考える=QNKSとしての紹介
ここからは実際に子どもたちにQNKSを紹介し、授業で活用する方法を紹介していく。
ここではQNKSの一番初め、QNKSの概念をどうやって子どもたちに説明する方法の一例を示します。当然、QNKSの説明の仕方はこれだけではないですし、もしかするとこんな説明なんてせずに、いきなり授業で活用していってもいいかもしれません。しかしここでは読者の皆様にQNKSについてのイメージを深めていただくためにも、子どもたち用の説明例を示します。
目次
○頭の中で意見が作られる様子を見てみよう
○本人も、頭の中の展開を自覚できていない
○みんなの頭の中も同じ
○階段に名前をつけよう
先生「皆さんの中で、1番好きな食べ物を理由と一緒に答えられる人はいますか?」
子どもたち「はい!」「はーい!」
先生「じゃあ、Aさん。教えてくれますか?」
Aさん「はい。私の好きな食べ物はカレーです。理由は、お母さんが作ってくれるカレーがとっても美味しいからです」
先生「なるほど。ありがとう!わかりやすい発表でしたね」
先生「さて、いまAさんの頭の中では何が起こっていたでしょうか。少し説明してみましょう。」
先生「まず、Aさんは先生の”質問”を受け取りましたね。」
Aさんの頭の中(なるほど。1番好きな食べ物は何かを考えればいいんだな)
先生「質問が理解できないと、その後考えることはできませんよね。あたりまえじゃん!と思うかも知れませんが、Aさんの頭の中で起こったことをゆっくり見ていくには、まずここから見ていかなくちゃいけません」
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先生「その次に、Aさんの頭の中には、色々な食べ物が浮かんだはずです。」
Aさんの頭の中(好きな食べ物か・・・なんだろうなー。ラーメンも好きだし、ハンバーグも好きだし…)
先生「といった具合ですね。図で表すとこうなります。」
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先生「でも先生が質問したのはこれだけじゃありませんでしたね。その理由も一緒にこたえてね、と言いました。なので、食べ物と一緒にその理由も考えていたはずです。」
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先生「図の左上を見てください。アイディアは「理由」が先に出てくることもありますよね。”私はマクドナルドが好きだなぁ→ということは、ハンバーガーが好きといえるな。”という感じです。図の左上はそういう流れを示してます」
先生「さて、この後Aさんは何を考えたか。”この中から、何を発表しようかな”と考えたはずです。だってAさんが答えてくれたのは”カレー”の一つだけでしたから。これはAさんがカレーしか思いついていなかったのではなく、たくさんのアイディアの中から、”カレー”を選んだ」
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先生「そして最後に、先生の質問と自分の答え、その理由を順番に組み立てて、自分の意見として整理して、発表してくれたわけです。」
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さっき先生の質問を受けて、発表してくれたAさんの頭の中を詳しく見てみると、こうなっていたはずなのです。まとめるとこうなります。
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まず先生の質問を理解し、アイディアを頭の中から抜き出して、その中から1つのアイディアを選んで組み立て、発表するためのセリフとして整理した。①質問を理解し②アイディアを抜き出し③意見を組み立て④伝わるように整理する
Aさんの頭の中はこういう段階を経て展開していったのです。
先生「Aさん。どうかな。アナタの頭の中はこのようになっていたかな?」
Aさん「え・・・っと・・・そうなのかな・・・?」
先生「そうですね。よくわからないですよね。Aさん、答えにくい質問をして困らせてしまってごめんね。」
「これが大切なところです。こういう頭の中の流れは、Aさん本人でさえもよくわからないのです。それはなぜかと言うと、さっき説明した頭の中の流れは一瞬で過ぎ去ってしまうからです。」
「どれくらいのスピードか。それは先生が質問してからAさんが手を上げるまでの間です。Aさんは先生の質問の直後に手を上げてくれましたよね。ここで紹介した流れは、Aさんの頭の中でそのくらいのスピードで展開しました。だから自覚できないのですね。急いで階段を登っているとき、階段の1段1段をいちいち気にしていないのと同じです。」
でもその姿をゆっくりスローモーションにして見てみると、①質問を理解し②アイディアを抜き出し③意見を組み立て④伝わるように整理するという階段を登っているのですね。
そしてこれはAさんに限らず、みんなの頭の中も同じように展開しているはずなのです。
先生が質問したときAさんの他にも何人か手を上げてくれていたね。その子達はもう④の最後の段階まで行けていた人たちです。
その他に、まだ手を挙げられていない人もいたね。その人は、①質問を理解する②アイディアを出す③意見としてくみたてるのどこかにはいたのではないでしょうか?
①で止まっている人の頭の中は「どういう意味の質問だろう?」
②で止まっている人の頭の中は「なにかあるかなぁ、あれもあるしこれも在るなぁ」
③で止まっている人の頭の中は「〇〇が一番好きなんだけど、なんて言えばいいかなぁ」
だったのではないでしょうか。考えるスピードは人それぞれです。でも考えをまとめるとき、実はみんなほとんど同じ階段を登っているということを覚えておいてください。
同じ階段を進んでいるのなら、その階段の1段1段に名前をつけてあげれば、途中で止まってしまわずに済むかも知れませんよね。だから先生はこの階段に名前をつけました。
①質問を理解する:質問(問い)は英語でQと書くのでこの段の名前は「Q」
②アイディアを抜き出し:この段は”抜き出す”と短くしてその頭文字の「N」
③意見を組み立て:この段も”組み立て”と短くしてその頭文字の「K」
④伝わるように整理する:同じように”整理する”として「S」
(Q)問いをもとに、(N)抜き出し、(K)組み立て、(S)整理する。
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これで、「QNKS」といいましょう。
QNKS。これは考えをまとめるときの階段の名前です。これからこの学級で「考える」ときには、このQNKSを合言葉にしていきましょう。
以上です。このように説明するかどうかは判断に任せますが、上の説明の2番目と3番目の小見出し「○本人も、頭の中の展開を自覚できていない ○みんなの頭の中も同じ」この2つはQNKSにおけるとても大切な概念ですので、忘れないようにしてください。自覚していないだけでみんなやってる。それを自覚すれば、どこかでつまずいても次にやるべきことがわかるし、何度も何度も意識すればより良く使えるようになる。
だからQNKSという言葉にしている。こういうことです。
では次にこのQNKSという概念を教科指導に活用する方法について説明します。