新短歌島
2022/10/05
定形定形定形で詠うよ~
1 私たち近づきすぎた息を止め夜が明けるまで布団に潜る
2 月の丘花も咲かないこの星で指輪を投げた六分の一
3 バカだよなおやすみなんて言わなけりゃ嘘にならずに眠れてたのに
4 田園と夕焼け黄金朧げに家路を辿るひとりの子供
5 棒アイス君とかじった思い出は夕日に溶けた夏の魔法だ
6 酔ったふり火傷したんだ熱燗で何度も割った君への恋は
7 曖昧に相合傘に愛を問う冷えた指先亡霊のよう
8 恋文を裏返しては日にかざす目が覚める夢目蓋を擦る
9 立ち昇る天井眺めモヤモヤとゆらゆら揺れる体と心
10 シャンプーが怖かった頃思い出し二回洗ったおばけの仕業?
11 風呂上がり反対側のイケメンが僕の真似してバカにしてくる
12 口ずさむ湯船につかりさらけ出すほんとの気持ち反響してる
13 一人きり鎧を脱いで伸びをする小さな部屋と小窓の夜空
14 君の手が触れた気がした夜の風酔ったふりして吐き出す言葉
15 君が好き僕の夜空に君は月一人だけだよ一つだけだよ
16 のみすぎた言えない言葉二日酔いヒリヒリ痛む後悔の痕
17 塗り潰す言葉の裏は穢されて夜に振り積む真っ白な雪
18 風が吹く揺れる木の葉は重なって鍵盤の上鼓動に踊る
19 煙たくて目を擦る君微笑んで頬を伝った線香花火
20 秋風が木の葉を染めてセピア色移ろう季節変わらぬ記憶
21 秋鮭とたけのこしめじさつまいも秋を味わう炊き込みご飯
22 交差する夏の余韻と鈴の音が命を紡ぐ旋律の秋
23 夕暮れに漂う香り木犀花美しい人姿は知らぬ
24 暮れ方のあぜ道に咲く彼岸花終わりを告げる艶やかな赤
25 鈴虫が告げる季節を知っているそれは僕らの共通言語?
26 月明かり恥じらう君の絹の肌新月に咲く月下美人よ
27 秋に酔う纏う香水惑わせる風があなたをさらう気がした
28 抱きしめたカーテン越しの遠い青グラスハープの声が響いた
29 肌寒い金木犀の朝ぼらけ郵便受けに紅葉の手紙
30 靴飛ばし鎖を解きけんけんぱ空を飛べると思ったあの日
31 秋桜星が瞬く宇宙の花幼き頃の母の日の花
32 木漏れ日のステンドグラス君を待つ密やかな風浮いた前髪
33 夏は枯れ夢見焦がれて降り積もり灼けて散りゆく剥がれたメッキ
34 赤い実ををついはむ二人あどけなく豆電球の実験のよう
35 心臓が動かなかったあの頃を知ってみたくていのり続ける
36 目をさますほのかに白い静けさよレースの瞳やわい微睡み
37 扇風機 まるで僕らは エイリアン あああああああ あああああああ
38 天国は紅くもえゆく彼岸花灰になるなら業火に沈む
39 しんしんと星屑が降る宵の街暮らしは灯る温かな皿
40 吐き出した 度数の強い 恋だった 今もどこかが ズキズキいたむ
41 夕暮れの さよならだけが 淡い風 伸びてく影を 追いかけて夜
42 さめきった アスファルトには 砂埃 冷たい空気 呼吸をしてる
43 思い出は コンクリートに 埋め立てた 思いだせない 苦しみもない
44 僕をいま 孤独と認め ありのまま 物語ってる 寂しいだけを
45 君がみる 景色の中に あてはまる ピースになんて ぼくはならない
46 憎しみを 抱いてはじめて 世の中の パズルになれた ココロフィルター
47 編み上げた 言葉の布は 渡せずに 自分の首を 締めたあの夜
48 そうなんだ きれいなんだね すてきだね ぼくはノイズに 相づちをうつ
49 ガラス玉 宝石のよう 熱視線 二人は脆く 溶けて崩れる
50 押し売りの 偽善で生きる 解呪師は 呪われている 無垢な言葉に