懐疑主義
◆特徴
□「懐疑主義を特徴づける概念として、エポケー(判断停止)とアタラクシア(心の平静)がある。懐疑主義者たちは、ある判断に対して、それと同等の信憑性をもつ別の判断を対置することによりエポケーを導き、そのエポケーがアタラクシアをもたらすとした。このような懐疑主義の成立の背景には、独断的・断定的主張との対決を通じて、「無知の知」を自覚するに到ったソクラテス Sōkratēs の探求の姿勢があった。このことの反映は、「懐疑主義(scepticism)」の語源となったギリシア語「スケプシス(skepsis)」に「探求」の意味があることにも見られる」(秋元[2006:103])
懐疑 主義と訳される Skepticism のもととなっているギリシア語のスケプシス は、疑うという意味ではなく、 考察とか探究を意味する言葉であった。懐疑主義者と訳することのできる「スケプティコス」とは、字義通りには「よく考察する人」であって「疑う人」ではない。その意味では、スケプティコスとはむしろ哲学者の別名であるとさえ思われるかもしれない。
考察継続の姿勢をもちながら軽率な断定を避ける立場を示していることになる。そこでは、何でも疑うという点が強調されているわけではない。むしろ強調は断定回避(エポケー=判断保留、差し控えること)の方にあるのであって、考察にあるわけでもなさそうである。