『テルレス』ノート2(バルサン)
登場人物まとめ
・テルレス 未分化 からっぽ 主体性がない 孤独? 幻想的 共感性の欠如 夢想 現実、空想、自分と他者の境界線が曖昧 沈黙の世界 自分の中に自然的なものを求めている
策略家でなく、それに興味もない
・バイネベルク 超自然的 インド哲学 形而上学 思弁的 観念的 魂 いじめると傷つく 犠牲を払う 常識を疑う
実験 真実へ辿り着きたい 催眠術
・ライティング 支配者 政治 男性的 いじめても傷つかない 策略家
・バジーニ 被支配者 弱者 女性的 美しさ
・プリンス 信仰心 保守的
・ボジェナ
テルレスのふたつの世界
・市民の世界 規則正しい 理性的
・冒険の世界 闇 秘密 血 非理性? 沈黙
→善と悪、有用と無用 分けたくなる
テルレスのバジーニへの嫌悪感→なぜ?
8章
テルレスは様々な瞬間に日常の世界とべつの沈黙(闇?無限?)の世界が知覚され、それを本能的に避けていたが、彼が偶然にそれに着目する瞬間があり、沈黙が彼に襲いかかり、テルレスに混乱をもたらす。
→テルレスを襲ったのは、事物、プロセス、人間をダブルミーニング(二つ以上の解釈)なものとして感じること。
→自然なもの(秩序)に不自然なもの(無秩序)が入り込んできて混乱してくる?
→普段つながりあって見えるものが、つながりを感じなくなる。
ものごとを思考の鎖につないで所有しようとすると混乱したものになる。
生活圏内に入ると、単純なものになり、不安の要素が消え去るが、それはふとした瞬間に襲いかかる。
あいまいな感覚
テルレスを苦しめているのは、言葉が機能しないこと。言葉は感じたことをたまたま表現している口実のようなもの。不全感。
テルレスが休むことなく探したかったものは──言葉なしに自分の精神の前に立っているものと、自分とのあいだに架けられる橋であり、つながりであり、比較だった。
このものごとやつながりを理解しよう、割り切ろうとなにかしらに落ち着かせるのだが、常に不全感がつきまとう。(言語化できない)ついにテルレスはそれに降参して、不自然にゆがませた状態で混乱させておくのである。
10章
バジーニに対するいじめ、暴力
テルレスは動物的欲望(本能)に襲われ、性的興奮を覚える。
13章
テルレスは超自然的なものは求めていない。自然なものを求めている。外には何も求めておらず、自分の中に求めている。自分の中にある自然なものを。その自然なものがわからない。(ここにはバイネベルクとのはっきりした違いがある)
14章
カント
カントの本に解決策が書かれている。
女の子になりたかった時期があった→性別の曖昧な未分化的な時期
小さな女の子が逃げ出すような反抗的態度、傲慢さ→テルレスの中に蘇る
自然への驚きが官能に変わる。頭のいい小男たちから守る高い秘密の壁。
最後に残る生暖かさ→バジーニと結びついている。
ノートに書き始める。狂気
バジーニを見るテルレス→めまいの感覚。
大波の、波しぶきのような感覚。気まぐれで変わりやすい。偶然性。しっかりつかまえることができない。
幻想する力がいつもわずかなところで幻想できない。魂。
ぼくらより強くて、大きくて、きれいで、情熱的で、暗いものが、ぼくらの中にある。というのが世界の一般的な法則である。という気づき
選ばれたもの。偉大な芸術家の直観。
15章
逸脱した官能、魂を肉欲によって引き裂く官能
17章
バジーニの裸
美の力、芸術、芸術が官能の道を通ってやってきた。柔らかく、みだらに媚びている。しかしそこには、手を組んで祈りたくなるほど厳かで、抑圧するなにかがあった。
(本物の価値→儀式性、礼拝、近づきた難い、礼拝的価値、アウラ)
ライティング→バジーニ(愛人?、暴力、優しさ)
バイネベルク→バジーニ(説諭、実験体)
バジーニ→ボジェナ(男らしさを示したい)
テルレス→バジーニ(軽蔑、好奇心、親密さ、痛み)
テルレス→バイネベルク、ライティング(変身、恐怖?)
テルレスはいじめられているときのバジーニの心を知りたい。
異なるふたつの感覚
心の中のパースペクティブが突然変化した地点
近くのものと遠くのもの(同時になく、ひび割れている)
ひび割れの感情→自分に注意してくれと要求する→比較する行為が比較される対象に迫る→感じることのない衝撃→静けさ
遠くから見るととても大きく神秘的に見えるものは、いつも単純で、ゆがめられず、自然で日常的なプロポーションでやってくる。
人間のまわりには目に見えない境界線が引かれているようだ。境界線の外で準備され、遠くから近づいてくるものは、霧の海のようで、変化する巨大な姿でいっぱいだ。
人間に近づき、行為となり、人間の生活にぶつかるものは、クリアで小さく、人間の次元と人間の輪郭を持っている。
人間が生きる人生と、人間が感じ、予感し、遠くから見る人生とのあいだには、狭い門のように目に見えない境界線がある。
できごとのイメージが人間の中に入っていくためには、その門で圧縮される必要がある。
18章
バジーニの裸、つやつやした肌だけが、眠る前の感覚の黄昏の中へ、ライラックの茂みのような香りを放った。道徳的な嫌悪感までもが消えた。
(どんだけバジーニの裸すきなんだよ)
テルレス→バジーニを軽蔑する
ほかのふたり→バジーニを軽蔑する「ふり」
バジーニはテルレスのことが好きらしい。
19章
テルレスは恥ずかしいらしい
なぜ?→バジーニの誘惑に負けたことではなく、バジーニに一種の愛情を持ってしまったこと、軽蔑すべき下劣な人間であるということを強く感じているため。
バジーニはテルレスの欲求の対象としての代理にすぎない。
バジーニの裸→若い少女の美しいけれど、まだ性的とは呼べない姿→その時感じた純粋さが、不安な新しい感情(欲望?)をバジーニとの関係にもちこんだ。
欲望のそれ以外の要素は、ボジェナのところで、さらにもっと昔に存在していた?
成熟し始めた男の子の、メランコリックな官能。暗い情熱。
秘密の隠れ場がそれを押し開けるトリガーになった。
秘密の隠れ場には、テルレスの魂のひそかな面、禁じられた面、扇情的な面、不確かな面、孤独な面が集まっていた。→この暗い情動がバジーニへ向けられた(暖かくていいにおいのする肉)これがテルレスの美の一部になった。
テルレスの求めていた美は、バイネベルクの語るような理性的なものでなく、もっと人間の肉の手触りであったり、命の暖かさであったり、感覚的なものである。たぶん。
暗い情動はボジェナの腐食性の醜さのせいでテルレスにネガティブなイメージを植え付けていた?
分別できないさまざまな感覚がひとつの感情によって統合される→それが愛なんだ。
テルレスは正気に戻ったときに、以前のバジーニへの欲望を無分別で不快なものに感じる。→だから普段は恥ずかしく感じている。
みんなには良心の呵責といういばらの冠が欠けている。
テルレスは自分に迫ってくる感情の名前を知らない。だからこそ陶酔を誘う。
美を愛し知性のある人々は、(テルレスも)法律や道徳を守ることで一種の安心感を手に入れる。しかし退屈で鈍感なものだと思っている。実際彼らが関心をもっているのは、魂や精神の成長。
もしくは心に蓄えられるもの。ときどき目覚め、消え去るもの。
官能に目覚めたのは、倒錯のせいでなく、一瞬目標をなくした(からっぽ)精神状況のせいである。
背信。罪の意識。
21章
バイネベルクの目論見→失敗
22章
謎なんて知らないよ。なんでも起きる。それが知恵のすべてだ。
(テルレスは分別がついたのか?)
23章
テルレスの両親は白昼のように明るく生きているから闇には盲目
25章
ノート→憂鬱の混じった愛情→完結した過去→ノスタルジー?→発達の一段階が完結
26章
テルレスの感覚は、思考や宗教では語り得ない。
思想には死んだ思想と生きた思想がある。
死んだ思想→思考によるもの。因果律の糸によって思考されるもの。知性。
生きた思想→論理的思考でない。暗い心の奥底、魂。
ものごとは常に同じだが、知性の目とは別の目(魂)で見ることによって変わる。違う生になる。生きた思想になる。→遠近におうじて変化する魂のパースペクティブ
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感想みたいなの
個人的に自分が生きてきた感覚に近いものを感じた。読んでよかった。
1章から7章まではメモをとっていなかったのであまり考察できていない。
ボジェナの存在についてはうまく考察できていない。
ホモセクシャルなどのテルレスのなかでまだ識別されてないものがテルレスの意識に投げ込まれてくるので、混乱するのか?
あと19章にはテルレスがなぜバジーニに惹かれたのか?ということについて書かれていると思われるが、メモ取りながら読んでたら疲れてきたのであまり深く読みこめていない。
いじめの問題が含まれているのでそこにトラウマがある人は読むのが辛い作品なのではないかと思った。ただ、これはいじめの問題「だけ」にフォーカスした作品ではないということも付け加えたい。
8章の文章表現には親近感を感じるし、ラストのテルレスの語りは好き。暗い話なのだが読後には謎の爽快感があった。(物語的に爽快感などないはずなのだが)その理由はテルレスの長い混乱と苦悩につきあってきた我々読者に、テルレスが最後に答えのようなものを語り、(語りえぬものではあるが)成長を見せてくれたからかもしれない。
冒頭のメーテルリンクの引用の意味はわかった。
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」という言葉はウィトゲンシュタインだったかなあ......