ガングプランク:物語「海へと溢れる血」
ガングプランクにカトラスを腹部に深々と差し込まれ、ノクサス軍の艦長はその巨体を引きつらせて、戦斧を地に落とした。刺青で飾られた戦士の唇からは、声にならぬ罵りと血のあぶくが滴り落ちる。 ガングプランクはにやりと笑うと刃を引き抜き、死にゆく男を甲板へ突き飛ばした。男は重い鎧の音を響かせて崩れ、溢れる血はガレー船の上甲板を洗う海水に混じり、流されていった。ガングプランクの船の黒塗りの船体がぬっとその姿を現し、乗り込み用の釣縄が次々とかけられて、二隻の船は互いに横付けとなった。 ガングプランクは痛みを押し殺すため、黒と金の歯をかみ締めていた。あのノクサス軍兵との死闘はまさに紙一重だったのだ。だが、手下たちに弱みを見せることをよしとせず、唇の両端を吊り上げて凶悪な笑顔を作ってみせる。 風と雨に打たれながら、ガングプランクは残るノクサス兵たちに向き直った。敵の艦長に命を賭けた決闘を挑み、そして勝利したのだ。今や、ノクサス兵たちの戦意は消え失せていた。 「この船は俺のものになった!」吹き荒ぶ風の中でも聞こえるほど、ガングプランクは大声を張り上げた。「まだ文句のある奴はいるか?」 ノクサス兵の一人がガングプランクを睨む。顔に血の信仰を意味する刺青を施し、棘のついた鎧に身を包んだその巨躯の戦士は吼えた。 「俺たちはノクサスの人間だ。貴様のような奴に船を受け渡すくらいなら、死んだ方がマシだ!」 「よかろう」
きびすを返したガングプランクは、身の毛もよだつような笑みを浮かべ、手下たちにこう命じた。 「皆殺しだ。そのあと奴らの船は、灰になるまで焼き尽くせ!」