雨読晴耕村舎へのインターンシップ
担当教員である土居に対し、インターンシップを履修した関貴悠くんから2017年08月30日に提出されたレポート「ヤギ小屋の製作作業と持続可能な生活様式の考察」を紹介します。なお掲載にあたり、一部、土居が加筆修正を施しました。
https://gyazo.com/877bfdb56b74a3362daea7b6eba6c734
目次
はじめに
1.研修の概要
おわりに
参考文献
はじめに
_私は、インターンシップ先として数ある企業・団体の中から、今回「雨読晴耕村舎一級建築士事務所」さんを選んだ。当初は、意匠系の設計事務所を考えていたが、農業と建築事務所を兼業している雨読晴耕村舎(所長・後藤さん)のホームページを拝見し、その自然との共生を主眼とした思想や、理念に共感を覚えた。私自身は将来、都市部から離れた地方に密着した建築業に携わりたいと考えており、雨読晴耕村舎でインタ ーンシップを受けることで、具体的な実践例を知ることができるのではないかと考えたのも、選んだ理由の一つとなった。このレポートでは、私が40 日間で体験したインターンシップの概要とともに、自分自身の建築像を固める上で大きな糧となった、雨読晴耕村舎が掲げる「持続可能な生活」の一端に触れていきたい。
1.研修の概要
_今回の研修では、4つの作業に取り組んだ。以下では、ヤギ小屋の制作、糧工房関連、民家の屋根改修工事、保育園のホームページ作成の順で、概要を報告する。
1.1.ヤギ小屋の製作作業:実施期間 6/19(月)〜7/28(金)
_インターンシップ期間中、主な作業内容としては、このヤギ小屋の製作が挙げられる。経緯として、まず後藤さんが元々ヤギの飼育に精通しており、ご自身で設計し施工管理もした保育園の敷地内で動物介在教育のためヤギを放牧する計画が、前々から挙がっていた。その時期にちょうどインターンシップ期間が重なったこともあり、後藤さんと二人で製作することになった。工程計画として、7月末までに小屋を2棟用意しなければならない。しかも6月末には、山形から1頭の子ヤギを迎えるため、早めの施工を求められた。以下では作業工程の概要とともに、指導内容や反省点も含め、報告したい。
資材および工具の取り扱い
_今回使用した資材は、全て後藤さんが受け持ち、材木屋さんから安く卸した(節や汚れなどあり状態が少し悪い)DIY用向けの木材を使用した。主に杉材で一部2x4材もあり、工具としてはインパクトドライバー、電動ノコギリ(丸ノコ)、丸ノコ定木、ノミ、カンナ、玄翁、水平器、コンベックスと、塗装用に筋交い刷毛や平刷毛を用いた。工法としては、ほぞ穴などを加工し組み合わせていく木組みにはせず、DIYでよく使用される金具とビスで留めていった。
_インターンシップ初日からの一週間は、この工具類の取り扱い方の指導からはじまり、主に丸ノコの使用法を重点的に学習した(図1)。インターンシップの始まる直前にも学内で安全講習会があり、丸ノコを少しだけ触れたが、実際に使用してみると危険と思える箇所が多々あり、注意すべき点を守らないと大惨事になりかねないことが自覚できた。木材の切断中に起こる「ノックバック現象」には特に気を使わなければならず、長物を切断する際にはどこに圧縮力がかかっているかを判断し、支点を変えなければならない。
https://gyazo.com/364a08cd1fd91682ad4bd07d2e59fb06
_資材を軽トラックで運搬する際には、図2にあるような「南京縛り」という一般的なロープの縛り方で荷造りをしていったが、この縛り方は建設業に携わるなら絶対に知らなければならないと指導され、習得できるまで何回も練習を行った。4m以上の長物の角木材などを縛る際には、木材の両側の端部近くにロープを通して2点で抑えつけるが、その前後の抑えつける位置に対して力を釣り合わせないと、運搬中跳ね上がって解ける可能性も出てくる。その時は、ロープの結び目の一方を逆方向にすると、力の釣り合いが取れると指導を受けた。
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軸組みの組立
_図面等がないため、後藤さんの経験による指示のもと、まず軸組みとなる柱と梁、そして桁となる部材を用意した。105mm角の角材を丸ノコで加工し、三面ジョイント金具と90mmのビスで組み立てた。柱には基礎金具を取り付け、水平器で垂直を見ながら設置し、その後、梁と桁を金具で固定した。急ぎ仕事でもあるので、垂木の間隔や勾配も想定しながら、仮受けとなる梁を増設していった。柱の高さは3mになり、脚立や足場板を這わせながらの高所作業となった。インパクトでビスを打ち込む際も、地上とは違いある程度姿勢を強制されるため、打ち込み角度などを手首で調整しながら、曲がらないよう工夫する必要があった。
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_小屋の基礎となる柱、梁、桁が完成したら、屋根を設置するため垂木である105x274mの間柱材と、波板トタン屋根を張り付ける際の受けとなる桟木を架けていった。この作業の際、屋根の頂点となる棟木と桁に付けたスミ通りに 垂木を架けてやらないと屋根事態が傾き、最悪やり直すことになるので、ビスで打ち付ける時も、一気にやらず微調整しながら作業した。屋根を受ける際の強度や、風などの影響に耐えるためトラス構造を作る必要があり、これまた後藤さんの経験上の判断から、桟木で各垂木に繋がるよう、長さなどを調整していった。
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_垂木と桟木を架け終えた後、傘釘と呼ぶ波板用の釘をハンマーで打ち込み、波板トタン屋根を張り付けた。傘釘はトタン屋根の受けとなる桟木に正確に打ち込む必要があり、間違ってずれた位置へ打ち込んでしまうと、その穴から雨漏りしてしまうので、定木をあて平行にスミを罫書いてから、波板が凹まないよう慎重に作業した。今回の屋根の形状は、3方面に軒先を延ばした形となっており、交差している箇所や棟木側の立ち上がり部に隙間ができてしまうため、ポリカーボネート波板を専用の鋏で適度な大きさに加工し、隙間を塞いだ。こういった雨仕舞を仕損じると、雨漏りはもちろんのこと建物全体に悪影響を及ぼすので、正確な施工が求められた。
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木柵の設置および内装
_壁となる木柵は、余った間柱材などを丸ノコで加工した。通常の柵のように全面に塞ぐのではなく、地面から150mm程離れた位置から200mm隙間を空け、 ヤギの頭が入るよう工夫する必要があった。ただし北西側の木柵は外壁としても機能させるので、そこは雨風が中に吹き込まないよう、隙間なく組み立てた(外壁として板張りをしたのは南面のみ)。今回の木柵のように、一つのモノに複数の機能を持たせる方法には経済性も考慮されており、非常に参考となった。
_木柵が完成した後、ヤギを管理するためのスペースを確保し、敷地内に人が入れるよう、門扉を設ける必要があった。木製の扉を作るのは初めてだったが、糧工房内の門扉を参考にしながら、桟木を使い幅800高さ1400で枠を作り、筋交いで補強した後、杉板で板張りをした。開閉の向きは(ヤギが敷地内から出にくいように)外開きに蝶番を付け、ビスで柱と固定した。
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_最後に、金属の留め具を高さ1m辺りに取り付けて完成かと思ったが、上手く留め具が嚙み合わず、傾きや高さを調整しストレスなく開閉できるまでが大変であった。扉一つにしても、その環境にあった使い勝手の良さを想定することの大切さを、改めて認識できた結果となった。
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_木柵や門扉による仕切りが完成した後、ヤギ達にここを巣として認識してもらうため、餌場作りを始めた。餌場は、牧場などの飼育小屋でよく見かける柵を用いて仕切りを作り、首だけが出せるよう隙間を設けたものである。基本的に餌やりは保育園児が行うこともあり、安全面を考え、ヤギにとっては多少窮屈になるかもしれないが、小屋側に向かって斜めに柵を設置した。このような設備を追加することで、建物本体の補強にも繋がり、機能性と美観を両立させることが可能となった。一般的には設計段階で、このような設備類を考える必要があるが、今回はヤギ小屋という、ある程度の設計・施工の自由が利く建物であったので、後藤さんの判断に基づき、自由に様変わりしていった。
_小屋の全体像が見えて来た後、主に柱や梁などの各部材の補強や、雨樋と雨水タンクのジョイント、壁となる面の板張りを行った。急ごしらえで製作したので、梁や桁の受けが十分とは言えず、強風などの影響を受けやすい状態だった。そこで角材の端部を加工してほぞを作り、束石に差し込み棟木側の梁に追加の柱として設置した。さらに垂木を増設したり、軒先を間柱材で補強したりした。徐々に部材を足しながらの、変則的な作業であったが、以上のように作業中じかに構造体に触れる機会が多く、後藤さんからも各部材の荷重の掛かり方などを実地で教わり、筋交いやトラス構造などの補強がなぜ必要なのかについて、大学での座学で学んだことについて、より理解を深めることができた。
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塗装
_小屋全体ができあがった後、雨風が受けやすい面にトリアゾール系の油性木材防腐剤を塗布した。他にも、木扉の留め具の建付けが悪かったので再度取り付け直すなど、細々な修正を行った。塗装に関しては、ちょうどインターンシップ直前の大学での実習授業で木柵を作り、塗装も経験していたので、学んだことの復習と実践を兼ね、段取りを思い出しながら取り組んだ。杉板の面に塗装を行う前には、 防腐剤が付着しやすくするため下地調整を施さなければならない。しかし紙やすりが無かったので、グローブ越しにささくれや目が粗い所を擦り、面をなだらかにした。その後、筋交え刷毛で防腐剤を下地に大まかに配り、左右に刷毛を繰り返し動かしながら、色むらが出ないよう薄く伸ばした。
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_節や割れがある面には染み込ませるよう叩きながら馴染ませ、目地や際など細かな箇所は平刷毛で塗り残しがないように塗っていった。しかし、今回使用したトリアゾール系の油性木材防腐剤は、水のように粘性はなく塗りやすい反面、滴りやすく垂れの原因にもなる。また速乾性のため垂れた箇所をすぐ引き延ばさないと色むらができてしま う。そのため非常に取り扱いが難しかった。
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設備増設と仕上げ
_塗装も終わり、各部の細かな修正をした後、一棟目の中二層の増築と、管理スペースに休憩用ベンチを作った。ヤギの高い所に登りたがる習性を利用した遊び場を用意しようという話になり、中二層を増築することで視覚的にも立体感が出て、見ているだけでも面白い雰囲気を作り出すことができる、とのことである。まずヤギが昇降する際に使う木製の階段を用意し、小屋内の梁と桁の間を、軸組みに影響が出ないよう切り抜いた。形状としてはロフトのようなできあがりになり、休憩可能なスペースも用意した。このようなワンポイント的場を用意することで建物全体が引き締まり、ヤギ用の施設ではありつつ人間が見るものでもあるので、 やはりその場の雰囲気にあった施設にする必要があると考えた。
_増設した後にヤギ達の様子を見たところ、予想していた以上に反応が良い。ヤギ達も2頭から5頭に増えていたので、階段先で渋滞を起こし墜落する危険もあるため、ロフト部を延長した。形状としては、ロフト部から垂木を伸ばし、床板を張ってキャットウォークの様な細い廊下になった。見た目では若干狭く感じたが、ヤギ達は特に問題なく登れていたようで安心した。また休憩用ベンチは、管理スペースに座れる場所がなかったため用意することにした。経年によりベンチが沈まないよう割れた瓦などで基礎を固め木柵と隣接させ、園児でも座れるよう座高も低くした。
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二棟目着手と反省
_一棟目が完成した後に他の作業が重なり、二棟目に関しては当初の予定より大幅にずらさなければならず、柱などの軸組みを組み始めたのは7月下旬頃となった。一棟目を組んだ際には既に整地された後だったが、二棟目の建設予定地は、ヤギの寝床となるおが屑の山は用意されていたものの、雑草が生い茂り水平も出ていなかったため、まず整地作業から始めた。雑草類を刈り取り地肌を出した後、おが屑の山を崩して15m²程の広さにひろげた。本来は転圧機などで地面を固めないといけないが、今回は束石によって固定するため、省略した。水平を取る際に誤差が大きいと、軸が狂い荷重に耐えられなく崩落する危険性もあるため、特に気を付けなければならない。整地段階では小屋の全体像はまだ出てこないという話だったが、時間もなかったので、実際に柱を立て軸組みを組んでいく最中に形を決めていった。
_整地後、パッタン馬という後藤さん自作の立ち馬を、柱を立てる位置に合わせ4か所設置し、その上に梁となる長さ4mの角材を置いて、全体の大きさを決めていった。この際、角の交差している4か所に水平器をあて直角を出していく。ここが少しでもずれると、柱を立てた際にバランスが崩れてしまうので、工法としては日曜大工の範疇ではあるが、繊細な作業が求められた。四方の角が決まったら、一棟目でも使用した三点ジョイント金具で固定し、柱を立てる箇所に束石を設置した。束石を設置する時は、地面が水平でないとやはり柱が傾いてしまうので、スコップで微調整しながら合わせていった。束石に柱のほぞを挿し込んで立たせ、三点ジョイン ト金具の位置に合わせながら、今度は柱に水平器をあて各面の垂直を見て調整した。
_結果として、二棟目は残念ながら、インターンシップ期間中に屋根の基礎となる軸組まではできなかった。反省点としては(一棟目に時間を掛けすぎたこともあるが)やはり自分自身の状況判断の遅さや技量不足により、後藤さんに負担を掛けてしまった点が挙げられる。丁寧にやろうとし過ぎて行動に移る際にもたつくことがあり、このような弱点の克服は今後の課題となった。それでも、ヤギ用ながら小屋を一から作るという実践的かつ貴重な体験ができて、非常に楽しく学べたと同時に、今後の木造実習や設計の授業などにおいても、大いに活かせられると考えた。
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1.2.糧工房内での農作業および農産物製品の加工作業:実施期間6/13(月)〜8/10(木)
_雨読晴耕村舎では、一級建築士事務所とは別に、糧工房として天然酵母のパンやバジルソースなどの農産物製品を、予約制で販売している。こういった製品は、後藤さんの私有地で生産された農産物を原料として加工されている。田畑やヤギの放牧地も含め、かつては庄屋の屋敷地だとのことで、面積は広大だ。インターンシップ期間中は、ヤギ小屋の製作とは別に農作業に充てた時間も長く、「持続可能な生活」の中心的な要素ともいえる。以下では、毎日のルーチンワークの概要とともに、田畑の構造や栽培方法、後藤さんが飼育しているヤギ達のことなども紹介したい。
兼業農家の一日:ルーチンワークの重要性
_まずインターンシップ初日に私が指導を受けたことは、これから紹介するルーチンワークについてであった。その作業内容は一見すると単純だが、兼業農家である後藤さんの一日の流れを知る上で欠かすことはできない。この生活様式を直に肌で感じることで、「持続可能な生活」の一端をうかがうことができた。
_後藤さんの一日を完全にトレースすることは難しいが、試みに私自身が行ってきたことをタイムライン化してみたい。出勤時間の朝9:00までに糧工房へ到着したら、まず鶏など飼育している動物たちへの餌やりと巣箱の清掃をやり、鶏達の健康状態を確認する。卵を産んでいたら日付を書き冷蔵庫に入れ保存しておく。工事現場(後述)が入っていた際には、出勤前に現場へ赴き、進捗状況を確認した。施設内の管理としては、主に工房とビニールハウス、田畑、ヤギの放牧地が挙げられる。工房の管理は、基本的には掃除をし、また売店(予約制)でもあるので、事前に頼まれた分の農産物製品のラベル張りもした。留守を預かった際には、宅配物や来客に粗相がないよう対応した。
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_インターンシップが本格化した7,8 月の時期、ヤギ小屋製作を予定した日には10:00から17:00までを目途に作業した。それ以外の日は、まず陽が照り出して気温が高くなる11:00より前に、田植えまた雑草刈りをした。早めの昼休憩を取り、13:00からは主に田畑の管理を行う。まず田んぼを見て回り、 水かさが減っていたら、電動ポンプで井戸水をくみ上げ給水し、田んぼに隣接した雑草類(水草発生の原因になる)も刈り取る。畑では、栽培物の根元周りの雑草(成長を妨げる)を刈り取り、じゃがいもなどの収穫・箱詰め作業を行った。
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_陽が落ち始める16:00以降は、ビニールハウス内で栽培しているバジルの水やりを、1時間かけて行う。 この時期はバジルの発育が良いので、バジルの自重により茎が倒れてしまうため、支木を立てて防いだり、虫による被害状況もよく見たりする必要がある。バジルの水やり作業が終わる17:00以降は、ヤギ達の世話が中心になる。ヤギの餌は放牧地の雑草で賄えるため、世話は健康状態の確認と乳搾りがメインとなる。乳搾りは乳房炎の予防にもなり、最低500cc以上は搾れるとよく、初めから強く搾り、乳が出たのを確認した後はリズムよく途切れないようにする(後藤さんによれば、乳搾りは初めが肝心で、初動を失敗すると後が続かないという)。初めは握る強さやタイミングなどが分からず、ヤギに不快感を与え、あまり上手に搾ることはできなかったが、段々と繰り返すうちにコツをつかみ、最終日直前では900ccの瓶一本分は搾れるようにまで上達した。
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_基本的に以上のような内容で、一日の流れが進んだ。雨天時や、あまりに猛暑で外出できない場合は、屋内でできる作業として、後藤さんが請けた現場の製図作業を手伝ったり、ヤギ小屋の現場である保育園のホームページを作成したりした。このような生活を、わずか40日間ではあるが体験してみて、小〜中規模の農家は時間による束縛が緩い分、作業内容を自分で生み出さないと無益な時間を過ごしてしまうので、ルーチンワークを組むことはとても大切なことだと考えた。ルーチンワークの中で、できることとできないこととを分け、たとえ単純・簡単な作業でも、生産性の向上やコストの軽減などを考えながら取り組む必要があることを感じた。後藤さんは、糧工房として農作業に加え農産物製品として加工から販売を行い、一級建築士事務所として設計や施工管理にも従事しているので、兼業農家としてとても充実した環境であることが、改めて理解できた。生産物の卸先の開拓や、大工さんを含め色々な現場で活躍している職人さんたちとの人脈構築など、事業主としての後藤さんの苦労は、現在に至るまで筆舌しがたいこともあったと思われるが、私自身はこういった生活には憧れもあり、擬似的ながらもインターンシップとして実際に体験できたことは、とても幸運なことであった。
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不耕起栽培とは
_後藤さんが管理している農園は、田んぼ・畑ともに不耕起栽培と呼ばれる手法が用いられている。元々の土壌が田んぼの跡地で、ミミズを代表に微生物が多く存在し、地力が十分にある。そういった土壌なので、毎回耕さずとも生き物たちの力で土の団粒化が発達し、稲や野菜が育つ土になっていく仕組みが構築されていくという。
_不耕起栽培を一から始める場合は、全く手を加えなくても良いとは限らず、その土地にあった土作りから考えなければならない。作物の栄養を元に、年々土壌を改善していくので、効率も、耕運機を使用した耕起栽培よりは落ちる。 しかし、自然に耕される「自然耕」によって不耕起栽培が可能になると、コンバインなどの機械に頼らなくても済み、 運用に掛けるエネルギーを少なくすることができる。一度土壌ができてしまえば、収穫時に出る作物の屑類や藁も肥料になり、正に「持続可能な暮らし」に相応しい田畑だといえる。
_実際に不耕起栽培の田んぼで、注連縄用の稲の苗を植えてみて、まずその水の少なさに驚いた。長靴を履いての作業にもかかわらず非常に歩きやすく、田植えの際に見かけるような中腰で作業ではなく、腰掛け台車に乗りながらでも作業することができた。また人力でも労力が余り必要でないことにも驚いた。
_畑では、不耕起の土壌を活性化させるため、緑肥効果を持つ「ヘアリーベッチ」と呼ばれるマメ科の植物を植えていた。初期投資や十分に機能させるまでの時間はかかるが、雑草抑制や緑肥により化学肥料に頼らずとも土の栄養があまり失われず、循環型の農法である。
_私自身このような農法があること自体を知らず、エネルギー削減の観点からみて、非常に理にかなっていると感じた。年々、稲や野菜類などは品種改良され、人の手によって作られるように調整されているが、それでも根幹は土を初め自然にある。人間関係でもそうだが、上手く付き合うことが大切であり、より良い物を生み出すには、この不耕起栽培のように元から存在している力を活用し、自然なサイクルを生み出すことが重要なのではないかと、 後藤さんの話と田畑を見聞きし考えた。
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ヤギを飼育するということ
_先述した通り、後藤さんの農園では、昔からヤギを飼育している。後藤さん自ら「ヤギ男」を自称するほどで、その専門知識の多さには目を見張るばかりだった。私が最初に訪れた時には、大人ヤギ2頭と子ヤギが1頭おり、どのヤギも元は1頭の雌ヤギから続いた血縁関係だという。ヤギの世話は基本的には放牧に近く、餌は主に敷地内の雑草類で、乳搾りに向かう際には若竹や、桑の葉などを持ち込み食べさせた。乳搾りが可能なのは3才の雌ヤギで、6月頃は乳房がかなり膨れており、900mlの瓶2本分もの乳を搾れた。搾った乳はそのまま飲用せず、ヨーグルトとして加工する。それでも生産量や衛生上の観点から販売はせず、家庭内で消費している。私も何度か食べさせてもらったが、ヤギの乳は臭うといわれるがそのような動物臭さもなく、牛乳で作ったのとは違う風味を感じられ、とても美味しかった。
_犬や猫などのペットを飼う際には狂犬病やフェラリアの予防接種を受けるが、ヤギも「腰麻痺」と呼ばれる(蚊を媒介とした寄生虫が脊髄に入り発症する)病気を患うことがある。これを予防するためには、定期的に体重を測り、 適正の分量の駆虫剤を背骨に沿って塗り込む必要がある。インターンシップ中も、この予防接種を手伝うため、ヤギを抑えたことがある。後藤さん曰く、ペットとしてヤギを飼っている人達の、飼育する上で必要な知識に対する認知度は低いという。犬猫とは違い野生に近くても、生き物であることは変わらないので、体調を崩したり病気になったりすることもある。そのような時の対応をもっと良く知ってほしいものだ、とも話された。
_先述した通り、保育園の農地にヤギを放牧するため小屋を作ったが、そこで飼育されることになった子ヤギの1頭は、山形の施設におり、元をたどれば後藤さんが飼育していた雌ヤギの子供であった。生後1年も満たない子ヤギで、園児らの反応もよく、動物を飼うことの楽しさや難しさを学べるであろう、とのことである。このように動物を飼うことで、命の尊さや動物が持つ温もりなどを感じ取り、共感する精神を育むことを「動物介在教育」と呼ぶ。私もペットとして犬を飼っているが、確かに動物が身近にいることで、精神的にもゆとりができたことは感じ取れた。インターンシップ期間中は、生活の中にヤギがおり、犬とはまた違った様子を見せた。ヤギは人に懐きやすく感情の起伏が顕著で、ヤギごとに性格も違うため非常に面白く、特にヤギがいることで人の輪ができたのには驚いた。物珍しさもあるだろうが、通りかかった人達がヤギを見て触れ合うことがあり、保育園の近くにある工場の敷地内には、これまた後藤さんが手がけたヤギの放牧地があった。7月末にはその工場が主催して、ヤギをメインとしたコンサートが行われるため、観客用の木製ベンチを作成した。改めて後藤さんに、なぜヤギなのかと尋ねたところ、この人の繋がりはヤギから始まっていると教えられた。確かに人の繋がりは何かしらのきっかけから生まれるものだが、それがヤギとなると、ここまで大きな繋がりになるのかと驚愕した。今回、ヤギが持つ力、その影響力の大きさを理解できたのは、とても得難い体験だった。
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1.3.民家の屋根改修工事およびリフォームのプランニング:実施期間7/10(月)〜7/28(金)
_7 月上旬に、後藤さんが請け持った民家の屋根改修工事に同行した。既に大工さん達は現場入りしており、私は屋根の解体作業や廃材の運搬作業などに携わらさせて頂いた。現場である民家の屋根は、屋根瓦と波板トタンが組み合わさり、元からある古民家を増築していった結果複雑な形状となっていた。後藤さんの話によると、屋根の収まりが滅茶苦茶で雨溜まりになる箇所がいくつもあるので、このままだと錆びや木材の腐食が早まり、崩落する危険があるという。まず、屋根を解体していったが、瓦を取り外す際は無理にやろうとせず再利用するので、割らないよう慎重に降ろしていった。断熱材や野地板は既に腐食が始まっており、剝がすだけでボロボロと崩れていっ た。野地板が出た面を移動する際に板ごと踏み抜く可能性もあるので、必ず支えとなっている垂木の上を移動するといったことも教わった。こういった民家の鼻隠しの内側には、電気回線などが這っていることもあるので、解体する際は、線を引っ掛けないよう注意することも大切である。改修のプランとしては、元からある合掌造りを活かして増築分も覆えるような切妻屋根にするという。そのため、屋根の荷重に耐えられるように、真束と頬杖を合板で繋ぎ合わせ補強してゆき、新しい垂木を掛けるといった作業をしていった。見学して分かったこととして、大工の棟梁の判断力と職人の動きは目を見張るものがあり、木材の刻み加工はもちろんのこと、たとえば天気予報になかったゲリラ豪雨があった際にも、とっさにブルーシートを張って養生を行い、事なきを得るなど、一つ一つの動作が洗練されていた。
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_数日後また現場に立ち寄った際には、新しい垂木や野地板、ルーフィングも張り終えてあり、軒天の塗装を施していた。軒天は軒裏とも呼ばれ防火構造のため不燃材にする必要があり、今回は白地のケイカル板(ケイ酸カルシ ウム板)を使用していた。その翌日に板金屋さんが到着し、波板トタン屋根の張り替え作業が始まった。波板トタンはヤギ小屋でも使用しており、施工性が良くコストも抑えられ耐久性もあるため便利な材料ではあるが、壁際の立ち上がり部は、収まりが悪いとそこから雨水が入り込み雨漏れの原因になるので、職人さん達が特に気を使って作業をしていたことがうかがえた。鼻隠しや、棟包み板などまだ覆えていない所はあるが、張替前と見比べると屋根全体がすっきりとしており、雨仕舞も最適化されていることが分かった。
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_こういった屋根の改修を施す時は、突然の雨などで軸組みにも悪影響を及ぼすため、素早い施工が求められる。そういう側面から今回の現場を見ると、後藤さんの適格な指示も加わり、大工さんの顔見知りな材木屋さんや板金屋さん達との連携も取れており、材料の発注から着手までの流れがスムーズで、解体から張替までの施工は一瞬とも言える程であった。各職人さん達の技量の高さもあるが、こういった職人同士のコミュニティ(相互のつながり)の広さも、この現場を支えている一因だと考えられる。後藤さんの方針として、設計者は施主と施工者の橋渡しになるような調整を密に行う必要があり、双方が納得できるような現場作りが大切であると教えて頂いた。まず、施主の要望を良く打ち合わせながら見つけ出し、それを元に設計し施工者側に伝えるが、余り無理な要求を押し付けても作業全体のモチベーションが下がり、結果として良いものができがたく、逆に設計した後は大工などに任せっきりだと、勝手に動かれ予定外な物や予算オーバーにも繋がることがある。そのため、大事な所だけはちゃんと指示し、余計なことは言わず気持ちよく作業できるよう、現場に赴き施主や施工者とコミュニケーションをよく取ることが大切である。この話を聞いて、やはり建設業は人と人が密接に関わって成り立っていること、その上がコミュニケーションが重要であることを、改めて感じ取れた。
_屋根の改修工事とは別に、施主から後藤さんに、内装の方もリフォームしたいという話も上がっていた。そこでリフォームの草案を作るため、設計趣旨を施主との相談や考える際にも使用する、現在の大まかな配置図・平面 図・立面図・展開図のスケッチを描いていった。配置図は50mの巻き尺を使用し、外構も含め敷地の大まかな寸法を取り、インターネットのマップアプリから現場の航空写真を印刷する。実際の寸法と照らし合わせ印刷機の倍率設定で縮尺が1/500になるようコピーし、それを元にトレースする。寸法を合わせる際に側溝の幅や果樹があるなら、家の外壁からの距離が分かるとやりやすいという。
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_平面図は、本来は通り芯から柱の位置を割り出して描いていくが、今回は、施主が大まかな間取り図を残してくれたためラフで良いとことになり、フリーハンドでトレースしていった。ただし、縮尺は決まってあるので、 各部屋や廊下などのスケール感は崩さないようにし、開口部の位置やドアの収まりなども見落とさないよう注意した。立面図は、民家の外側から見た東西南北の面を写真に撮り、それを元に描いた。この時自身の目線のまま撮ると、屋根の形状や地面からの高さ関係などの見え方が変わってくるため、脚立などに登りなるべく対象物が中央に収まるように撮ると、立面図に起こす時に書きやすい。平面図と同じくスケール感は崩さず、スケッチと言っても線が持つ意味を考え、無駄な線は極力描かないようにしないと誤解を招くとも指導された。展開図は、屋内の各部屋の中央から四方を見た面を書いた図であり、施工する際も大工さん達などは、主にこの図を元にするという。襖などの建具の位置や、ドアの収まりなどを参照するため、具体的な画が求められる。
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_施主からは「急がなくて良いよ」と言われたが、こういったことを話す施主ほど仕事は早く済まさなければならないことも教わった。本当に急がなくても良いのならそもそも関心がなく、わざわざ声をかけることもしないという。そういった事情もあり、今回のスケッチは施主との相談にも使用するため、描写精度よりも速度が求められる。今後もこういったスケッチなどは、製図の授業で勉強してきたことを活かし、スケール感を崩さず要求されたクオリティを維持したまま早く書けるようにしたい。
1.4.保育園のホームページ作成:実施期間7/31(月)〜8/10(木)
_インターシップも終盤に差し掛かった8 月上旬、ヤギ小屋の現場である保育園のホームページの作成も行うこととなった。後藤さんからも作りたいとの話が前から出ており、他所の保育園のホームページを調べつつ、レ イアウト案を考えていた。実際に作業に移った際、早く形にしなければならないことと、操作することとなる保育士の先生方にも触れやすくするため、「Wordpress.com」の無料ブログ作成サービスを使用した。テンプレートによるレイアウトがある程度まとまっているので、視覚的にも分かりやすいホームページを目指した。初めは雛形を作り、 先生方の意見を引き出すための叩き台でもあるので、後藤さんの指示の元、敢えて写真などの配置や文章構成などは簡略化し、有料プランによるドメイン取得なども後回しにすることとなった。1 年第1Qの「コンピュータ基礎および実習 I」で学んだホームページ作成の基礎知識を活かせる良い機会であったが、無料プランだとCSSの編集ができず、フォントの種類や窓枠の追加など制限がかかり、少々見辛くなってしまったのが心残りであった。 しかし、インストール型の「Wordpress」だと、レンタルサーバを用立ててサイトを稼働し管理する人間が必要になるため、今回のように制限がある方が、かえって管理しやすいのもあるかもしれないと考えた。
_先生方や後藤さんの要望を聞きながら作成している内に、段々とホームページの形が見えてきたが、作成過程において、後藤さんが行ってきた施主と設計者のコミュニケーションの取り方を、意図せずに自ら実践しているのではないかと気付いた。私自身は口下手で、世間話が得意な方ではないのだが、それでも先生方からの要望を聞き出す際に、保育に関しての話を聞いて、何を目的にホームページを作りたいかなどの具体的なことが分かったのは、作る側としても次につながりやすく、改めてコミュニケーションの重要性を感じ取る結果となった。今回のインターンシップ期間中、様々な事柄に触れる機会があったが、中でも保育園に関しては、ヤギ小屋の他にもこういった園児たちや先生方と話し合い、理解を深められたことはとても大きな糧となった。
2.持続可能な生活様式の考察
_今回の40日間のインターンシップは、田植えから始まりヤギ小屋の制作や、民家の屋根改修工事、保育園のホームページ作成など、様々な作業に従事してきた。一見して乱雑に見えるが、どの作業においてもある一定の特徴を持っていた。それは「循環性のある日常」だと、私は考える。農業は不耕起栽培により、自然の力で一定のサイ クルを経て土壌を維持していた。ヤギ小屋は、ヤギという動物を主軸とした一連の人のつながりが生まれたことにより発注された仕事であり、民家の屋根改修工事でも、一般の下請け業者に発注するのではなく、これも後藤さんの交友関係や人脈により生まれた仕事であった。持続可能な生活様式を考える上で、そういった循環性の有無は大きな 要素の一つだと私は考えるが、例えば身近にあったものとして、糧工房の周辺でも田畑を潰し、太陽光発電のソーラーパネルに置き換わっていた。一見するとエコで恒久性を持っていると捉えることができるが、その土壌は砕石などで潰され、再利用することはままならない。この様な一方通行なあり方ではなく、人や物も繰り返し循環している仕組みこそが持続可能性を生むのではないかと考える。確かに、昨今のオール電化などの機械化により生活は大幅に便利になった。インターネットも端末さえあればどこでも使用でき、自然世界を意識しなくても生きられる。だが震災時のインフラ低下による二次災害や、エネルギー問題といった面を考えると、「NPO法人雨読晴耕村舎」で後藤さんの代表挨拶にもあるように、「実際に暮らしながら持続可能な暮らしや今の社会がどのようにすれば持続可能な社会に変わっていけるか」といった考え方は、今後大きく必要になっていくであろうと私は考える。循環性のある日常を作り出し、実践することはすぐにはできることではないが、人のつながりを見直したり、動植物達への接し方を変えたりするなど、日常に変化を与えることは可能である。そういった意味でも、このインターンシップで自然を見つめ直す機会に恵まれたのは、とても得難い体験であった。
おわりに
_インターンシップ開始の6月初めに小さな苗を植えたが、成長し、注連縄として生まれ変わるさまは、やはり感慨深いものがあった。今尚続く日本の原風景と言える田畑に間近で触れられたことは、地元を知る上では欠かすことのできない経験でもあった。建設分野から見た地方創生といった面で考える上でも、農家の高齢化などの影響で、 先程述べたように田畑を潰し、太陽光発電のソーラーパネルに置き換わっているが、この田んぼがある風景を活かして守りたい気持ちが私の中で高まった。振り返ると、炎天下でのヤギ小屋の製作や農作業は、肉体的にも疲れが溜まり大変であったが、とても一日の密度が高く充実した毎日だったと改めて感じ取れた。
_最後に、この 40 日間大変お世話になった後藤さんとご家族の方々、並びに保育園や工場の関係者の皆様方、そしてインターシップ担当の土居先生に、御礼申し上げたい。
参考文献
後藤雅浩(2008)『これなら誰でも出来る日本の杉で小さなお家:セルフビルドの新工法』 社団法人 農山漁村文化協会
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