ニーチェ事典の「ニヒリズム」項目の読書メモ
読む本
ニヒリストとは、あるがままの世界については、それはあるべきではなかったと判断し、また、あるべき世界については、それは現存していないと判断する人間のことである。それだから、生存する(行為し、苦悩し、意欲し、感情する)ということが、いかなる意味をももたない。すなわち、「徒労」のパトスがニヒリストのパトスであるが――同時にやはりパトスとしてもニヒリストの首尾一貫性の欠如である。
2つのニヒリズム
p349〜
生・世界の価値を否定するからニヒリズム
彼岸は生・世界の内在的価値を否定するために生まれた
キリスト教を否定するニヒリズム
18世紀末以降のドイツで「ニヒリズム」はキリスト教否定の呼称だった
否定対象には観念論的な形而上学(カントなど)も含まれる
価値・意味・願わしさの徹底的な否認
至高の価値が価値を失うこと、目標の無いこと、「何故か」に対する答のないこと
ニヒリズムの原因
世界・歴史に対するキリスト教的な解釈
真実への意志による「自滅」
キリスト教によって育まれた真実への愛がキリスト教自体に向けられて懐疑が起こる
キリスト教の虚偽性
キリスト教に内在する欺瞞性
虚偽によって成り立つキリスト教
「理性のカテゴリーに対する信仰」 p345
「心理状態としてのニヒリズム」
目的論的世界観の崩壊
世界には目的があるはずだ
道徳的秩序の完成など
世界には目的などなかった
統一への信頼の崩壊
世界はひとつに統一されているはずだ
私はその統一の要素であるはずだ
世界には統一なんてなかった
世界も自分も信じられない
ここよく分からないかも久住哲.icon
彼岸の否定
世界には目的も統一もない
この生成変化の世界は偽物であり本物の世界は彼岸にある
彼岸にある真の世界なんてなかった
最後のニヒリズム
能動的ニヒリズムと受動的ニヒリズム p346
精神の力が増大した結果のニヒリズム
従来の目的や信条が精神と適合しなくなっている
精神は従来のものを破壊する
精神の力が弱まった結果のニヒリズム
従来の目的や信条が精神と適合しなくなっている
従来の価値を治療や鎮静のために利用する
仏教が典型的
もはや従来の価値を崇めることはしない p347
その他のニヒリズム(病理的な中間状態としてのニヒリズム)
精神の力が強まっているが新しい価値を打ち立てるほどではない
精神が弱くなりすぎて治療法を案出することすらできない
生きていても意味がないと無意味を普遍化する
ニヒリズムは従来の価値と現実の生・世界とのズレに対する反応だ
従来の価値に沿った生存はダメになる
価値には実在が対応していない
価値は価値設定者の側の力の徴候にすぎない
価値は生の目的に奉仕するものである
主従逆転
ニヒリズムの克服
ニヒリズムを徹底することによってニヒリズムを克服する
力強い上昇の運動はニヒリズムの運動を生み出す
ニヒリズムが観測されるということは生長の兆しである ということ p349
ニヒリズムによって虚偽の価値が否定される p353
ニヒリズムが自分自身の原因を否定することでニヒリズムを克服する
超越的価値の否定としてのニヒリズムが、ニヒリズムとしての超越的価値を否定して、克服される