『三島由紀夫論』
平野啓一郎
著
<書評>『三島由紀夫論』平野啓一郎 著:東京新聞 TOKYO Web
中心的な論点は認識論と存在論だ。この世界の価値とこの世界が虚無か実在かを論じる存在論は、
三島由紀夫
にとっては根本的な問題だった。
……
その経緯を平野啓一郎はハイデッガーや近年の
唯識
研究を踏まえて解明していく。特筆すべきは、
『豊饒の海』
から読み取った虚無と文化の積層構造の図式である。
……
平野によれば、三島は
唯識
を誤解していたという。世界はすべて「
識
」だと説く唯識に対し、三島は世界の実在にすがった。作品と最後の行動のためには、世界は存在しなければならなかったのである。