救えず
43 二人でさホームレスとかなってみる?そしたらそんな想いも失せるよ
44 六が出た!ってスキップで向かったら五マス戻るでがっかりしてる
45 春びより桜並木にそよぐ風ゆれるブランコ野良ネコがいる
46 起こされて腑に落ちぬ朝あと少しおもいまぶたと身体をあげる
47 桜より湿気のことが気になってヘアアイロンの温度も上がる
48 愛してたそんな言葉を被せたらすべて桜に変わる気がした
49 なんとなく何もないからよんでみる君の名前が空洞になる
50 君は今幸せですか生れた日今日でさよなら手紙送るよ