信じて任せて認めてもらえる空間で初めて「自然」な学びが生まれる
信じて任せて認めてもらえる空間で初めて「自然」な学びが生まれる
こうして「目的目標」を共有した子どもたちが集まる空間で、それぞれの考えを重ね合わせていくような対話が自然発生する光景はさも、花粉が風に乗り自然と実をつけるようなシーンと重なります。もちろん自然に任せるだけではいけません。そこには教師の意図的な関わりももちろん必要です。(詳しくはP○)しかし“基本は自然に”です。つまり、仲良し同士で固まるのもOK。男女が混ざっていなくてもOK。当然1人でやっていてもOKです。ここの発想の転換は意外に難しいのではないでしょうか。「基本的に管理された空間で部分的に手渡す自由」という発想からの脱却と同じことです。“ここからスタートする”のです。子どもたちは“現在位置”からしか伸びることはできません。そして自分の“現在位置”に自分で気づくためには、その「位置にいる自分」を自分で見ようとしなければなりません。
4月、学級が始まったときなんかは、去年同じクラスだった友達と固まりたくなるのが自然ですよね。高学年になったら、異性を意識して男女で分かれて固まるのが自然です。“そこから”成長をスタートさせるのです。その状態をただ否定するだけでは、その先には不自然な成長しかもたらされません。まずは教師が子どもたちを信じて、任せて、認める。こういう空間で初めて子どもたちはそれぞれの“現在位置”から一歩一歩進む、という自然な学びを積み上げることができるようになります。
子どもたちにこういうことを示すと、はじめは何でも自分で考えてやってもいいという環境に喜び、いきいきといろいろなことを試すようになってきます。突然目の前に現れた「自由」にはじめは戸惑っていた子も、自由を謳歌しのびのびと面白いチャレンジをしている友達の姿をみて、徐々に“怖れ”を手放していきます。ここでの“怖れ”とは、「こんなことをやったら先生に怒れられないかな」とか「こんなことをやったら友達に笑われないかな」といった“怖れ”です。管理的な環境で不自由な学びを強いられている時間がながければ長いほど、こういった“怖れ”は子どもたちの心の深くまで根付いてしまっています。「けテぶれ」でまずやりたいのはこの“怖れ”を消すこと。そのために教師は、「何をどれだけしてもいいんだよ」というメッセージを発し続けることが大切です。そして、そのメッセージを受け取り勇気を出してオリジナリティあふれる取り組みをする子を取り上げ、褒める。よく飛び出したね、と。
こうやって未知の世界に自ら飛び込んでいく子のことを「ファーストペンギン」といいます。氷の上にいるペンギンたちは、群れの中の1羽が海に飛び込むと、なだれ込むように他のペンギンたちも海に飛び込んでいくそうです。教室における学びの世界でも同じ。飛び出す一人が出れば、他の子も次々と未知なる世界に飛び込んでいくという現象が起こるのですが、ペンギンとの大きな違いがあります。それは、「学び」の世界での勇気ある跳躍は、なかなか目には見えないということです。だから学びの世界における「ファーストペンギン」は、先生が積極的に取り上げ、紹介してやる必要があるのです。
こうして学びの世界に現れるファーストペンギンの“勇気ある跳躍”を何度も目の当たりにするうちに、子どもたちの心から“怖れ”が取り払われ、自由で柔らかい子どもたち本来の学びの姿が見られるようになっていきます。