10個入1P300円(短歌)
いつかは下落
1自殺などありはしない僕が僕を殺したくなった衝動的に
2寂しさに爛れた心淡い風その優しさも僕を焦がした
3ぬかるんだ感情たちは体液で分泌されて文字にならない
4病んでるの?ああ健常者、寂しさが伝染病なら君にキスする
5 出処も何も知らない借金を返し続ける一生みたい
6ぬらぬらと夏は擦れ合う夜の風タオルケットはやわく湿って
7ぬかるんだ麻酔のような熱を帯び疼いた夏は縫合された
8窓ガラス プールのような空の青 未だに慣れぬ陽射しのシャワー
9この恋が蒸発したら夕立の匂いになって風に流され
10蚊にさされ かいちゃダメよと かあさんが過保護になると かきたくなった
11スイカ割り 昆虫採集 かき氷 そうめん食べて 短歌も詠もう
12息継ぎを忘れた夜に溺れてる 浅い夢見は走馬灯のよう
13佇んだストローみたいな標識と夕日の溶けるオレンジフロート
14曇り空君の場所では雨みたい綺麗なものを撮れたらいいな
15嘘じゃない隠してるだけすきま風しっかり閉じてこごえぬように
16愛や恋 仮説でしかない 心だが ヒト科の中では君が好き
17花開く万華鏡朝は明滅 幻滅しては夜へサイクル
18知ってます?愛って無料なんですよ、それに比べて世の中は金
19なんとなく苦しいからさ首絞めてそっちのほうが楽な気がする
20好きだとか会いたいとかは言えなくて文句ばかりで何もしてない
21転がった宝石だったガラス玉碧そよぐ夏の静脈
22藍色の部屋を眺めてまた潜る君の寝息を思い出してる
23夢見てる君の汀に委ねてる明け方の青ゆらゆらゆれて
24汗をかく夏の真珠はきらきらと雨の滴る若葉のように
25砂浜の濡れたところを見るたびに恋をしていたような気がした
26君が好き理性的な心だけで本能的に訴えている
27君の眼に映ったものが本当と信じていたし見てほしかった
28永遠に続く夏などないのだとみーんみんみんえーんえんえん
29天然水人工物に入れられておいしい水ならなんでもいいや
30なんとなくぽっと浮かんだ感情に名前がなくて新しいフォルダ
31ゆび先で途切れてしまう僕たちが夜をとび越え交わしたことば
32脳みその信号だけで伝えたい言葉とかいう暗号じゃなく
33この熱がいつも僕らを忘れさせ涼しい風が思い出させる
34僕たちは二つになった 丁寧な断面だけがそこに残った
35隕石が僕の甲羅を砕くのをただ待っている漂っている
36わかるのは右と左と前後ろ 方角なんて概念はない
37被らない帽子を買った帰り際あの日あなたが買った帽子だ
38 干涸びた理性の皮を剥がしては冷たい熱に凍えた心
391ミリも好きになれない6割はあなたも水でできているのに
40この夏のたった一つの火種だけ焚き火にくべて冬を越します
41なにもかもコンビニにある ほんとうに欲しいものなどひとつもないや
42くちうつしさえずる渇きカラコロとあのきらめきが蒸発してく
43日常が映画のフィルムになればいい醜いところはカットしてくれ
44見捨てるな確かな熱が残ってる身体の奥に夕映の頬
46ふたり乗りしろいブラウス風をきる梢は揺れてきらめく海面
47みずいろの風に撫でられ鈴が鳴る透明になるかすかな真昼
48明滅が瞳の奥にさし示す心の在り処を響かせている
49空をみず肌で感じる蒸した午 足元をみる罪もないのに
50清潔は孤独のにおい 病室で外を眺めて綺麗と言った