帰敬偈
読み:ききょうげ
空の哲学を大成したナーガールジュナ(龍樹)が、その主著『中論』の冒頭で述べた偈。「礼拝の詩頌」とも呼ばれる。ここには空の精髄が述べられているという。
不生亦不滅 不常亦不断
不一亦不異 不来亦不去
能説是因縁 善滅諸戯論
我稽首礼仏 諸説中第一
滅しもせず、生じもせず、断絶もせず、恒常でもなく、単一でもなく、複数でもなく、来たりもせず、去りもしない依存性(縁起)は、言葉の虚構を超越し、至福なるものであるとブッダは説いた。その説法者中の最上なる人を私は礼拝する。(『大乗仏教の誕生─「さとり」と「廻向」』)