無常観
一切を無常だとする見方のこと。
「無常観」とは、流れゆく物事に触れながら、人や万物の生について思う人生観的思想である。この無常とは仏教における教義の一つであるが、日本では学校教育の過程で、『平家物語』の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という一文を学び、日本の美的観念の一つとして広く知られている。
仏教から生まれた無常観だが、日本は四季があることで暮らしに常に変化があり、そこから独自の無常観を作りあげてきた。日本では、花は咲けば散るものであり、雪は積もれど溶けていくものである。日本の各地にある河川は、その流れが急であり、止まることのないものであることから、しばしば無常の例として用いられる。鎌倉時代の随筆『方丈記』は、その時代の無常観を映し出したものとして有名であり、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」という書き出しによって、人生の儚さが表現されている。
「無常観」 | 連載コラム - 日本工芸のオンラインメディア - kogei standard
仏教に由来する東洋独自の考え方なのかもしれないが、西洋にもヴァニタスや古代ギリシャのヘラクレイトスの「パンタレイ(万物は流転する)」など近い考え方は存在する。