プロジェクト管理技法の、ざっくりとした全体像
ひとくちに「プロジェクト管理」といっても、人によってそこに抱くイメージは非常に多種多様なものがあります。
全体としては似たようなことを言っていても、それぞれの流派や業界によって、現象を切り取る角度や粒度、解像度が異なるため、つけられる名前も異なってきますし、場合によっては、同じことを言っているのに、表現としては真逆に見える、といったことも、なくもないのです。
特に、2000年代以降は「ウォーターフォールか、アジャイルか」といった対立構造も生じていて、こうした文脈は、いちプロジェクト進行支援家としては、憂慮すべき事態であるように感じています。
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もっとも原理的なことをいえば「ウォーターフォールか、アジャイルか」という対立的な見方には、そう大きな意味はないのです。ウォーターフォールかアジャイルか、という話を、思想的に捉えるならば、円錐形の物体を、横から見たら三角形に見えて、真上から見たら円形に見える、といった具合の話でしかないのです。
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もちろん、実際の業務手順としてどちらを採用するのか、という表層論においては、両者は全然違う様相を見せるわけですし、IT技術やIT環境の変化を考えると、アジャイル的な進行に比重を置くべきことは歴史的必然ではあるのですが、日本社会においては、そもそもウォーターフォール型の管理手法ですら実践水準が低かったことを考えると、そこに新たな潮流が混ざることで話が簡単になったかというと、まったくそんなことはなく、プロジェクトを経営的な意思に基づき制御したい、という欲求は、かえって満たされにくいような状況が出来しているように思えるのです。
「ウォーターフォールか、アジャイルか」といった、対立的な見方ではなく、統合的に考えることができないだろうか、と考えて整理したのが、以下の「プロジェクト管理における5つの領域」です。
①プロジェクトの前提や外部環境に対する管理
②プロジェクトの組織や内部環境に対する管理
③計画を順守し、作業を実行、継続させるための管理
④計画逸脱の防止、検知、対処のための管理
⑤コミュニケーション全般の管理
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それぞれの領域には、さらに細かく細分化された目的にあわせて、様々な管理フレームワークが考案され、活用されています。それぞれの技法そのものは、現場の必要から発生したものであり、確かに有用なものばかりなのも確かですが、では、プロジェクトマネジメントを専門的に扱うような人でない、ごく普通のビジネスパーソンがこれらの全てに精通すべきなのかというと、さすがにそういうことはないだろう、という気がします。
そういうふうに考えて、どんなプロジェクト活動であっても、またどんな進行管理の世界観を採用したとしても、共通して扱うような代表的な「型」を絞り込みたい、と、考え、厳選したのが、以下の「6つの型」です。
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ただし、これらの管理技法とて、平板に、漫然と、とにかく全部扱えば、なんとかなる、というものではないのです。プロジェクト状況とは、常に流動的であり、不確定であり、ぼんやりしていて、カッチリとはしていないものです。ですから、その場その場の状況にあわせて、個別の型を組み合わせたり、全体のなかでどうバランスを取っていくか、ということを考えなければなりません。
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プロジェクト活動の現場とは、様々なトレードオフ、「あちらを立てればこちらが立たず」の複合体といえます。成果物をもう少しこだわって仕上げたいが、スケジュールが圧迫されて困る、とか、外部環境に気を取られてしまっているうちに、内部組織の規律や士気が低下してしまった、とか。
あれやこれやに左右され、あれもこれも考えなければならないのが、プロジェクトをリードする難しさの真髄です。その際にこそ、考えるべきなのは「組み合わせ」であり「バランス」なのです。
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一般的なプロジェクト管理技法の手引き 目次