終末器
終末器〈インデックス〉
世界を強制終了させるエスケープキー。彼方が彼方の敵にすべてを賭けさせるための究極の災厄。
当初、彼方はそれをファンタジスタで正式に実装された機能だと考えていた。 彼方はその信条により、ファンタジスタでの対戦に勝利したあとには必ず自殺を行うが、自殺に成功したあとに彼方のそばにあらわれるものがこの終末器だった。 見た目は、十センチ四方ほどの立方体の上部にボタンがつき、全体が虹色に輝いている物体であり、周囲の者との位置関係や環境条件にかかわらず常にはっきりと最前面で表示される。彼方がボタンを押下すると彼方がいるワールドがなんらかのかたちで終了し、彼方は現実世界(自殺狂世界)に帰還する。彼方は、対戦という目的が果たされた世界を完璧に清算するという意図で自殺後には終末器を押すように努めていた。 しかし、誤って現実世界において終末器を押してしまった前後からこの能力の特殊性が明らかになり始める。
まず、終末器はそもそもファンタジスタに実装された機能ではなく、貫存在である彼方自身が持つ能力である。そのため、ファンタジスタでなくとも彼方がいる世界でさえあれば、条件を満たせば出現・発動する。
当初、出現のためには彼方が自殺を成功させる必要があった。しかし、自殺に成功すると本当に死んでしまうThe_Killing_of_a_Sacred_Dear世界以降この条件は次第にあいまいになっていき、『延命手段を手放す』といった消極的な自殺(第29話)や『自分の手で首を絞める真似をする』といった自殺のポーズ(第51話)でも出現させられるようになり、最終的にはほぼ任意で出現させているようにみえる。 出現後は、ファンタジスタにおける出現時と同様、世界のローカルな事情を無視して常にはっきりと最前面で表示される。また、あらゆる物理的干渉を透過し、彼方自身を含め誰にも動かすことはできない。唯一受け付ける干渉は彼方のボタン押下のみである。 ボタンが押下されるとその世界は終了する。具体的には、超現実的な光景を経ながら世界に属する事物すべてが消滅していく。ここで見られる超現実的な光景の内容と長さは世界によってまちまちだが、彼方曰く、総じてそう長くはないらしい(第55話)。
世界が終了した後、彼方は終了時の装備品・記憶をすべて所持し、肉体に与えられたダメージは全快した状態で異世界に転移する。その転移先の異世界では、先だって終了した世界が何らかのかたちのフィクションとして存在している。
終末器の押下後に転移した後の世界では転移する前の世界がフィクションとされている、ということは、終末器の押下によってある世界の客観的状態がリアルからフィクションに変更される、ということにもとれる。このことを彼方は空水此岸から気づかされ、自身の能力をゲーム成立のために利用することを選んだ。ユニークスキルとしての真の名前は現実指標〈リアルインデックス〉。本質開示定型文は第49話。 彼方による終末器の押下が世界をリアルからフィクションに変えるとするならば、ある世界の住人にとって、自分の世界で終末器が押されることは自分の人生が誕生前から死後に至るまでリアルでなくなってしまうということに等しい。自分の人生がリアルでなくなることをなんとしても避けたいひとは(少なくとも此岸の想定では)そう少なくない。そういった人々は、彼方が終末器を押そうとすればそれを全力で阻止しようとすることが期待される。そのため、彼方は全力で自身と向き合ってくれる敵を作るため、自身が取り組むゲームのルールを『なんとなく流れで行う殺し合い』から『彼方に終末器を押させるか押させないか』へと変化させて自覚的に設定することになる。
なお、終末器が世界を“終了させる”という部分にはやや語弊があり、終末器の押下によってもたらされるのは世界の不可逆なシャットダウンではなく単なる再起動。押下によって滅んだあと、世界は概ね似たような歴史をたどってから押下時点での状況を再度実現する。永劫回帰と言えば話が早い。
ところで、終末器をはじめとした貫存在のユニークスキルは特定の貫存在に紐づいており、真正な能力者以外に同等能力を再現されることは基本的にないが、数少ない例外として終末器と汎将の事例がある。 80'sうるユニ世界(とそれを含んだ世界環)から旅立つとき、彼方と天輪神威は互いが互いの思考・動きを完全に想像=創造する境地に辿り着き、汎将の変形パターンとして終末器が出現する。この汎将/終末器は彼方と神威、2人が共同して行った押下を受け付けており、2人が2人とも真正な能力者であることを示している。 没になった名称案として終末器〈ゲームオーバー〉がある。
●終末器がもたらした超現実的な光景
・ファンタジスタ:岩場と砂地のフィールド(第1話)
動いていたオブジェクトが静止し、風景が一瞬明るくなってから暗くなっていく。世界はフェードアウトする。
・自殺狂世界(第24話)
宇宙の星々が星座のように炎の橋で結ばれる。世界は焼け落ちる。
・The_Killing_of_a_Sacred_Dear(第29話)
あらゆるものが砂状に変化していく。世界は崩れ去る。
術者もいないままに世界中で精霊術【ゲーマゲ】が暴走する。四方で巻き起こる災害はエンペドクレス流の四元素説を象徴している。世界は崩壊する。 太陽の運行が加速し、あらゆるものの境界が不明確になり、植物は枯れていく。世界は溶けて消える。
空が割れて露出した謎の赤い面から謎の青い稲妻が地面へ落ちる。青い稲妻は地面を引き裂きながら赤い面へと引き寄せる。世界は閉じられる。
空から降りてきた巨大な手によって地表が押しつぶされ、殴りつけられ、叩き壊される。それはこの世界流の“恐怖の大王”だ。世界は首尾よく支配される。
創世の過程が逆向きに再現される。世界は始まりに戻る。
・80'sうるユニ世界(第87話)
空が赤く染まって血の雨が降る。世界は……