暇なのでノイ!(バンド)について書くよ
うんちくが多いのは気にするな
この本はクラウトロックについて652ページも書かれた非常に熱い本です。ダモ鈴木が亡くなったのでまたカンについてちょっとまとめるかァと参考に読んでいたのですが、書いたりしてる途中でノイ!のことを思い出して。実は私はカンよりノイ!のほうが好きなんですよ。そういえばノイ!の章を読んでなかったので読んでみたんですが、ああ、この章いいなァてなりまして。そもそもいきなり君、ダモとかカンとかノイとかなんだねって話だと思うんですが、まあノイ!ってグループはミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーというふたりで音楽をやっていたドイツのグループなんですがね。このふたりはわりと逆の性質を持っていて、ローターはわりと保守的かつ穏当で、ディンガーはかなりパンクで反権威で無鉄砲。そういう両極があって。そういった両極をプロデューサーのコニー・プランクがうまく融合させた三枚の素晴らしいアルバムを残すんですがね。私も聴き直したのですが、えー、『NEU!』『NEU! 2』『NEU! 75』まあ全部必聴なんですがね、『NEU! 75』って1975年に出た最後のアルバムがあるんですが、やばいですよ。アンビエントとパンクの両極に振り分けられたアルバムなんですね。A面がローターの穏やかな面、B面がディンガーのパッションな楽曲に分けられていてね。『Hero』って曲があるんですがね、これね、プレパンクですよ。ちなみに、デヴィッド・ボウイの『Heroes』のタイトルはこの曲から拝借されてるからね、ここテストに出るから... それで、両極なふたりなもんだから結局関係性悪くなってゴタゴタがあって、権利関係からノイ!のレコードって再販されてなくて、80年代とかプレミア化しちゃってたっていう。今はちゃんと手に入りますよ。
まあそんな感じで愛憎に満ち溢れてるんですが、詳しく説明できないんですけどなんかこの辺のふたりの正反対な、人間臭い話がめっちゃいいんですよ。ノイ!のサウンド自体にもそれがあらわれているというか。ローターの穏やかさにディンガーの荒々しいハンマービートが乗る。「ノイのサウンドには矛盾がある」ってローターも言っている。
で、この本で大事なのは、結構ドイツの土地柄や歴史にも踏み込んでいて。土地柄では、工業地帯からの機械的ドラムや、電子音ということになりますが、ノイ!はディンガーのドラムが文字通りハンマービートやモータリックサウンドって言われるんですが、彼は実際大工をやってた経験があるっていう、アツいよね。ただドラムうるさすぎて、クラフトワークを(実質)クビにされるんですよ、ドラムマシン持ってこられて。え?クラフトワークにいたのって?ローターとディンガーはあのクラフトワークから分離したふたりのユニットなんですよ。ここもテストに出るから...実際ここは音楽歴史上重要で、ドラマークビにしたクラフトワークがドラムマシンでうってでてテクノポップで世界を席巻するっていう話で。 歴史でいえばドイツといえばやはりWW2になってきますが、ノイ!にあるのは戦争犯罪人である親世代への反発ですよね。1970年代のドイツの若い世代には「30歳より上の人間を信用するな」ってのがあったらしいですが、ディンガーがこれが強くあって、ローターはお母さんがめっちゃいい人だったらしくてそんなことないんですが。あとディンガーはクラフトワークみたいなブルジョワじゃなくて、労働者階級なんですよね。クラフトワークの連中と別れたのもこれがデカかったんちゃうか。ディンガーは親世代を憎み、自分でのし上がって成功することや金にこだわっていた。『Hero』って何の英雄なんだと思います?「労働者階級の英雄」なんですよね。え?ジョン・レノンじゃん。成功や金にはこだわるアナーキーさがホントにロンドン・パンクっぽいんですが、実際容姿も長髪のローターに比べて短髪だったり、歌い方もジョニーロットンぽくて、楽曲もパンクなんすよ。で、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)自体もノイ!の影響を公言しています。 ノイ!自体は特に世界的に売れたりしてないんですけど、イギリスのポストパンク勢やそれに連なるオルタナティブなロックシーンへの影響力って半端なくて、ステレオラブとか、ソニック・ユースとか、あの辺に継承されています。ボアダムスとかもあからさまにノイ!をやってる時期がありますよね。 忘れていましたが、一応この章はノイ!とコニー・プランクの章で、本にはプロデューサーのコニー・プランクの話も載っているんですね。実際ノイ!のサウンドの特異性はプランクのミキシングやテープ操作の貢献が大きくて、ディンガーも「プランクなしではノイ!のサウンドはあり得なかった!」と言っています。プランクのほうが音楽業界的に影響力が大きい人なんですが、プランクの話をしていたら長くなってしまうのでまた。しかし、コニー・プランクがシュトックハウゼンに学んでいたのは知らなかった。カンの人達もシュトックハウゼンの門下生だったんですが、シュトックハウゼンすげえな。 https://youtu.be/vQCTTvUqhOQ?si=Xjl4eooA-zNYKaqX