アリストテレス全集一巻の実体についてのメモ
実体――それも最も本来的な意味で、そして第一に実体と言われ、また最も多く実体であると言われるものは、何か或る基体について言われることもなければ、何か或る基体のうちにあることもないもののことである。例えば或る特定の人間、あるいは或る特定の馬。 『アリストテレス全集第一巻』カテゴリー論の第5章より
アリストテレスについては、彼は人間であると言われることができる
だが、何か別なものについて、それはアリストテレスであると言われることはできない。
例えば、人間というものについて、それはアリストテレスであるとは言われない。
というのも、あの偉大な哲学者であるアリストテレスは1人しかいないからだ。
想定される反論
ある人を指差して「この人はアリストテレスである」と言われることは可能じゃないか……という反論がありえる。
しかし、たしかにその「この人」と呼ばれているものは、アリストテレス本人だろう。
「アリストテレス」が述語となるのは、主語の位置にアリストテレスという個人が来るときのみだ。
すなわち、いわば、アリストテレス個人はそれ自身についてのみ言われることができる。だが、こんな言い方はおかしいだろう。
家を基体と考えたとき、その家のうちにアリストテレスがいるとは言えるんじゃないか。
いや、家とアリストテレスは別々な実体である。