『名づけえぬもの』
The Unnamable
サミュエル・ベケットの小説
1953年(フランス語)
1958年(英語)
『名づけられないもの』
終始、「おれ」の私の独白
「おれ」という語り手が「マフード」や「ワーム」や「先生」の話をする。
本当は、「おれ」の話をしたいのに。
終始、「おれ」の独り語り。おれは「彼」だか「彼ら」だかに物語を語らせられ、演じさせられているらしい。おれは沈黙するために、おれだった・であるだろうものたちの物語を語り、そしておれの物語を語ろうとするが、言葉、声さえおれのものではない。言葉はおれの周りをむなしく回っていく。おれはどこからかきこえてくる声にさいなまれ、同時にその声を語ることををやめられない。おれは沈黙するためにしゃべりつづけるしかない。
古舘版『名づけえぬもの』
サミュエル・ベケット『名づけえぬもの(The Unnamable)』(from Trilogy)|ポインツマン