カントの傾向性
1 倫理学で、広義には性向の意。カントでは習慣的になった感覚的欲望の意で、これに基づく行為にはたとえ道徳法則と外面上合致しても道徳的価値はないとされ、理性と対立する。 2 心理学で、ある一定の刺激に対して一定の反応を示す有機体の性向の意。 私たちは、心にふと浮かんでくる欲望や衝動に思い通りに従うことを「自由」であるとみなしがちだ。
しかし、カントによれば、そのように感覚に依存した欲求にそのまま行為することは、単に人間の「傾向性」に引きずられているだけの他律的な状態に過ぎず、「自由」とは呼べないとした。
むしろ心にふと浮かんできた欲望に抵抗できずに隷属してしまうことは恣意の他律であり、それは「自由」とは別物であると、カントは考えた。