たんたかたんか
1あの星、と、さした指先くらいの穴を真夜中じみた心にもくれ
2赤い月かどわかされた踏み切りでなにもなかったみたいに歩く
3感情が通り過ぎてく涼しさを冬の寒さと間違えている
4切れ味のいい包丁を作りたい君が怪我してくれたらうれしい
5初恋と口づけをした原風景 サンセットビーチ like a 夕空
6マフラーで殺してくれよ死ぬまでは温かくして冬なんだから
7浅はかな愛でいいのだ好きだとか寂しいとかを言えないよりは
8昨日まで骨組みだったはずなのに気づけばあの子は大きくなって
9いい加減に好きでいようと決めてからりんごの赤が鮮やかだった
10今まで、と、これからばかりに目を逸らし今の言葉に向き合いきれず
11君のこと考えているときだけがずっとな気がしたほんの数分
12幸せはここになければないですね 模造品なら並べてますが
13空っぽのぬくもりのなか目が覚めて 行き場がなくて息も吸えない
14東京は愛せどなにもないという、お前の口から奥を知りたい
15肺に満つ冬がくっきり息をつく 空っぽになる私が残る
16脳みそに梱包材を入れすぎてスカスカなのに動作が重い
17早戻し、出来たとしても色褪せる つまらないから早送りする
18君がいう何もないには風景が広がっていて羨ましいよ
19死にたいとつぶやく君が立ち止まる赤信号で馬券を拾う
20ジュースが出てくる蛇口だ君は 喉も心も錆び尽きそうだ
21生きづらい世の中というステッカー りんごのマークに重ねて貼ってる
22宿題が終わらないまま夏を越し死にたいなどと屯している
23閉め切った埃は静かに降り積もる古いにおいに喉はくすんで
24寒いねと震える君は一等星光の中ではっきり見える
25いつもとは違う線路に乗っとけば子供のままでいられたはずだ
26あてもなく敷かれたレールに従えば普通の人と勘違いする
27息を吸う楽しみすらも割かれては生きてることが空気みたいだ
28笑ってるモニター越しに顔映るあんたはここでふゆと死ぬのよ
29白雪が溶けては濁るコーヒーだ砂糖をいれても苦味は消えない
30二階から呼吸している片想いほのかな灯り息を潜めて
31交差点 月の点滅 黄信号異世界じゃない現実の色
32眠れない大人たちのスラム街テーブルの上でスマホをいじる
33β版押しボタンだけ機能する更新される街に佇む
34型番の旧い心は破損した表示が残り起動はできず
35雪となる何光年の哀しみも純白になり解けてしまえる
36狭い箱心を充たす反響やまぬ残響永遠の空洞
37あなたは僕を満たしたはずだったしかし心を空っぽにした
38音響が途切れて君の声だけがひとひらの葉舞台に凪いだ
39酩酊の夜明けのような始まりで地べたを叩く諦観の雨
40その眼鏡羨ましいと思うのは君の世界が美しいから
41うまそうな雪を待っている寝転んで塩釜焼きになってもいい
42その壁はなみのりすれば抜け出せる僕は言葉でデバッグしたい
43重いならアンインストールすればいいついでにキャッシュも綺麗にしたら?
44言葉が差した廃墟は来週には取り壊される秘密基地だった
45甘すぎる泥水を飲む寄生体あなたの身には蟻の巣がある
46引き出しに蓄積された思い出を開けないならばゴミだと君が
47反転した世界に気づかず君はずっと左に舵を切ってる
48selectで取得した無をならびかえ現実的な展望はなく
49汚いと、奇麗なゴミを分別し創作ですと踏み倒してる
50掘っているその土を右に放っては右側を掘る耕すように