2025-04-11

『チ。』を最後まで見た。あまりにもあっけなく終わるのでぽかんとした。

あれは最終話がスタート地点だということなのかな。つまり、地動説のバトンが一話目の少年ラファウから最終話の主人公アルベルトまで受け継がれてきたと見せかけているが、実は一話目から最終話の前までの話はあるベルトが作りあげた物語である、という。そうすると最終話と一話目が円環になって、地球が太陽の周りを回っている話としてもきれいかもしれない。タイトルにわざわざ「。」がついているし。

けれどそうだとするとちょっとあまりにも説明不足というか、伏線回収してみせようとする意思が感じられない。最終話がはじまりであるならば、最終話の主人公であるアルベルトの人生をもう少しだけでいいから詳しくというか濃く描いて、その中に他の話の主人公たちに繋がる要素を散りばめないと分かりづらすぎる。なによりバトンを繋いできた主人公たちの人生はなかなか見応えがあったのに、最後の、実在の人物でありながら本作ではその人生を語る時間を割かれなかった人物によって「あの人たちの人生はフィクションでした」と示すのであれば、なかなか作者はドライに観客を突き放したことになる。

とはいえあれほど人物描写にも複雑さと一貫性を両立させながら積み上げる筆力のある作家が最後だけ説明不足に見せているのには意味があるのだろう（急な連載休止でもなければ）。原作を読めばもう少し分かることもあるのかもしれない。

昔井戸だかテレビだかから長い髪の女の人が出てくる怖い話があって、それはあるビデオを見た人にその呪いが伝染していくという話ですごく怖かった。一番怖かったのは、そのビデオがカメラで撮られたものではなくて定期的に入る短い暗転は人間の瞬きであるのだと気づく場面だった。あれほど鳥肌が立ったことはないかもしれない。でもシリーズを読み進めると実はそれがコンピュータの中で起きたことで…みたいな話に回収されてしまって、それならあの、カメラではなく人の目が見ている景色がビデオになっているというあの気持ち悪さはなかったことになってしまって、井戸やテレビから出てくる女の人にしたってなんの怖さもなくなってしまうのだった。残念だった。

夢オチみたいなものによって全体を覆すと、ある視点にいたからこそ感じられた何かが視点が引き上げられた途端に空虚になることがある。これを操作する感覚って作品を作る上ですごく大事だと思うのだけど、SNSを見ているともしかしてその感覚が希薄な人が多いのかなという感じがする。身近なクリエイションをする人もどうもメタ視点ができないというよりは（それもあるけど）立場や視点が変わるときにその仕掛けが有効かどうかを判断するのが難しいらしいと感じることが多くて（これはもしかしたらフランスの個人主義が関係あるのかもしれない、大いにありそう）、いやそれは成り立たないよ、前提に立ち返ってみて！ズレてるでしょ？という説明をするのに苦労する。

いやほんとに、すごく苦労してる。もしかしてそればかりに時間を割かれてないかと思うくらいに。

あ、その怖い話は『リング』だ。本を読んだ時、瞬きのシーンでは本を放り出したくらい気持ち悪かった。

日本語では自分の主体があちこちに移りながら、つまり主語の方からの視線を持ちながら語るということがよくある。でもフランス語ではいつも自分のいるところにある程度固定されながらそこから見るものを描写する。神とか幽霊みたいなものに対する感覚もそこと紐づいていて、箸にも針にも神様はいて、それは神様でもあり霊的なものでもありつまりはそれは私がそこにいるということなのかもしれない、というような話をすると、それは鏡であるということ？レヴィナスの顔みたいなこと？と単純化されて（レヴィナスの顔の思想自体は別に単純じゃないとは思うけど）、今いる場所からびくとも動いてくれない。私はここにもいるけれど私は普遍的にどこにでも居有る、だから彼方からここにいる自分を見ることができる、みたいな感覚を身体感覚として受け取ってもらうことが難しい。なんか私が言っていることが観念的な思想だと思われていそう。そうじゃなくてもっと身体的なものなんだけどな。別に変なスピリチュアリズムでもなくて、もっと単純な、触れたものには触れられ返される、みたいなこと。

自分の体の軸というか輪郭がはっきりと今いるここにだけ濃くてぶれず、漏れ出ていかないというのは、言語にも表れてる。いや逆か。ある時点で言語がそれを強化したんだろう。

今朝起きたら頭の左の方が冷たくて違和感があったので念の為にメモしておく。一昨日くらいに2回ずきっとしたので、もしかして何かのサインだったら書いておくのがいいだろう。

とはいえ私はちゃんとした保険に入ってないので（随分前に何度も申請手続きをしたが半年やりとりをしても必要者類が増えていくだけで埒が開かなくて諦めてしまった）病気をしたら終わり。

怪我も病気も動物みたいに自分で治してきたので変な過信があるけど、自分では何ともならないことはあるしひとりそっと巣穴で死ねるわけでもないので（ほっとかない人はいてその人に迷惑がかかる）今年は保険加入に再チャレンジしてみよう…あああ、めちゃくちゃ嫌だよーフランスでの書類手続きロジックじゃなさすぎて理不尽で馬鹿みたいにまわりくどくて不親切でだいきらい。

このところCosenseで生活ログを書いているみなさんのページを訪れるのがなんとなく日課になって、きっと何気なく書かれたのだろうことに目が止まったりそのことについて自分も考えたり書きたくなったりするのを面白いなと思っている。

みなさんの記録は面白い一方で、自分自身は生活の記録をすることには興味がなくて（何を食べた、何を見に行った、こんな仕事をした、いうこともほとんど書かない）、どちらかというと自分にとって引っかかりのあることがあったときにそれを言葉にしてみる、という感じで言うならば感覚のログなんだと思う。

旅の工程は書かないけど、旅の中で感じたことについてはスケッチするという感じ。

私は過去を振り返りがちな人間だけど（後ろ向きということではなくて、現在を目の前にしながら過去を参照することが多い）日記を見返すことはほとんどない。Cosenseでは時々「前にもこんな絵を描いてますけど？」とサジェストされるのでそれを頼りにまた別の絵を描く、または絵の輪郭を確かにするために参照することはあるしそれは確かに自分にとって大事な要素でもあるんだけど。

その瞬間に自分が体験したことを言葉にしてみることそれ自体が大事なんだと思う。そこで追体験できることがあればさらに掘り出したいだけ。求めているのは手応え、ここでいう手応えとは成果みたいな意味ではなくて文字通りに書くことで跳ね返ってくる感触なんだと思う。

だから書く場所を迷ったりとかデータを残しておいたりするくせに明日全部が消えたとしても損失はないのかもしれない。一生見返さないなら今捨てても同じ、…いや、それは同じではないか。だから淋しいとは思うけど、なんだろ。抜けた髪くらいのかんじ？違うか。いくらなんでももうちょっと大事だな…。あ、でも消しゴムのかすを集めてたのと似てるかも。文字をたくさん書いてそれを消したからこんなにたまったぞ！という。だから記事数がたまっていくのが好きだし、ブログサービスには何年何月には11記事書きました、みたいなアーカイブが表れることを重要視している。

↓こういうやつ

https://scrapbox.io/files/67f8cc8d81e1c2e930ef9837.png

物を所有するのが苦手なこととも通じている。写真も撮る瞬間の記憶や手応えだけが大事で、撮った写真を見返さないし、カメラも増やしたくない。できたらカメラなしで写真を撮りたい。最小限の機能しかないものを自分の能力で幅を広げて使いたい。物をなるべく遠ざけたいのかもしれない。物を扱えない。体以外のものが扱えない。もっというなら体も邪魔だ。

消しゴムのかすをためるのが好きだったくせに矛盾してる。体<消しゴムのかす なのか？！

とにかくそれならばメモみたいな日記様のものを公開する意味とはなんだ。ますますわからなくなる。

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昨日の麻婆豆腐は今までで一番中華料理屋さんみたいに美味しくできたので、次回もこれで作る。

でも肉肉しいのでたけのことか干し椎茸やらもいれるバージョンでこの味を再現したい。