ハラリ三部作のメモ
概要
三部作は当然というか、1セット
とはいえ『21 Leasons』は前二作の補足の意味が強い。もし読む優先度を付けるなら『21 Lesson』は格が下がる。 ある意味「現代史」。現代を語るならテクノロジーは外せない。結果、ハラリは科学論文の力を借りて「歴史」を叙述する。
歴史学が「科学」に頼るのは珍しくない。たとえば「考古学」は年代測定法など科学的な部分が強い。歴史学者E・H・カーはこうした歴史学を助ける科学を「補助科学」と呼んだ。 ハラリは人間(サピエンス)そのものを語るためにも科学を使う。もはや「補助科学」ではないのかもしれない。
「科学と歴史学の融合」というのがハラリが歴史学として新しく、異端な部分。
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ありふれた分類では宗教の時代(中世)、国家・ナショナリズムの時代(近代)、そして単に「現代」となる しかし言われてみれば今までずっと人間の核として生き続けたものが消えるはずもない
ハラリはこの人間の核、人間の道徳規範を「宗教」と名付けた
現代は個人が正義である。しかしそれさえもハラリは神と国家と同じ「宗教」と言い切る
『21 Lesson』ではこれを「物語」と言い直している
現代でも神も国家も生きている。だが神が神だけで、国家が国家だけで生きる時代ではもはやない
それこそ宗教過激派さえ「個人の尊厳」を主張し、ナショナリストも己の尊厳のもと、国家に従属する
要するに個人が最高の価値観であり、個人を経由しない倫理観はありえない
なお、この個人に価値を置く時代「人間至上主義」の時代が危ういというのがハラリの指摘
神が死に、国家が死んだのなら「個人」の寿命もあって然るべきではある
人間至上主義に代わるのは神の如き人間「ホモ・デウス」か、AI
人間至上主義の根底にあるのは「人間の理性は神や国家より信用できる」ことを前提にしている
しかし今や脳科学は人間に「心」などないことを突き止め、人の思考は操作できる可能性が示唆されている
また、脳の解明は当然今まで自然に起きてきた「平等」を突き崩すことになる
もし科学技術によって老いず、疲れない人間が現れたら、「その人々」の方がより理性的ではないか?
こうして、科学技術によって「人類の価値」が分けられた時、民主主義は崩壊するという不吉な予言 実際、みなの知性が平等だったり差がないことを前提にしなければ民主主義とは別の政治形態がありうる
「優れた少数者の政治」は今までもあった(王制や寡頭制)。しかし、それらは客観的なデータに基づいて「優れた」ことを証明していなかった
しかし科学技術によって進歩した一部の人々はまさに「優れた人」であり、彼らに政治を委ねることになんの問題があるだろうか?
倫理的問題を除けば存在しない
地味にあーぷらの集合知にも関わる部分。優れた少数者がいれば、有象無象は要らぬとあれば大変なことだ。 ハラリは民主主義に死んでほしいのではなくて、生きてほしいからこうした不吉な予言を記した。
「どうかこの未来を変えてくれ」と
しかし多くの人は今でも先端技術に変わらぬ夢を見ている……
サピエンス全史 のNHK特集
区分は2つ『農耕』『通貨』
<農耕>
・体力のある20代が60代を支配するのが動物。人間はそうではない。
・農耕する際、腰をかがめて、人々はとても痛かった。
<通貨>
・仮想通貨がどうなるのか?
・フィクションとしての通貨にフィクションとしての『仮想』が重なる
ホモ・デウス のNHK特集
区分は2つ『生物工学』『AI技術』
<生物工学>
・ゲノム編集で、意図的に双子誕生 (中国)
・人工生命を0から作り出せる。命の維持に欠かせない最小限の遺伝子だけを持つ細胞「ミニマムセル」という人工生命体。
<AI技術>
・脳にチップを埋め込む 目が見えない人が目が見えるようになる
・AIが判断した社会的信用度をスマホに数値化 婚活サイトにも利用
ハラリの講演
Why humans run the world | Yuval Noah Harari(人間が世界を動かす理由| ユヴァル・ノア・ハラリ)
『サピエンス全史』の「認知革命」の要約に近い
Why fascism is so tempting -- and how your data could power it(ファシズムがなぜ魅力的であるのか-そしてあなたのデータがそれをどのように動かすことができるか)
『ホモ・デウス』の要約に近い
前半の題材はファシズムだが、要するに「物語」論
後半は先端技術によって民主主義が崩壊する様を簡単に解説している
ユヴァル・ノア・ハラリ自身が語る最新作『21Lessons』
『21 Lesson』の要約……って本人の動画じゃねーか!
↑3つの動画だけでも概要は掴めそう
もちろん歴史学の命、情報の積み重ねは著書にて。よむべし。
要約サイト集まとめ↓↓↓
サピエンス全史 の要約サイト
・3つのキーワードは、貨幣・帝国・宗教
・幸福追求のために、サイエンスとテクノロジーは利用されるべき
ホモ・デウス の要約サイト
・生物工学 ⇔(サイボーグ工学)⇔ AI技術
・人間至上主義⇔データ至上主義
生命の定義そのものが変わる
21 lessons の要約サイト
<あたらしい物語のあり方>
人は偏見を持って愚かな選択をしがちだということを認識する
なぜ核戦争が課題なのか
人間の愚かさを軽んじてはいけない
合理的に考えれば戦争は損失ばっかりでほとんど価値がない
しかし人は必ずしも合理的な判断ばかりをするわけではない
ちょっとしたきっかけで戦争が起こる可能性は十分にある
【サピエンス全史 目次】
歴史年表
第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
不面目な秘密/思考力の代償/調理をする動物/兄弟たちはどうなったか?
プジョー伝説/ゲノムを迂回する/歴史と生物学
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
原初の豊かな社会/口を利く死者の霊/平和か戦争か?/沈黙の帳
第4章 史上最も危険な種
告発のとおり有罪/オオナマケモノの最期/ノアの方舟
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
贅沢の罠/聖なる介入/革命の犠牲者たち
第6章 神話による社会の拡大
未来に関する懸念/想像上の秩序/真の信奉者たち/脱出不能の監獄
第7章 書記体系の発明
「クシム」という署名/官僚制の驚異/数の言語
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
悪循環/アメリカ大陸における清浄/男女間の格差/生物学的な性別と社会的・文化的性別/
男性のどこがそれほど優れているのか?/筋力/攻撃性/家父長制の遺伝子
第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
歴史は統一に向かって進み続ける/グローバルなビジョン
第10章 最強の征服者、貨幣
物々交換の限界/貝殻とタバコ/貨幣はどのように機能するのか?/金の福音/貨幣の代償
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
帝国とは何か?/悪の帝国?/これはお前たちのためなのだ/「彼ら」が「私たち」になるとき/
歴史の中の善人と悪人/新しいグローバル帝国
第12章 宗教という超人間的秩序
神々の台頭と人類の地位/偶像崇拝の恩恵/神は一つ/善と悪の戦い/自然の法則/人間の崇拝
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
1 後知恵の誤謬/2 盲目のクレイオ
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立
無知な人/科学界の教義/知は力/進歩の理想/ギルガメシュ・プロジェクト/
科学を気前良く援助する人々
第15章 科学と帝国の融合
なぜヨーロッパなのか?/征服の精神構造/空白のある地図/宇宙からの侵略/
帝国が支援した近代科学
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
拡大するパイ/コロンブス、投資家を探す/資本の名の下に/自由市場というカルト/
資本主義の地獄
第17章 産業の推進力
熱を運動に変換する/エネルギーの大洋/ベルトコンベヤー上の命/ショッピングの時代
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
近代の時間/家族とコミュニティの崩壊/想像上のコミュニティ/変化し続ける近代社会/
現代の平和/帝国の撤退/原子の平和
第19章 文明は人間を幸福にしたのか
幸福度を測る/化学から見た幸福/人生の意義/汝自身を知れ
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
マウスとヒトの合成/ネアンデルタール人の復活/バイオニック生命体/別の生命/特異点/
フランケンシュタインの予言
あとがき――神になった動物 謝 辞 訳者あとがき 原 註 図版出典 索 引
【ホモ・デウス 目次】
第1章 人類が新たに取り組むべきこと
生物学的貧困線/見えない大軍団/ジャングルの法則を打破する/死の末日/幸福に対する権利/地球という惑星の神々/誰かブレーキを踏んでもらえませんか?/知識のパラドックス/芝生小史/第一幕の銃
第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2章 人新世
ヘビの子供たち/祖先の欲求/生き物はアルゴリズム/農耕の取り決め/五〇〇年の孤独
第3章 人間の輝き
チャールズ・ダーウィンを怖がるのは誰か?/証券取引所には意識がない理由/生命の方程式/実験室のラットたちの憂鬱な生活/自己意識のあるチンパンジー/賢い馬/革命万歳!/セックスとバイオレンスを超えて/意味のウェブ/夢と虚構が支配する世界 第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手
紙の上に生きる/聖典/システムはうまくいくが……
第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
病原菌と魔物/もしブッダに出会ったら/神を偽造する/聖なる教義/魔女狩り
第6章 現代の契約
銀行家はなぜチスイコウモリと違うのか?/ミラクルパイ/方舟シンドローム/激しい生存競争
第7章 人間至上主義
内面を見よ/黄色いレンガの道をたどる/戦争についての真実/人間至上主義の分裂/ベートーヴェンはチャック・ベリーよりも上か?/人間至上主義の宗教戦争/電気と遺伝学とイスラム過激派
第8章 研究室の時限爆弾
どの自己が私なのか?/人生の意味
第9章 知能と意識の大いなる分離
無用者階級/八七パーセントの確率/巫女から君主へ/不平等をアップグレードする
第10章 意識の大海
心のスペクトル/恐れの匂いがする/宇宙がぶら下がっている釘
第11章 データ教
権力はみな、どこへ行ったのか?/歴史を要約すれば/情報は自由になりたがっている/記録し、アップロードし、シェアしよう! /汝自身を知れ/データフローの中の小波
謝 辞 訳者あとがき 原 註 図版出典 索 引
【21 lessons 目次】
1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
4 平等――データを制する者が未来を制する
5 コミュニティ――人間には身体がある
6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
8 宗教――今や神は国家に仕える
9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
10 テロ――パニックを起こすな
11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
19 教育――変化だけが唯一不変
20 意味――人生は物語ではない
21 瞑想――ひたすら観察せよ