フーリエ級数
ある関数$ f(x)の性質が知りたいとき、より基本的な関数列を使って級数展開することによって、$ f(x)の性質を知り得る場合がある。
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Ex マクローリン展開
$ f(x)が無限回微分可能であるとき、関数列$ \{1, x, x^2, x^3, ...\}を使って級数展開すると
$ f(x) = \sum_{n = 0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n
が得られる。
この級数によって$ xが十分に小さい場合に$ f(x)の近似式を得ることができ、この式をマクローリン展開という。
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ここで、$ f(x)が周期$ 2 \piの周期関数である場合を考える。
三角関数を用いた関数列$ \{1, \cos x, \sin x, \cos 2x, \sin 2x, ...\}を使って級数展開することで
$ f(x) \sim a + \sum_{n = 1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx) \cdots (1)
を得ることができ、この式をフーリエ級数展開という。
(ここで、$ \sim記号の詳細は後述するが、$ =記号と読み替えても困らない)
このとき、$ (1)式について係数$ a, a_n, b_nをフーリエ係数という。
まず、フーリエ係数$ a_nについて、両辺に$ \cos mx \quad (m = 1, 2, ...)をかけて$ -\pi \sim \piまで積分すると
$ \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos mx dx \sim \int_{-\pi}^{\pi} a \cos mx dx + \sum_{n = 1}^{\infty} \int_{-\pi}^{\pi}(a_n \cos nx \cdot \cos mx + b_n \sin nx \cdot \cos mx) dx
となる。ここで、
$ \int_{-\pi}^{\pi} a \cos mx dx = 0
であり、また三角関数の直交性より
$ \int_{-\pi}^{\pi}(b_n \sin nx \cdot \cos mx) dx = 0
$ \sum_{n = 1}^{\infty} \int_{-\pi}^{\pi}(a_n \cos nx \cdot \cos mx) dx = \begin{cases} 0&(n \neq m)\\ \pi&(n = m) \end{cases}
であるため、
$ \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos mx dx \sim a_m \pi \cdots (2)
となる。
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Info 関数の内積と直交性
区間$ [a, b] で定義される関数$ f(x), g(x)について、関数の内積を
$ <f(x), g(x)> = \int_a^b f(x)g(x) dx
と定義する。
このとき、自分自身以外との内積が$ 0になる性質を直交性といい、三角関数は積和の公式より直交性を有していることが分かる。
つまり、
$ \int_{-\pi}^{\pi}(\sin nx \cdot \sin mx) dx = \begin{cases} 0&(n \neq m)\\ \pi&(n = m) \end{cases}
$ \int_{-\pi}^{\pi}(\cos nx \cdot \cos mx) dx = \begin{cases} 0&(n \neq m)\\ \pi&(n = m) \end{cases}
$ \int_{-\pi}^{\pi}(\cos nx \cdot \sin mx) dx = 0
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次に、フーリエ係数$ b_nについて、両辺に$ \sin mx \quad (m = 1, 2, ...)をかけて$ -\pi \sim \piまで積分すると
$ \int_{-\pi}^{\pi} f(x)\sin mx dx \sim b_m \pi \cdots (3)
となる。
最後に、フーリエ係数$ aについて、両辺を$ -\pi \sim \piまで積分すると
$ \int_{-\pi}^{\pi} f(x) dx = 2 \pi a \cdots (4)
となる。
ここで、$ (2)式について$ m = 0のとき、
$ a_0 \sim \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x)dx = 2a
であるため、基本的には$ a = \frac{a_0}{2}と記述する。
以上より、
$ \frac{a_0}{2} + \sum_{n = 1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx)
$ \begin{cases} a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos nx dx &(n = 0, 1, 2, ...) \\ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin nx dx &(n = 1, 2, ...) \end{cases}
の形で表される級数を、$ f(x)のフーリエ級数という。
この時、フーリエ級数が$ f(x)と等しいこと、つまりフーリエ級数が常に$ f(x)の値に収束するとは限らない。
関数$ f(x)が全ての区間において連続であれば$ f(x)に収束するが、$ f(x)がある区間において不連続な場合は、$ f(x)の値に収束しない。
この様なフーリエ級数の収束性について、周期$ 2 \piの周期関数$ f(x)が区分的に滑らかであるとき、$ f(x)のフーリエ級数は次のように収束する。
$ \frac{a_0}{2} + \sum_{n = 1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx)
$ = \begin{cases} f(x) &(連続な点) \\ \frac{\lim_{a \to x-0}f(a) + \lim_{a \to x+0}f(a)}{2} &(不連続な点) \end{cases} \cdots (5)
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Info 区分的に滑らか
区間$ [a, b] 上の関数$ f(x) が次の条件を満たすとき、関数$ f(x) は区間$ [a, b] において区分的に連続であるという。
1. $ [a, b] に属する有限個の点を除いて$ f(x)は連続である
2. 各不連続点において、左側極限$ f(x - 0)と右側極限$ f(x + 0)が有限な値が存在する
さらに、導関数$ f'(x)が区分的に連続であるとき、関数$ f(x)を区分的に滑らかであるという。
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$ (5)式より、フーリエ級数と$ f(x)の値は常に等しいわけではない。
そのため、$ (1)式において$ =記号を用いずに、$ \sim記号を用いる。
この$ \sim記号は、形式的にフーリエ係数を求めたフーリエ級数であることを示しており、フーリエ級数が収束するかは定かでないことを示している。
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Ex 矩形波
矩形波において、値の変化がない区間においてはフーリエ級数は$ f(x)に収束する。
しかし、矩形波の値の変化は瞬間的に行われるため不連続であり、この変化点においてはフーリエ級数は$ \frac{f(x-0) + f(x + 0)}{2}(つまり最大値と最小値の中央値)に収束する。
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$ (1)式の周期関数$ f(x)は、周期が$ 2 \piであるときの式である。
そこで、$ f(x)が周期$ 2L (L > 0)の周期関数だとすると、$ x = \frac{L}{\pi}tと変数変換してフーリエ級数展開すると、次式が得られる。
$ f(x) \sim \frac{a_0}{2} + \sum_{n = 1}^{\infty}(a_n \cos\frac{n \pi}{L}x + b_n \sin\frac{n \pi}{L}x)
$ \begin{cases} a_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \cos\frac{n \pi}{L}x dx &(n = 0, 1, 2, ...) \\ b_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} f(x) \sin\frac{n \pi}{L}x dx &(n = 1, 2, ...) \end{cases}
ここで、$ (1)式のフーリエ級数の複素数への拡張を考える。
オイラーの公式$ e^{j \theta} = \cos\theta + j\sin\theta について、
$ e^{jnx} = \cos nx + j\sin nx, \quad e^{-jnx} = \cos nx - j\sin nx
より、
$ \cos nx = \frac{e^{jnx} + e^{-jnx}}{2}, \quad \sin nx = \frac{e^{jnx} - e^{-jnx}}{2j}
となるため、$ (1)式に代入すると
$ \frac{a_0}{2} + \sum_{n = 1}^{\infty}(a_n \cos nx + b_n \sin nx) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n = 1}^{\infty}(\frac{a_n - jb_n}{2}e^{jnx} + \frac{a_n + jb_n}{2}e^{-jnx}) \cdots (6)
となる。このとき、
$ c_n = \frac{1}{2 \pi} \int_{-\pi}^{\pi}f(x)e^{-jnx}dx
とすると、
$ \frac{a_0}{2} = c_0, \frac{a_n - jb_n}{2} = c_n, \frac{a_n + jb_n}{2} = c_{-n}
と記述することができる。よって、
$ (6) = \sum_{n = -\infty}^{\infty} c_n e^{jnx}
となる。これを複素フーリエ級数という。
この時、周期関数$ f(x)が実数に関する関数であるとき、$ c_{-n} = \overline{c_n}が成り立つ。
$ c_{-n}と$ c_nの共役複素数が等しくなるため、$ n >= 0だけを計算すれば、複素フーリエ係数を求められることになる。
また、周期が$ 2L (L > 0)の複素フーリエ級数は、$ x = \frac{L}{\pi}tとすることで、次式が得られる。
$ f(x) \sim \sum_{n = -\infty}^{\infty} c_n e^{j \frac{n\pi}{L}x}
$ c_n = \frac{1}{2L} \int_{-L}^{L}f(t)e^{-j \frac{n\pi}{L}t}dt
Reference