『特性のない男』の登場人物
ウルリヒ
主人公。
クラリセ
ウルリヒの幼馴染で友人。舞台装置を描く画家の娘。ニーチェに心酔している。痩せている。舞台のにおいに囲まれてそだったからか、芸術にまとわりつく官能的な快楽を嫌悪する。十五歳のときヴァルターと出会う。才能はヴァルターほどではないと感じながらも天才は意志の問題だとして音楽や絵画の勉強を努力している。天才意外と結婚しないと決めていたからヴァルターを天才だと思い続けてきたが、彼がそうではないと気が付いて結婚生活に変化が表れはじめ、それに抵抗している。二人でよくピアノを弾いている。
ヴァルター
ウルリヒの幼馴染で友人。クラリセの夫。34歳を越した年齢。芸術関係の役所に勤めているが、画家や音楽家、詩人などいろいろな分野に手を出している。どれに手を出しても熱烈な賛美者が一定数おり、それが彼の人生に紆余曲折をたどらせている。結婚して、環境を整えて、いさ偉大な創造に打ち込もうとするが、肝心の作品が出てこない。しまいには「現代のように精神の根が毒されているような時代には、純粋な才能は創作を棄てるべきだ」と主張するまでになり、日々ワーグナーの音楽をピアノでかき鳴らしている。現在ウルリヒとは少し溝ができている。
(ウルリヒ)「ヴァルターのことを知っているね。ぼくたちはお互いにもうずっと快く思っていない。だが、ぼくが彼に腹を立て、そして同様にぼくが彼を怒らしているのがわかっていても、ただ彼を見ていると、ぼくと彼とは折り合っていないように見えて同時にうまく折り合っているような、そんな一種の愛情を感じることがよくあるんだ。人生には、どういしなくても理解できることがたくさんあるんだよ。……」
3部28章