外化しながら行うので学級内での交流がスムーズになる
ここまでは、個人の認知発達という側面からQNKSの効果について実感したことを述べてきたが、その効果は個人学習のみならず、学級における集団的な共同学習にも現れた。
自力読解と言っても授業中に行う場合には、クラス全員が完全に一人ですべての過程を進行させるという設計にはしにくいし、すべきではない。自立とは依存先を多く持つことであると言われるように、自分の力で読みすすめることが難しいと判断した場合には、他者の援助を求めることもまた重要な学習スキルである。この時、QNKSの過程にそって表象を外化しながら自力読解を行っていた場合、QNKSの概念なしにただ助け合わせる場合に比べて、その関わり合いの質が格段に高くなることを実感した。
ただ何の手立てもなく関わり合う場合、相手を援助したければ相手がどこでどのようにつまずいているのか詳しく聞き取り、その内容に応じて援助をしていく必要がある。しかしそれを小学校の教室でやろうとした場合、援助を求める側が自分はどこでどのように躓いているかを正しく表現できる場合は少なく、また援助する側も相手の困り感を聞き取る能力が足りない場合もよくある。
しかしここでQNKSの過程を意識し、表象を外化したノートが両者の間にあればこの難しさの大部分を解決できる。援助する側からすればノートさえ見せてもらえば、相手の理解度が今どの程度かをひと目で判断することができるし、いざ援助をしようと思った時も言葉であれこれ説明することだけに頼るのではなく、自分のノートを見せながら解説することができる。この構造はクラス内で協働的に自力読解をすすめるという活動を非常に円滑に促進することが確認できた。
またQNKSという名称も共通言語のように作用している様子があった。具体的には「まずNしたら?」とか「ちょっとKみせて」といった、具合に、各過程の表象をそのまま英単語で表し、会話する様子がよく見られたのである。これは・・・で指摘した「子どもたちが実際に使える具体性と平易な言葉で定義する必要性」を見している光景であると考える。