4つの世界観にあわせたプ譜の作例
同じアイデア、同じ企画でも、どんなふうに目標設定し、どのような進め方をするかを、少し変えるだけで、まったく異なる取り組みになります。「プロジェクト管理における4つの世界観」では、プロジェクトを進めるための基本的な考え方を比較検討してみたのですが、これを踏まえて、なにが、どう変わっていくのか、具体例を通じて考えてみたいと思います。 お題「初めての家族キャンプ」
状況
都市部のベッドタウン在住の4人家族
核家族、共働きで忙しい毎日
夫婦仲は良いが、派手な喧嘩も多い
夫婦の休み合わない生活だが、たまたま、一緒に休みを取れることに
どちらもアウトドアの経験は皆無
新しいことをやることは好きなので、キャンプに行ってみようと盛り上がった
日程は2ヶ月後
必要なギアを買い揃えることから始める必要があり、思ったよりも準備は忙しそう
今後も継続して楽しめる家族の趣味にしたいので、予算は思い切って出す
プロジェクトチームは総勢4名
父 37才 専門商社に勤める課長 趣味はアマチュアバンド(ドラム担当)
母 32才 看護師として大学病院に勤務 明るく優しい性格で同僚からの信頼も篤い
長男 5才 やんちゃで常に行動は予測不能 昆虫に興味を持ち始めている
長女 2才 いわゆる「魔の2才」のストライク・ゾーン 己の欲求が最優先
例えば、このプロジェクトを「ウォーターフォール」っぽく進めるならば・・・
https://gyazo.com/0c5c6873fd7f95cda16b34bc2afb4c95
<ポイント>
ウォーターフォールの最大のポイントは「QCD」を守ること
そして、特定の誰かの期待に応えること
そのために、遺漏なく、着実に進めること
計画外のことは、できるだけ発生させない
発生したら、素早く的確に対処する
「アジャイル」っぽく進めるなら・・・
https://gyazo.com/40a5f29b8cefa51b6bd80ee3204a616d
<ポイント>
アジャイルはそもそも一発勝負ものには、あんまりなじまないので
年間通じて、何度もやっていくことを前提とした感じに書いてみた
ざっくりやる、どんどんやる、を大事にするのがアジャイルの特徴
やってみてわかることを大事にしながら、完成度を高めていく
ただ、あんまり適当にあっちこっち迷走するのも違う
「コンカレント」に進める場合は・・・
https://gyazo.com/03c07e4daf2950e37a924998bc0f23a4
<ポイント>
コンカレントの本質は「すり合わせ」
みんなで同じビジョンを見ながら進める
計画外のことは、上手に取り込みながら進める
そのために、前のマイルストンが終わる前に、次の工程を少し前倒す
プロジェクトメンバの役割も固定しすぎず、オーバーラップさせる
「トライアド」で進めるならば・・・
https://gyazo.com/eab04dcc08eb0335d39c2890d81aa7ef
<ポイント>
トライアド型の進め方の本質は、「勇気」
変わろうとすること、現実を変えることに対する不退転の決意
いつ、なにをすれば、なにがどうなるか、わからない
わからないからこそ、考え抜く
考え抜き、やってみて、再び考え直す
それを繰り返していくなかで、理想像が磨かれ、具現化されていく
あらためて、こうしてプ譜を4種類書いてみて
ウォーターフォールという世界観は、やっぱり「義務的」「やらされ感」が出てしまいますね。一方で、ミスや問題を防ぐには適しています。キャンプみたいな楽しい行事でこれをやりすぎるのは、ちょっと違うのだろうと思いますが、業務という文脈には適合しやすいのもうなづけます。
一方で、アジャイルでやれば楽しく自由にやれるのかというと、そうでもないとわかります。アジャイルもまた、ある種の規制の様式であるため、取り組みの特性や参加者の経験値、リテラシにより、向き不向きがあると言えます。
筆者は実は、コンカレントこそ、日本社会によく合っていると思います。みんなの意見を大事に、よく話し合いながら、すり合わせながら、大事なことをあえて言語化しようとせずに、工程を行ったり来たりするなかで、共通の価値観を作り上げていく、ということです。
最後に、トライアドについて。たかがキャンプで、ここまで決然とした決意を述べるのも、なんだか可笑しくなりますが、一方で、されどキャンプ、でもあるのです。例えば、夫婦のどちらかが、こうやって考えて、いきなりどかんとプレゼンなんか始めた日には、え?そこまで??みたいな温度差が出ちゃいそうです。しかし、もしその夫婦や家族が、なにかの問題に導かれて、閉塞感なりマンネリ感に悩まされているとしたら、これまでと違う、新しいことをやることで、何か次の世界の扉を開けるかもしれません。
そのきっかけとしてのキャンプなんだ、と、みた場合には、それこそがまさにプロジェクトの真骨頂であると言えます。
もしかしたら、これまでの日常的な考えには適合せず、最初は戸惑うかもしれませんが、やってみることで、大きな変化が現れるかもしれません。
企業組織の変革プロジェクトでも、同じことが常に言えるのです。
結論
目標の置き方を変えると、進め方が変わる
進め方がかわると、ありたき姿も変わる
到達したラインが変わると、未来も変わる
未来を変えるためには、現在における意志を、どう持つかが大事