「バナナ剝きには最適の日々」
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『バナナ剝きには最適の日々』収録
狂気、自己言及、内部観測
題名の元ネタはJ・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』より「バナナフィッシュにはうってつけの日」
似たテーマの作品にジェイムズ・イングリス「夜のオデッセイ」
完全な一発屋で、これ以外に作品が残っていない様子。少なくとも、翻訳された痕跡はない
p29「どこぞの凶暴な兄妹が〜」
「ヘンゼルとグレーテル」
p33「どこまで行っても〜」
スペースオペラのお約束列挙
p34「人智を超えてうねり逆巻く大海原」
スタニスワフ・レム『ソラリス』
p36「今日の日記。特になし。〜」「時間があるなら、時間を食べれば〜」
1789年7月14日、フランス革命のきっかけになったバスティーユ襲撃の報告を聞いた仏国王ルイ16世が記したとされる日記。この日記は日課の狩猟の成果を単に記入したものであり、政治的・公的な日記ではない。
後者は言わずと知れた、ルイ16世王妃マリ・アントワネットが発したものとされる名言のパロディ
p38 チャッキー
語り手のイマジナリーフレンドか
p42「方程式の温度は3K」
トム・ゴドウィン「冷たい方程式」
この作品も、外宇宙を航行中の宇宙船に生じたトラブルを扱った作品。。3Kという温度は、宇宙背景放射による“宇宙の温度”から
完全に余談だが、「冷たい方程式」は編集者であるジョン・W・キャンベル・ジュニアの意向によって過度に女性蔑視的に書かれている。読んでいて気分を害するレベルの作品なので、今からはじめて読むなら似たテーマを扱ったジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「たったひとつの冴えたやりかた」をおすすめする
p43「バナナ星人たちは二つの種族に分かれて、〜」
これこそ内部観測の本質。内部観測では観測によって情報が不可逆に破壊されてしまう。
バナナ星人には皮が3枚に剥けるやつと4枚に剥けるやつがいて、これらは互いに相容れないものとされているのだが、実際に剥いてみるまでどちらなのかわからない。でも、剥くと死んでしまう。あほらし。
p46「光速の壁は越えられない。〜」
超光速通信は相対論で禁止されている。
同「こうして旅を続けてきても〜」
ドレイク方程式
ファーストコンタクトもので散々擦られてきたネタ
p47「想像力は宇宙をも超えるはずだったのでは。」
SFの古くからのスローガン
同「想像が可能なことは、いつか実現されるんじゃなかったろうか。」
想像可能なことは、いつか必ず実現される
SFの父、ジュール・ヴェルヌの言葉とされる
あるいは、物理学的に可能な現象は必ず実現される、という物理学における暗黙知も踏まえての言葉か
同「僕らの抱える内宇宙は、外宇宙よりも遥かに広いものだったのでは。」
「外宇宙から内宇宙へ」
ニューウェーヴ運動の主導者、J・G・バラードの言葉
円城塔、やはりバラードがお好きなようで
https://book.asahi.com/article/11575135
同「外宇宙で出会えるものには、内宇宙でも出会えるのでは。逆もまた。」
内宇宙と外宇宙がどちらも十分に豊かならば、確かに成り立つであろう主張