冠詞のルール(無冠詞、a、an、the、複数形)
【基本的なこと】
冠詞の細かな意味や使い分けは、英語において最も大事なもの(「品詞」と「働き」と「活用」の相互関係)には含まれない。優先順位は下げて勉強すれば良い
aとanとtheという3つの形容詞を特別扱いして「冠詞」と呼んでいる
「イメージできるorできない」という観点から考えてみると、その区別が見えてくる。
可算名詞ではなく、「可像名詞」
不可算名詞ではなく、「不可像名詞」
冠詞の使い方について、おそらく大部分の英語学習者は避けてきただけで、しっかりと勉強すればかなりの程度まで理解できる。
中には、熟語や決り文句だから理屈抜きで丸暗記したほうが良い項目もあるが、冠詞の原則についても、英語をやる異常、一通りは確認しておきたい。
【無冠詞】
vary from country to countryのcountryはなぜ無冠詞なのか?
そもそも、言葉とは「音と音の組み合わせ」だった。それがやがてだんだん具体物を指すようになっていった。
英語では、具体物を指すときに冠詞をつけたり、複数の-sを付けたりする。具体物以前の抽象的な状態、ないしは、まだ〈音〉に過ぎない段階を表すのが無冠詞と考えられる。
Batterflies fly from flower to flower.:この文の意味云々の前にまず、発音して見ると、fの音の連続が印象的に聞こえる。きれいに流れるのである。仮にflowerにaやtheを付けて発音して見る地と、このfの音の連続が多少途切れる感じがしないか。要するに、冠詞がないほうが伍長よく聞こえるのである。
なぜなら、無冠詞とは一つには〈(物でなく)音であるという状態〉を表すからである。
「ドンタコスったらドンタコス」というCMを聞いて、印象的なのはリズムが良いということ。その際に「ドンタコスとはなにか?」とは考えない。英語の無冠詞はこんな感じに近い。リズムが良いから冠詞を付けないのである。ただそれだけのこと。言葉とは所詮〈音遊び〉の道具なのである。
文法的な範疇に押し込むと、〈同語反復の無冠詞〉と呼べなくもないが、そのような理屈は発音してみて、きれいな音の並びを鑑賞すべきである。
sit side by side
walk arm in arm
live from hand to mouth(〈対句の無冠詞〉というものだが、理屈は一緒)
そういう意味では〈呼びかけ〉のときもそうである。呼びかけこそ音である。言葉を音として捉える時、冠詞は付けない。
【不可算名詞の可算化】
educationは通常は不可算名詞である。不可算名詞は数えられないということだから、aや-sをつけることはない。
ところが、不可算名詞もaが付く場合があって、これを〈不可算名詞の可算化〉と呼ぶ。
食事の名称(breakfast/ lunch/ dinner/ supper)はふつう無冠詞で使うが、これらの単語も直前に形容詞を伴うとaが付く。
形容詞が付くことによって、不可算名詞(=不可像名詞)が絵に描きやすくなる。だから自然とaが付くのである。加えて、形容詞が付くことで「いくつかあるうちの1つ」になるのでaが付く
【by+無冠詞名詞】
by carやby subwayのように〈手段を表す by〉と使うときの名詞は原則として冠詞は付けない。
byという前置詞は一言で言えば〈対比〉を表す。
「〜のそばで」の意味の場合も「よその場所ではなく〜のそばで」という事を言いたいわけだ。「〜単位で」という意味でも、「他の単位ではなく〜という単位で」という意味である。
〈手段〉のbyでも同じで、「他の手段ではなく〜という手段で」というように〈対比〉を表す場合に用いる
一方、a carなどのように冠詞や-sをつけるのは〈種類〉に言及したことになる。車なら、例えば、ベンツ、BMW、ポルシェといった具合だ。ところが、「車なのか地下鉄なのか」という対比をしているときは、この車がベンツなのかポルシェなのかはどうでも良い。ただ「車」という語と「地下鉄」という語を比べているだけなのである。
つまり、carやsubwayという〈音〉だけ伝われば十分である。
無冠詞の意味は基本的には〈音〉であった。これは、〈手段〉のbyと使う冠詞に管理が付かない理由ではないか。
※in a carやon the subwayと言うときには、なにがしかの冠詞が必要である。これもinやonといった前置詞による影響が大きい
inは基本的には〈枠の中〉という意味であり、「中」という以上、容器のような立体的なものをイメージする。つまり、このときの「車」ははっきりと絵に描けるような具体的な「車」なのだ。よって、in a carというようにaなどが必要になる。
onの基本的な意味は〈接触〉である。接触するということは体調は具体物でなければならない。これがonの場合にtheなどの冠詞が必要になる理由だろう。
ちなみに、aやtheや複数などは〈具体的である〉ということを意味する。
【a, an】
特別に「不定冠詞」と呼ばれている
次に続く語が子音で始まる時はaを、母音で始まるときにはanを使う
aは「いくつかあるうちの1つ」
「私の友達」はmy friendではなく、a friend of mineと言う。my friendと言うと「唯一の友人」すなわち、友人がたった一人しかいないように聞こえてしまうから。a friend of mineなら「何人か言う友人のうちの一人」という意味になり、友人は何人かいることになる。
my friendも使うこともある:my best friend「親友」とmy friend John「私の友達のジョン」などと言う場合。「親友」となるとそう何人もいるわけではないだろう。「ジョン」という友人のことだけで述べているので「唯一」でも良い。
旧友もmy old friendよりもan old friend(of mine)と書くほうが聞こえが良い。
This is a penは、相手がペンを知らない場合に使われる+「ペンと呼ばれる範疇に属する者のうちの一つです」と紹介するときに使うのである。
aは、相手を興味津々にさせる働きがある。
「車を運転する」→drive a carとすると、「何台かあるうちの1台の車を運転する」になる。簡潔に言えば「ある車を運転する」という日本語に等しい。こう言われれば、聞いている人は「どんな車?」と聞きたくなる。
「I stopped by a store yesterday, and all the DVD recorders were 300% off.」「Where did you go?」:a store「ある店」と言われれば、どの店だか気になって仕方がない。「どこの店」と聞きたくなるのが人情だろう
ただ「車を運転しない」といいたいのなら、I hardly ever drive.である。 I hardly ever drive a carと書くと、「ある車をめったに運転しない」という意味に鳴ってしまい、相手は「何の車」なのか興味津々になる。driveは自動詞として使う。「本を読む」も「歌を歌う」も同じように自動詞でreadとsingと英訳する。
aが「1」を表す場合
aの次の名詞が数量を表す場合のみ、aが「1」を表す
in an day/ by a minute(dayもminuteも「数量を表す単位」)
それ以外にあえて「1」を強調したいときはaだけではダメ。only one~やa single~と言うのが普通
aとoneはイコールではない。aが「1」で表すことができるのは、あくまでも「数量を表す単位」の名詞と使うときだけ。それ以外で「あ」を表したければ、oneが正しいが、oneも単独で使うことは稀で、onlyを伴うことが多い。
また、a singleは否定文で使われることが多い。日本語でも、「〜ない」という言い方より「1つたりとも〜ない」と言う言い方のほうが否定を強調できる。英語でもnot a sinlgeと言うことで否定の強調語なる。
「ちょっと」を表すa
aは単数である。単数であるということは、当たり前の話であるが、複数と比べたら少ない。つまり、「ちょっと」ということである。
ここからaの「ちょっと、少し、一瞬」という意味が派生してくる。
shower「にわか雨」は一瞬で止むのでa shower。これに対して、rainは「しばらく降る雨」ということを意味する。しばらくと言ってもどれくらいの期間かは漠然としていてイメージが湧かないからrainは「不可像名詞」となる。
make a brief stop:「(駅に)短時間停車する」ことを意味するが、仮にbriefが無くても、aは「ちょっと」を表すので、これだけで「短時間」ということを醸し出している。駅における乗降を案内するのであれば、停車時間はちょっとしかないことを言っておかなければならない。stopだけでは「ちょっと」のニュアンスが出ない。
look atとtake a look atの微妙な違いもわかるのではないだろうか。
〈新情報〉のa
aは基本的には相手が知らないと予想されるような〈新情報〉を示す場合が多いので、文頭にすることに抵抗を感じる。
旧情報→新情報の流れにするのが自然である:A book is on the deskは不自然。
新情報は主語にしたくないのでthere is構文が発達した。いきなりaから始まる文は突飛な感じがするが、there isをまず言ってからaと言うならばthere isがクッションになって、突飛な感じが避けられる。
むしろ、there isは〈次に新情報が続く〉ことを予告する働きがある。
故に、there isの次は基本的にはaが付く名詞がくるのであって、theになるのは稀である。theはどちらかと言えば旧情報の時に用いるからである。
基本的には次の2つの意味を示す
①(不特定の)ある名詞
※不特定というのは、「聞き手には、どれであるかわからない」ということ。話し手はどれであるか分かっていても良い。
?「相手が知らないことについて述べる場合はa」
a は絵に描ける、相手にいくつかのひとつをイメージさせる
②(個別的、具体的な)一つの名詞
※個別的、具体的なというのは、「同種の他のものと区別できて、1つ2つと数えられる」ということ。
《コラム①:a, anを使う場面》
話し手が「この名詞は1個2個と数えられる名詞で、これは単数である」と話し手が認識した時に、そのことを聞き手に伝えるために、話し手が使う
話し手が「この名詞は1個2個と数えられる名詞である」と認識する理由はいろいろある(参照:『わかりやすい英語冠詞講義』石田秀雄著)
理由1:空間的に他の同種のものと区別できる境界を持っているから
ただ「空間」と言っただけでは、他の空間と区別できる境界がないので1つ2つと数えられない。だから、ただ「空間」は冠詞をつけずにspaceと言う。それに対し「駐車場の一区画」は、境界線で仕切られていて、1つ2つと数えられる。そこでa parking spaceと言う。
理由2:時間的に他の同種のものと区別できる境界を持っているから
ただ「沈黙」と言っただけでは、他の沈黙と区別できる境界がないので1つ2つと数えられない。だから、ただ「沈黙」は冠詞をつけずにsilenceと言う。それに対し「彼の発言の後に長い沈黙があった」の「沈黙」は時間的に始まりと終わりがあって、他の沈黙と区別でき、1回2回と数えられる。そこでa long silenceと言う。
理由3:形態的に他の同種のものと区別できる境界を持っているから
「美」は景色にも芸術にも人間にもある性質であって、形式の美と芸術の美は、お互いに区別できる形態的な特徴を持っていない。だから「美」は冠詞をつけずにbeautyと言う。それに対して「美人」「美点」「美しいもの」は形態的に他の美人、美点、美しいものと区別できる特徴を持っている。だから「一人の美人」「一つの美点」「一つの美しいもの」はa beautyと言う
理由4:内容的に他の同種のものと区別できる境界を持っているから
ただ「赤ワイン」と言ったときは液体の物質である赤ワインで、内容的に他の赤ワインと区別できる特徴を持っていない。だから冠詞をつけずにred wineと言う。それに対して、ボルドー産の赤ワインのように「(ある特定の地域の)赤ワイン」は味や香りの点で他の産地の赤ワインと区別できる特徴を持っている。だからa red wineと言う。
理由5:物質や素材ではなく、物体だから
「石造りの教会」と言うときの「石」は石という物質・素材を指している。だから、この場合の「石」は冠詞をつけずに、ただstoneと言う。それに対して「彼は石を投げた」と言うときの「石」は輪郭のある塊としての物体で、1個2個と数えられる。なのでa stoneとp言う
理由6:物質や素材だが、容器に入っていたり、固められたりしているから
「コーヒーを飲む」と言うときの「コーヒー」は液体の物質なので、冠詞をつけずに、ただcoffeeと言う。それに対して「一杯のコーヒー」は容器に入っていて、一杯二杯と数えられるため、a coffeeと言う。「一杯のコーヒー」は、物質のコーヒー(無冠詞のcoffee)を使ってa cup of coffeeと言うこともできる。
理由7:現象ではなく出来事だから
「火」は酸素が燃焼している現象なので、冠詞をつけずに、ただfireと言う。それに対して「火事」は一件二件と数えられる出来事なのでa fireと言う
《コラム2:a, anは名詞の意味を根本的に変えてしまうことがある》
普通の形容詞は、名詞を説明したり限定するだけで、名詞の意味を根本的に変えることはない
定冠詞theにはこのような特殊性はない
冠詞をつけないchicken:物質や素材なので「鶏肉」
a chicken:1つ2つと数えられる物体なので「一羽の鶏」
冠詞をつけないroom:「空間、余地」
a room:「部屋」
【the】
特別に「定冠詞」と呼ばれている
次に続く語が子音で始まる時は「ザ」と発音し、母音で始まるときは「ズィ」と発音する
theの定義は「唯一の」
「誰もが連想する唯一の」→日本語の「いわゆる」に近くなる
〈一度出てきた名詞〉に付くtheも〈状況からわかる〉theにしても、共通点は「自動的に唯一に決まる」ということ。
It's cold. Can you shut the window?:その場にいる人間から見れば、開いている窓は自動的に1つに決まるはずである。よって、初登場でもthe windowとなる。仮にa windowだとすると、いくつかある窓のうち1つを閉めてくれという意味になってしまう。窓がいくつかあるのなら、そのうち1つだけを閉めてもまだ寒いだろう。
In this part of the country, the cherry vlossoms xome out in early March.:part of the countryは「地方」という決り文句だが、これはどこでこの文を喋っているかで自動的に決まる。名古屋で喋っていたらthe countryは日本、ホノルルで喋っていたらthe countryはアメリカ合衆国となる。
I have to hand in this paper by the end of the month.:いつ喋っているかで自動的に1つに決まる。9月に言っていればthe monthは9月となる。つまり、発言時から見ればthe monthは「今月」を指すことになる。monthが「月」なので、theが「今」に相当する。ここから、theに「今」という意味が派生してくる。
Do you have the time?:「今何時?」という意味になるが、「今」に相当する部分はtheが担当している。Do you have time?「お時間ありますか?、お暇ですか?」と混同しないように。
the first/ the second/ the third/ the fourth/ the fifth/ the sixth/ ...:the firstんsどの序数を表す語は、「最初の」と言った時点で何を指すのか自動的に決まってしまうので、普通theが付く
the last/ the only/ the same/ the best:こちらも同様。
初登場でもthe
「電車」や「図書館」は初登場でもtheになる。「電車」「図書館」と言うだけで話が通じるということは、相手もそれを承知しているからである。
このように、初登場であっても、状況から分かる場合にはtheを用いる。
関係詞によって限定されているからと言って、先行詞の冠詞がtheになるとは限らない。
Hiroshi is an only child.:「一人っ子」はこの世に何人もいるわけだが、そのうちの一人となるので冠詞はaとなる
I am the only son in my family.:「我が家」に限定されれば「息子」は一人だけ、つまり唯一ということになるので冠詞はtheになる。
このように、限定とは意味上で言っているのであって、単純に関係詞節がつながるというような限定的な意味ではない。
同格で使う名詞の冠詞はtheになることが多い。
名詞の次をthat節やof句で繋ぐ場合が多いが、「〜(する)という名詞」と訳せる場合。
I heard the rumor that Mr. Kato is going to run for mayor.
I disagree with the idea of enthanasia.
〈同格〉とは、〈話題を1つに絞る〉ということだから。その内容が「唯一」に絞られるのでtheになる。
※同格の場合はtheになることが多いが、関係代名詞の場合はtheとなるとは限らない。
〈主格〉〈目的格〉〈同格〉のof:ofには3つの場合があるが、このときの前の名詞の冠詞はtheになる。〈主格〉とはofが「〜が」、〈目的格〉は「〜を」と直訳できる場合である。
ただし、A of Bのとき、Aの冠詞はいつでもtheになると勘違いしてはいけない。a family of four「4人家族」のようaになることもある。「4人家族」はこの世に何世帯もあり、その中の1つだからである。
環境のthe
「太陽」はこの世に1つしか存在しない、つまり唯一だからthe sunになる。だが、稀にsunが複数になったり、無冠詞になったりする。
Suns don't necessarily have planets going around them.「恒星の周りに惑星があるとは限らない」:このsunは天文学で言う「恒星」である。恒星はこの宇宙に何億個も存在するだろうから複数になる、
My room doesn't get a lot of sun.「僕の部屋は日当たりが良くない」:このsunは「日光」というイメージしにくい概念であると言うことと、a lot ofの次は無冠詞にするという規則による。
日常生活ではあまり他の恒星のことまで考えていないだろう。sunと言えば、太陽系の恒星である「太陽」を示すことは周知の事実だ。このように〈常識から自動的に唯一に決まる〉からtheになるという場合がある。
太陽と同様に、この世を構成する上で不可欠のもの(月・空・海・風・大地など)にはtheが付く:the sun/ the moon/ the earth/ the sky/ the sea/ the air/ the wind/ the universe/ the environment/ the weather
環境単語でもtheが付かない場合:これらの語も、形容詞などの修飾語が付いたり、環境という観点ではなく物質的な観点で捉えた場合は事情がまた違ってくる。
We couldn't survive without air and water.:airとwaterとの並列から分かる通り、物質的な観点から述べている。物質は絵に描きにくいので無冠詞になる。
Bad weather adversely affects your mind.:形容詞がついて一般論を表す場合には、theが必要なくなる場合が多い。weatherhは常に不可像名詞なのでaは付かない。
Whenever there is a full moon, he howls all night.:moonは形容詞を伴うと「色々ある月の一種類」という意味で冠詞はaになる。
1つの町には学校というものが存在し、学校には教室があるのが普通なので環境のtheを使ってthe classroomにする。
対比のthe
futureを「未来」という意味で使う際は、現在(the present)、過去(the past)と対比しているのでTheが付く
the country/ the countryside「田舎」⇄the city「都会」
the ind
基本的には次の2つの意味を示す
①(今話題にした)その名詞
a doctorは「不特定の医者」、one's doctorとthe doctorは「かかりつけの特定の医者」の場合に使う
聞き手が容易に特定できる「本屋(たとえば近所の本屋)」ならthe bookstoreで良いが、それ以外ならa bookstoreにする。
the flu:通常「インフルエンザ」にthe fluと定冠詞が付くのは「今流行中の特定の流感」だから
?「相手も知っている共通事項の事柄にはtheをつける」
②(あなたもご存知の)この、あの、例の名詞
次の使い方を知っておくべし。
(常識的に)一つしかない名詞にはtheをつける
「the 名詞」が「名詞というもの」という意味を表すことがある
→総称のthe:the dog: 犬と呼ばれる動物の最大公約数的なもの(=犬と呼ばれる動物の典型)を指す場合
《コラム1:定冠詞を使う3つの場面》
(1)「この名詞の指示対象がどの名詞であるか聞き手に当然わかるはずだ」と話し手が認識したとき
「この名詞の指示対象がどの名詞であるか」というのは「この名刺が指し示しているのは特定の名詞なのだが、実際にどの名詞を指しているのか」ということ
「この名詞の指示対象がどの名詞であるか聞き手にわかる」とき「the 名詞」というのではない。これは「聞き手がわかる状況が客観的に生じているとき」あるいは「聞き手が実際にわかるとき」という意味だが、そうではない。正しくは、「聞き手に当然わかるはずだ」と話し手が認識したとき「the 名詞」と言う。これは「聞き手には当然わかるはずだ」と話し手が認識しただけだから、話し手が勝手にそう認識しただけで、客観的には聞き手がわかる状況ではないかもしれないし、聞き手には実際にはわからないかもしれない。しかし、それでも構わない。theを使うのは話し手なので、話し手が「聞き手には当然わかるはずだ」と認識すれば、話してはtheを使っても良いし、実際にtheを使う。なので、話し手が「the 名詞」と言ったとき、それを聞いた聞き手が「なんだ『the 名詞』って?『the 名詞』なんて言われても、何を指しているかわからないぞ!」ということが起こり得るのである。
話し手が「この名詞の指示対象がどの名詞であるか聞き手には当然わかるはずだ」と認識するのはいろいろなケースがある
case1:以前に話題にしたので「その名詞」と言えばわかる場合
case2:お互いに共通の理解があるので「例の名詞」あるいはただ「名詞」と言えばわかる場合
「この手紙を郵便局に持って行きなさい」と言う場合、「郵便局」といえば、聞き手は「あの、いつもの、駅前の郵便局だな」とわかる状況があるときthe post officeと言う。そうではなくて「どこの郵便局でもいい、ともかく、どこかの郵便局」という場合にはa post officeと言う
case3:説明をつけたので「以前に話題にした名詞」であること、あるいは「お互いに共通の了解がある名詞」であることがわかる場合
「本」と言っただけでは、聞き手はどの本かわからない。しかし「昨日私が買った本」と言えば、聞き手は「ああ、さっき話してが話題にしていた本のことか」とわかる時にはthe book I bought yesterdayと言う。それに対して「昨日私が買った本」と言われても、聞き手は初耳で、どの本かわからないときはa book I bought yesterdayと言う。したがって、「これ"が"、私が昨日買った本です」の「昨日買った本」はthe book I bought yesterdayだが、「これ"は"、私が昨日買った本です」の「昨日買った本」はa book I bought yesterdayとなる。
(2)「この名詞の指示対象について聞き手は知らないかもしれないが、これが1つしかないことは聞き手には当然わかるはずだ」と話し手が認識したとき
話し手がこのように認識するのは「常識的に1つしかない」ことが根拠になっていることが多い。例えばthe president of a companyのような場合。
(3) 個体による小さな違いを切り捨て、同類のもの全てに共通する要素だけを残して「〜というもの」と言うとき
the dog is a useful animalのような場合。→総称のthe。
【〈総称〉〈一般論〉(「〜というもの」)を表す無冠詞単数形と無冠詞複数形】
無冠詞複数形は〈総称〉〈一般名〉を表す:girlsの直訳は「女の子というもの」。「女の子」とは特定の誰というわけではなく、性別が女であれば誰でも良いわけである。言ってみれば世界中の「女の子」が対象である。いちいち数えていられないくらいたくさんいる場合、具体的人数は頭に浮かばない場合、無数にいっぱいいる場合はtheは不要で、は無冠詞複数形にする。
「私はりんごが好きである」と言いたいときに、I like an apple.と答えてしまうと「あるりんごが好きなんだよね〜」という意味になり、相手を興味津々にさせてしまう。この例でわかるように、aは〈一般論〉を表せず、別の意味になってしまう。〈一般論〉を表すのであればI like apples.のように無冠詞複数形でなければならない。
確かにaにもtheにも総称用法があるが、これでは混乱してしまうので、別々に理解するのが好ましい。とにかく総称や一般名を表せるのは、十中八九「無冠詞複数形」であって、これが口語体であることも忘れてはいけない。
不可算名詞→無冠詞単数形
Language is a wouderful means of communication.
Sport helps us keep fit.
可算名詞→無冠詞複数形
Computers are indispensable tool of our daily lives.
Comics are popular because they are cheap and easy to read.
《「総称」のthe + 単数名詞》を用いて、The computer is ~とも言えるが、「総称」のtheはautomobileやairplaneなどの「科学技術の産物」に限定して用いるのが無難。
《a + 単数名詞》を用いて書いても間違いではないが、、日常の英語では「無冠詞・複数形」が好まれる。特に、「私は〜が好きだ」という場合、I like dogs.が最も普通である。
上記の区別はすべて名詞によって決まる。
必ずしも「language=不可算名詞」というわけではなく、たとえば「日本語は面白い言語だ」などの言語は、「ある1つの特定の言語」なのでa languageと、可算名詞扱いとなる
【〈特定の集団〉を示すthe + 複数形】
the+複数形は〈特定の集団〉を表す:the girlsと発する時は、相手もどの「女の子の集団」を指すのかわかっていることが前提である。その数は何人いるかはっきりわからないまでも、特定の集団である以上、有限集合であることはわかる。その気になれば数えられそうな場合はtheを伴う。有限集合にはtheが付くと言っても良い。
〈固有名詞の集団名〉はthe+複数形で表す:the Beatles/the Carpentersなど。theのイメージ的には〈メンバーをぐるっと巻いて締める〉感じである。「苗字」の複数形にtheをつけると「〜一家、夫婦、兄弟、姉妹」という意味になるのもこの理由による。
【総称のa】
定義のa
定義のaは主語でしか使わない。
An orphan is a achild who has no parents.
世間ではこのようなaを総称用法と言うのだが、無冠詞複数形と区別がつかなくなるので、「定義のa」とする。aを総称している文を分析すると、定義を述べている文が多いため。
一人一つずつのa
一人一つずつのaは目的語でしか使わない。
「10代の若者の多くは常にくしやブラシを携帯している」を訳すとき、Many teenagers always have combs and brushes on them.と言うと、いささかおかしく聞こえる。Many teenagersは適切であるが、くしやブラシまで複数形にしてしまうと、1人でクシやブラシを何個も持っているようなイメージになる。さすがにくしとブラシは普段から複数持ち歩いている若者は滅多にいないだろう。ふつうは1人1つずつ持っているものである。このようなときは単数形の方が良い。よって、aをつけてa combとa brushとするのが良い。
主語が複数形(総称)であるにもかかわらず、目的語がaになる場合は一人一つずつというニュアンスになる。
【総称のthe】
学問のthe
総称のtheを用いるときは、学問的に物事を述べる時であるから、「学問のthe」と覚えよう
口語体の「無冠詞複数形」とは違って、学問のtheは堅い文章体である
しかも、学問のtheを使う名詞は決まっていて、「発明品」か「動物」か「体の部分」である。
同じ情報のthe
「天気予報」のthe weather forecastは、相手がどの天気予報か知らなくてもふつうtheが付く。それはどの天気予報でも情報は同じだからである。どの天気予報も情報源は同じで、気象庁からの報告である。情報は唯一に決まるのである。
類例としては「新聞」や「辞書」もthe newspaperとthe dictionaryとなることが多い。どの新聞も一面記事になるようなことは大体同じだし、大雑把に言えば、どの辞書の内容も大体同じと考えるからである。〈どの情報源でも代替情報は同じ(=唯一の情報)〉というわけだ。
【冠詞を付けないルール】
固有名詞にtheを付けない:駅・公園・山・湖・空港
Kyoto Station(固有名詞の場合はstaitionのsも大文字にする)
Yoyogi Park
Mt. Fuji
Lake Biwa
Narita Airport
(「琵琶湖まで私が通った道」のように"特定できる"道の場合はtheをつける)
固有名詞にtheが付く:川・海洋・山脈・山地
the Katsura (River)
the Rubicon
the Pacific (Ocean)
the Atlantic (Ocean)
the Rocky Mountains
the Rokko Mountains
上記事項は暗記するしかないのだが、「the+普通名詞=抽象名詞」という公式から説明可能
The pen is mighter than the sword.:penという普通名詞にtheが付いて「言論」という抽象名詞になった。theは「唯一」を表すものであった。the penとは「ペンと聞いて唯一に決まるもの」「ペンと聞いて誰もが連想する共通するもの」という意味ではないか。そして、それは「言論」というわけだ。the swordは「剣と聞いて誰もが連想する唯一のもの=武力」となる。
では、「桂」や「新宿」と聞いて何を連想するだろうか。大半の人は「桂川」になるだろう。だからRiverを省略できる。では、「新宿」は?「駅」を連想する人もいるし、別の例も連想する人もいるのと思う。なので、Stationは省略できない、と考えられる。これは仮説である。
schoolは無冠詞?
Parents play a crucial role in preparing their child for school.:この「学校」は「学校教育」という概念に近い。「学校教育はイメージしにくいので不可像名詞扱いになる。
この無冠詞+不可像名詞の使い方が特殊なだけであって、他の用法は一般の冠詞用法と一緒である。
schoolを無冠詞で使うのは、ほとんどが慣用句なので、そのまま覚えてしまうのが良い。
go to school「通学する」
leave school「卒業する」
do welll in school「成績が良い」
after school「放課後」
at school「学校(という場所)で」
in school「学校時代に、校内で」
on one's way to school「学校に行く途中」
on one's way home from school「学校からの帰宅途中」
stay away from school「学校を休む」
be suspended from school「停学になる」
be expelled from school「退学になる」
There are five hundred students at our school.:「うちの学校」だけということを特定する時にはour schoolということもある。
The school is very authoritarian.:「特定の学校」についての言及ならthe schoolと使える。
Koji is going to a commercial school.学校の種類について言及するならa + 形容詞 + schoolの形をとる。形容詞がついてイメージしやすくなるからaが付く。
Schools used to be a place to play more than study.「一般に学校というもの」と総称で使う場合はschoolsのように複数形にする。
「適度な運動をするとか、音楽を聴くとか〜」の表現の時に、musicは特定の音楽には該当しないので、the musicにはできない。なので、your favorite musicに表現し直して回避する。
※「私の一番好きな」をmy most favoriteと言ってはいけない。favoriteには最上級の意味が入っているからである。
【someの用法】
someは冠詞のようなものである。
some+可像名詞
複数形とは、複数ではなく総称。「some + 複数形」がいわゆる複数なのである。a countryの複数は、some countries。
There is a book on the desk.を複数にしたら?There are books on the deskで良いのか?:booksは無冠詞複数形なので総称と解釈できるが、これの日本語は「本というもの」ということになる。これは「本を一度も見たことがない人」に対しての発言にならないか。
正しくは、There are some books on the desk.である。
ここで、booksにsomeが付いたと認識するよりも、初めからsome booksがワンセットでa bookの複数形と抑えた方が実践的だ。someを使う以上、「少しの、若干の」という意味が含まれることになるが、「机の上に何冊かの本がある」と訳すのはおかしい。日本語としてそう言わないからである。このsomeは訳しようがないが、一般には、someの訳語としては「一部の」が一番近いだろう。
some+不可像名詞
「水をください」はGive me waterではない。waterは不可像名詞であり、不可像名詞の場合は何も冠詞をつけないと総称になる。「水」は英語でsome waterと最初から暗記した方が良い。ただし、someを使う以上「少量の」という意味が含まれることは注意したい。
moneyやmedicineも一緒である。some moneyだし、take some medicineである。
疑問文でsomeを使うパターン
someは肯定文、anyは否定分という解説は焦点がずれている。
◯:Could you lend me some money?:素直に「お金」はsome moneyなのだと覚えよう。
✖️:Could you lend me any money?:anyの基本的意味は「何でも」である。よって、「お金であれば何でも良い」になってしまう。
肯定文でanyを使うパターン
Do you have something to write with? Anything will do.
anyの基本的意味は「何でも」であれう。否定分で使うとnot ~ anyで「何であれ〜ない→少しも〜ない」となるだけだ。
ただし、anyを肯定文で使うときは動詞部にwill/ can/ would/ could/ may/ mightが入ることが多い
【所有していない所有格】
所有格は所有を表すのか?
所有格は「人の所有の」という意味以外に「人が利用している」という意味がある。
my trainと言えば、ふつう「私が利用した列車」という意味だ。
「私の乗った飛行機」と「私のアパート」の英訳は?
The plane I tookとThe apartment I'm rentingはいささかくどい。それぞれ、my planeとmy apartmentで十分である。
これだと「私の所有する飛行機」や「私の私物としてのアパート」という意味にならないかと心配する人もいるだろうが、大丈夫。確かに、そういう可能性もあるが「飛行機」の場合は常識から考えても、私物である可能性は極めて低かろう。「アパート」の場合は賃貸かもしれないし、分譲かもしれないが、そういうことを問題にしない限り、その区別はどちらでも良い。
逆に、所有していることを表したいときに、所有格だけでは不十分な場合もある。
「自家用車」→「マイカー」?「マイホーム」も怪しい和製英語である。
「私はマイカーを持っている」→I have a car.:特殊な場合を除いて、haveと所有格は一緒に使えない。haveも「所有」を表し、所有格も「所有」を表すので重複するからだ。
「マイカーを買うゆとりがない」→I can't afford a car of my own.:「自分専用車」ということを強調するのであればof mey own「自分専用の」という熟語を使ってa car of my ownにする。
「マイホームを買うことにした」→I've decided to buy my own house.:日本語の「マイ〜」は往々にして英語ではmy〜ではなく、my own〜になる。