黄泉比良坂
黄泉比良坂〈ファイセット〉
不思議な虹色のインクと、それを使って開くポータル。神出鬼没である趙の最大の秘密のひとつ。
趙が手や脚で何かをなぞるような動きをすると、虹色のインクのようなものが飛び散って様々なものが着彩される(なにもない空中に着彩することもできるらしい)。その着彩された面を叩き割ると漆黒の空間につながるポータルになる。このポータルに放り込まれたものはその後行方知れずになる。ただし、趙がこのポータルに入っていった場合、次の瞬間には趙は別の場所に開いたポータルからまた飛び出してくる。趙が次のポータルをどこに開くのかは誰にも予想がつかない。つまり、ごみ処分と瞬間移動に使える能力、それが黄泉比良坂である。 なぜ、ごみ処分と瞬間移動が一つの能力を通して実現できるのか。その答えは、ポータルから垣間見える漆黒の空間の正体が“空集合=死の国”であることから紐解ける。ユニークスキルとしての真の名前は空集合近傍〈ファイセットニーバー〉。本質開示定型文は第61話。
ゲーマゲの世界観において、“死んで何者でもなくなる”という現象の本質はどの世界でも共通である(趙曰く、『死神だって死んだら無に還る』(第61話))。そして、死の国=何者でもないものがいる場所があるとすれば、そこはすべての世界からゼロ距離の場所に隣接している。なぜなら、どの世界のどんな場所にいようが、死ねば、死ぬからである。
黄泉比良坂は死の国(のすぐ近く)へつながるポータルを開く能力である。よって、黄泉比良坂を使って開けたポータルに突然放り込まれた人や物は、おそらくほとんどが死の国へ落下し、何者でもない死者となっている。また、趙はこのポータルから死の国に向かい、死の国に落ちないギリギリの場所にとどまることができる。また、死の国から任意の世界の任意の場所に戻るポータルを開くこともできる。任意の場所から死の国への距離と死の国から任意の場所への距離はいずれもゼロであるので、趙が任意の場所から死の国を経由して任意の場所に向かうとき、その経路は限りなくゼロに近い距離にできる。これを利用したのが黄泉比良坂による瞬間移動である。
なお、黄泉比良坂による瞬間移動を行うとき、趙が漆黒の空間に入っている間は来し方行く先の様子が目視確認できない、という弱点(?)が存在する。趙が即座に目視できない遠方(例えば異世界など)に瞬間移動を行う場合、行く先がどこであるのかを趙がきちんと認識しているのか否かも不明である。
貫存在のユニークスキルは正統な使い手以外には基本的に真似ができないものだが、趙の黄泉比良坂の場合、『真似ができない』というのは新たに虹色のインクを生成する部分のみに適用され、インクを使うだけならば趙以外の人物にもできる。現に空水彼方は、趙が生成した虹色のインクを二次利用して一回限りの瞬間移動を行っている。