微分積分学の基本定理
$ \frac{d}{dx}\int_a^xf(t)dt = f(x)が成り立つことを微分積分学の基本定理という。
定積分と面積
ある連続な関数$ f(x) について区間$ [a, b] を考え、この区間を$ a = x_0 < x_1 < \cdots < x_n = bと分割する。
ここで、それぞれの分割区間において、最小の関数値を高さとする棒グラフ(下図赤線)と、最大の関数値を高さとする棒グラフ(下図青線)を考える。
分割の幅を$ \varDelta x($ \varDelta xが小さくなるほど分割数$ nは大きくなる)、最小の関数値を高さとする棒グラフの面積を$ s(\varDelta x, f)、最大の関数値を高さとする棒グラフの面積を$ S(\varDelta x, f)とする。
このとき、$ f(x) が$ a\leq x \leq b で積分可能 $ \overset{def}\Leftrightarrow \sup s(\varDelta x, f) = \inf S(\varDelta x, f) (\varDelta xを変化させてsの上限とSの下限が一致したとき) \overset{def}\Leftrightarrow \int_a^bf(x)dxと定義する。
また、$ \int_a^bf(x)dxで求まる値を$ x軸と$ f(x)と$ aと$ bの間で挟まれた領域の面積と定義する。
https://scrapbox.io/files/6122322fe5abab001df2caaf.jpg
微分と微分積分学の基本定理の証明
ある連続な関数$ f(t)について$ g(x) = \int_a^xf(t)dtを考える。
このとき、$ g(x)が微分可能であるとは$ \lim_{h \to 0} \frac{g(x+h) - g(x)}{h}が有限な値を取るということであり、微分積分学の基本定理が成り立つとは$ \lim_{h \to 0} \left(\frac{g(x+h) - g(x)}{h} - f(x)\right) = 0が成り立つということである。
この方程式が成り立つことを確認するために$ \left|\frac{g(x+h) - g(x)}{h} - f(x)\right|を考える。
$ \begin{aligned} \left|\frac{g(x+h) - g(x)}{h} - f(x)\right| &= \left|\frac{1}{h}\int_x^{x+h}f(t)dt-f(x)\right| \quad \left(\because \int_a^{x+h}f(t)dt-\int_a^xf(t)dt = \int_x^{x+h}f(t)dt\right) \\ &= \left|\frac{1}{h}\left(\int_x^{x+h}f(t)dt-f(x)h\right)\right| \\ &= \left|\frac{1}{h}\int_x^{x+h}\left(f(t)-f(x)\right)dt\right| \quad \left(\because f(x)h = \int_x^{x+h}f(x)dt\right) \end{aligned}
ここで、$ hが正の方向から$ 0になる場合を考える(負の場合についても同様である)と
$ \frac{1}{h}\left|\int_x^{x+h}\left(f(t)-f(x)\right)dt\right| \leq \frac{1}{h}\int_x^{x+h}\left|f(t)-f(x)\right|dt \quad \left(\because \left|\int_a^bf(x)dx\right|\leq\int_a^b\left|f(x)\right|dx\right)
右辺について、$ t は区間$ [x, x+h] の間に存在するため、$ hが$ 0に近付くほど$ f(x)と$ f(t)の差は小さくなる。
よって、$ \left|f(t)-f(x)\right|を$ \epsilonで抑えることでイプシロンデルタ論法より
$ \frac{1}{h}\int_x^{x+h}\left|f(t)-f(x)\right|dt < \frac{1}{h}\epsilon h = \epsilon
が成り立つため、$ h \to 0のとき$ \lim_{h \to 0} \left(\frac{g(x+h) - g(x)}{h} - f(x)\right) = 0が成り立つ。
不定積分と原始関数
微分して$ f(x)となる関数を原始関数といい、$ F(x) = \int f(x)dxと定義する。
微分積分学の基本定理は、関数$ f(x)が積分可能であれば原始関数が存在することを示している。
ここで、原始関数より定積分を計算することを考える。
$ f(x)の原始関数を$ F(x)とし、$ \int_a^xf(t)dt = G(x)とすると微分積分学の基本定理より$ \frac{d}{dx}G(x) = f(x)となる。
このとき、$ G(x)は微分すると$ f(x)となるため、$ G(x)と$ F(x)は定数倍のずれしか存在しない。
よって、$ G(x) = F(x) + Cとなる。
ここで、$ x = aのとき$ G(a) = 0 = F(a) + Cとなるため、$ C = -F(a)となる。
よって、$ \int_a^xf(t)dt = F(x) - F(a)が成り立つ。