小説らしき文章を書く方法(c)
~あらすじ~
モチーフを見つけて連想しよう
連想したものを関係性に当てはめてみよう
舞台設定と流れを作ろう
舞台設定をちょっとしたコツと共に説明するぞ
そして、最後にそれっぽく終わればいい小説っぽくなる
レッツ小説ライフ!
小説を書くことにはハードルはない
小説を書くというのは特別のことではないと僕は思う。
極端な話をすれば、「昨日あったことの説明」が出来る人は、大体小説が書けると思う。
ただ小説が書けないという人も中にはいる。
そういう人たちは書き方を――“小説っぽく整える方法”を知らないだけじゃないかと思う。
必要な道具
テキストエディタ
メモ帳やメモアプリなどでよい。入力しやすいものを選ぼう。
補助として紙とペン
モチーフや流れを考えるときに使っても良い
文章が思いつかない時断片的なフレーズを書くのもよい
想像しやすい環境
舞台設定があるなら舞台に沿ったところを散歩してからなどがいい
想像できればだいたいどうにかなる
モチーフから物語を想像する
まず一つ、小説には物語がある。起承転結。それらしいストーリー。 これらを思いつくための方法を考えてみよう。
物語が頭の中にある場合、ここはスキップしても構わない
何も手元に物語がない時、見つけるべきはモチーフである。お題と言ってもいい。 何かものであるとか単語であるとか
モチーフを見つけたらそれに関連するものを書き出してみる。
例えば、「缶コーヒー」をお題にするなら、下記のように連想する
温かい
ほっとする
すぐぬるくなる
冷めきってしまう
缶のポイ捨て
いらなくなったら捨てられる
ゴミはゴミ箱へ
微糖
ほんの少し甘い
だけど苦い
カフェオレ
ミルクとコーヒー
黒と白が混ざる
ブラックよりやさしい
珈琲
目が覚める
覚醒作用
興奮作用
落ち着く
ある程度まで書いたら、cman.iconの場合、人と人の関係に流用できる表現がないか探す。
他に応用できそうなら積極的にしていっていい
今回の連想から拾えそうなものは……
すぐ冷めきってしまう関係
過去には暖かかった
ほんの少し甘い、でも苦い
→思い出
目が覚める
何かに気づいてしまう
恋は盲目、の逆
コツは、「共通点を探す」ことだ。
「甘い、でも苦い」は「良いことも嫌なこともある」で、「昔の思い出」と共通する。
リンクは、共通点の暗示(暗喩)によってなされる。
コーヒーの甘さと苦さが、思い出と同時に描写されると、リンクして、思い出=コーヒーになる。
この作業中に、ワンシーンが浮かんできたら儲け物。
浮かばなくとも、舞台と流れを設定すれば大体「書くべき場面」が出てくる。
舞台と流れの設定
上に書いたものから少し踏み込んでみよう。
まず舞台設定を考えてみる。
cman.iconの場合、「人と人がどこで話すか」を考える。
せっかくモチーフがあるので、それが出てくる場面にしよう。
缶珈琲を公園のベンチで飲んでいる場面
カフェでもいいが、今回は“缶コーヒー”であることが重要そうなので、公園にする
適当に対比構造を作りたいので「過去と今」にしてみよう
対比構造を作ることで、強調がしやすくなり、物語に一つの軸が通る
であれば、“過去”の話をしている、“今”の人たちがいいだろう。考えてみる。
別れ話をしている恋人
あるいは思い出話をする元恋人
“あのころはたのしかったね”という話
過去の暖かさ
過去の甘さ
けど今は、もう“あのころ”とはちがう
今の冷たさ
今の苦さ
でも、これでよかったのかもしれない
よく終わらせるために区切り
若干の前向きさを獲得して終わる
今から未来へ
プロット的な流れは、この程度のアイデアでいい。どうせ長くなる。
舞台に戻って、流れの強調したい部分によって季節を選ぶ。
今回は“暖かさ(≒過去)”と“冷たくなっていくこと(≒今)”なので、冬を選ぶ。
冬でないと、暖かさが過去にならないため。
さぁ、ここまでで大体脳内プロットができた。早速書いてみよう。
実際に書く(書き出しと舞台設定)
まったく文章書いてこなかった、という人はここでつまずくだろう。
「まず書き出し(一行目)がわからない」という現象にcman.iconも悩まされたことがある。
実際に書くにあたって意識することは「素直に言語化する」ということだとぼくは思う。 なるべく細かく感覚を書くとなお良いが、それはひとまず置いておく。
基本的に、話の一行目ですることは「まず舞台を説明する」ことだ。
今回の季節は冬なので、ひとまず「冬。」と言い切ってから考えよう。
冬。凍えるような寒さが、風に運ばれてくる。木枯らしが吹いて、木々も寒そうに震えている。
言い切ったら、後は連想ゲームをしてみよう。
冬といったら寒さ、寒さといったら風
風といったら木枯らし、木枯らしといったら寒い
寒いといったら震える……のように、頭の断片をつなげる。
今回の寒い、のように、同じようなものが出てきたら、適当に擬人法を使おう。 木々も寒そうに震えている
のように、主語を人ではなく景色の中のもの(木々、風、虫、鳥とか)にしておけばいい。
そうすれば同じことを何回も言ってる感が薄れる。
まぁべつに使わなくてもいい。使わなくても――同じことを何回言ってても――小説は書ける。
(自分の納得感はともかくとして)
大きな枠組み(季節は冬)を設置したら、説明したい舞台設定の中から、少しずつ小さくなるように書き連ねる。
小説の文はカメラワークなので、ズームインかズームアウトを意識しよう。
今回は最後に残るのが「人」だとその後の流れがやりやすいので、小さくしていく。
ズームインしていく間にあるものを適当に拾うと良い。
今回だと、次に小さい舞台設定は「公園のベンチにいる」ことだから……
公園のベンチに座っていると、びゅう、と吹く風が熱を奪っていく。息は白く、手は木々たちと同じように震えていた。
公園のベンチに座っている、と言い切ってみよう。その後に
前の文にあった“風”をまた使う
2回目なので適当に擬人法を使う
寒いと書きすぎるので類義で別の表現をしてみる
暖かくない≒寒い≒熱がない
擬人法使ったから適当に奪わせとく
寒いのと風で空気、息が白いを連想する
その後続かなかったので、前の文から“震え”を持ってくる
それっぽくするために、さっき震えてたものと同じようにしておく。
これはよく使う狡い技術だ。とりあえず周りの景色と人の描写をリンクさせておくとエモくなる。
このように、実際の執筆では、説明したいことをまず書き、その後表現を持ってきて連想して……ということを繰り返す。
こうすることで、ある程度自動的に文章を書くことが可能だ。
連想が尽きる、ということがある。同じことばかりで嫌になるなら、語彙を増やしたり調べたりするのが良い。
「〇〇 連想語」で調べると周りにある言葉がめちゃめちゃ出てくるのでおすすめだ。
ちなみにこの後は、ズームインのために、“人”の説明をすることになる。
例えば、“私は寒さに耐えながら、近くの自販機へ目をやる。ごとんと音がして、元恋人は缶珈琲を取り出し、振り向いた”みたいな。
“私”がいることと“元恋人”がいることの説明、それとモチーフである缶珈琲の登場を満たすのがいいだろう。
流れに身を任せる
細かく書いていくときりがないので一度カットするが、この後の流れもやることは変わらない。
人同士のやり取りが不自然にならないようにセリフを配置し、流れに沿うように説明していく。
「こうして話すのも久しぶりだよな」とか言わせとけば思い出話の流れになるだろう
思い出話を捏造するのが大変だと思う。
公園にまつわるものとかコーヒーにまつわるものとか冬にまつわるものとかで頑張って妄想連想しよう
思いつかなくなったら適当に思い出話を切り上げよう
「……」とか書いとく
“沈黙が場を包む”とか書いとく
喋る人がいなくなると環境音が耳に入るので、また風の音がするとか言っとく
このへんで缶珈琲がぬるくなってるとか言っとくと、モチーフと心情がいい感じになってベター
こっから“なんでこうなったんだろうな”みたいな話をさせとく
もちろん書いてる僕らはそんなん知らん
しらんから「さぁ……」とかになるかもしれん
適当に誤魔化す。具体的なことは言わなくていい
缶珈琲が冷めるように、ぬくもりはなくなっていくものだよ、みたいなことを言おう
モチーフに寄り添ってればなんかいい感じに聞こえる
全く何もわからないがキャラに納得させておく
「そう、か。そうだよな」など言わせておく。
一発で納得するのではなく、少しタメをつくるのがポイント
そうすれば読者が“なにか考えたんだな”と思ってくれる
なんかいい感じにさわやかに解散させとく
このへんまでを連想ゲームで書ければあとはもう少しだ。
このあたりで重要なことは「無理をしない」と「月並みな表現を避けない」ことだ。
無理してオシャレにしようとか、小説っぽく書こうとすると筆が止まる。
畢竟とか難しい言葉使わなくて良い。なぜなら普段僕らはそんな言葉を使わない(≒不自然だ)から。
月並みな表現を使うことを恐れてはいけない。
平凡で何のひねりもない表現“だけ”でも別に小説は書ける。
むしろそれを避けようとすると思いつかずに困ってしまう。
ただ物語を説明したいだけなのだから、月並みだろうと関係がないのだ。
同じ表現の繰り返しを恐れてはいけない。
tips
とはいえ、描写文が思いつかないときはいくらでもある。
こういうときは、連想語辞典を引きながら、頑張って想像しよう。 個人的な意見だが、なるべく細かい感覚を言語化できると文章はよりよくなる。
コツは、感情や出来事によって身体に何が起こるのか、を取り出すことだ。
寒い→震える
缶珈琲を飲む→体があたたまる→息が白くなる→白い息を吐く
好きとか愛→心臓がどきどきする、跳ねる
切なさ→ぎゅっとなる(なるじゃん?)
直接書くよりも距離が遠くなる文、読者に想像の余地が生まれ、いい文章に見える。
テキトウに擬音語擬態語を混ぜるのも有効だ。
じんわり、とか
こくり、と飲み下す、とか
柔らかくなって、しかも文字数が稼げる。嚥下した、とか言われてもピンとこないから、フツウでいい。
もちろん、嚥下した、とか言ってもいいけどね。
終わり方
終わり方がいい感じに見えれば、大体いい小説に見えるものだ。
今回は流れ上、未来を意識し、前を向く感じにしたい。モチーフをいい感じに使ってみよう。
ここまでで、“缶珈琲”は、“昔の思い出”とのリンクがされている。
ぬくもりがなくなっていく、のやりとりとかで。
リンクを作るには、思い出話中でちょこちょこ缶珈琲を意識させておくのがいい。
てなわけで、最後にこの缶コーヒーを飲み干して捨てさせよう。
そうすることで“思い出を飲み下して決別する”感じが書ける。
飲むときに“甘くて、けれど苦い”とかを入れるとより昔の思い出っぽくなる
ゴミ箱へ捨てたときの音を印象的に書くと爽やかさが演出できる
捨てた缶はからん、と音を立て、冬の澄んだ空気に吸い込まれていった。
みたいな。澄んだとか言っときゃいい。
で、ここまで来たらあとはシメを考えよう。
じつは、終わりにはエモっぽい文を入れておくといい感じになる。
これには裏技があり、――(ダッシュ2つ)を先頭に入れ、過去形で終わらせればいいのだ。
冬の話で、冷たさと暖かさの話だから、今ある冷たさから、未来に暖かさを求めるみたいなことを言ってみるか。
――あたらしい春は、もう、すぐそこだった。
こうすれば前向きな感じで終わる。
あたらしい、というのがポイント。昔の≒古い思い出と対比できる
なんと!!おめでとう。これでいい感じのエモっぽい小説が書けた!!。
あとは誰かに見てもらうなり自分で推敲するなりして、納得が出来たら投稿しよう。
そして、今までやってきた方法を流用して、また新しいモチーフを見つけて、新しい小説を書くのだ。
レッツ!小説ライフ!!
その他
エモっぽい小説じみたものを書く方法なのでそれ以外に当てはまらん。
もっとちゃんと書きたい場合、言語化訓練をしていくのをオススメする。
好きなもののどこが好きか、とか
もっとみんな気軽に小説っぽいもの書いてくれ〜〜〜
質問、感想コーナー
テキトウに記事書きすぎて不安なので質問あれば答えられるとこをつくっておきます。まる。
やった~~!全人類、エモ文章を書いてくれ。 ――それは、そんな、春のことだった。(エモ終わり) すげ〜、こうやって書くんだ!これは貴重なお話だったuvoa.icon