『特性のない男』ってどんな小説?
『特性のない男』(Der Mann ohne Eigenschaften)はオーストリアの作家ローベルト・ムージルの小説。ドイツ語で書かれた20世紀文学を代表する作品の一つと評される。1913年から1914年(オーストリア=ハンガリー帝国崩壊前夜)のウィーンを舞台にしている。 第1巻(第1部・第2部)が1930年、第2巻(第3部の初めの38章)が1933年に刊行された。1938年に第3巻の校正刷(第3部の続き、20章分)が出来るが、同年ナチスドイツがウィーンに侵攻。同書は禁書扱いとなり、ムージルはスイスに亡命。困窮の中で執筆を続けるが、1942年に死去したため未完成に終わる。死後に遺稿が整理され刊行された。
オーストリアの作家ムシルの長編小説。第一巻1930年、第二巻の前半部のみ33年刊。長期的には1900年ころから、短期間にみれば1920年ころから構想されて、ムシルが生涯をかけてもなお未完に終わった。第一巻では、現実を可能性のほんの一部の実現した世界としかみなさない主人公ウルリヒの、この可能性を目覚ます感覚を梃子(てこ)にして、第一次世界大戦前夜のオーストリア老大国の古都ウィーンにおける支配層の閉塞(へいそく)した精神風土の大規模な分析解明が実験的に行われ、その破砕された現実の裏から自由な可能性の新風が吹き付ける。第二巻では、ウルリヒと妹アガーテとの愛の可能性が厳密に一歩一歩追求されて、神なき時代の神秘的な合一のみごとな瞬間が描き出される。
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オーストリアの作家ローベルト・ムージルの未完の小説。3巻4部。1930~43年刊。第1次世界大戦前夜のウィーンを舞台にしたものだが,大半が膨大な議論や対話からなり,高度の哲学的・心理学的思索を展開,20世紀前半の時代を鋭く分析した特異な小説で,現代ドイツ語文学最高の達成の一つとされる。
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オーストリアの作家R.ムージルの未完の長編小説。作者の死後十数年を経て再評価され,J.ジョイスやM.プルーストの小説に比すべき,20世紀の重要な作品とみなされる。第1巻(1930),第2巻(1933)が刊行され,全遺稿が整理されて全体が刊行されたのは1952年(78年に遺稿部の大幅改訂)。〈特性がない〉ということは自分の特性も含めもろもろの事が自分から遊離していることで,そのような自己の特性と現実世界の事がらを独特の仕方で,つまり可能性への感覚をもって問題化し思考する,〈特性のない男〉を主人公に,時代の混乱した姿が描かれ,状況突破の試みが追求される。
概要
思想・哲学・文学・芸術・宗教・政治など、さまざまなことがエッセイ風に扱われた小説である。 あらすじ
第一部 「一種の序文」
第二部 「同じようなことが起る」
第三部 「愛の千年王国の中へ(犯罪者たち)」
父が死去し、ウルリヒは平行運動から距離を置き、存在さえ忘れていた妹のアガーテと暮らし始める。 第四部 「 一種の終り」
書かれる予定だったが、定稿として完成することはなかった。