神経伝達物質・ホルモンの一覧
我々の体の内ではストレスや運動など様々な状態に対応するために、神経伝達物質による神経性の調節機構と、ホルモンによる体液的な調節機構を有している
神経伝達物質とホルモンは互いに協力して働いており、系統発生的にみると、両者は同一の起源である神経分泌細胞から出発している 神経伝達物質はとなりの神経にシグナルを伝達する
内分泌系の発達した人間においても、神経分泌細胞は脳の中にそっくり保存されて、神経内分泌調節の中枢として重要な役割を果たしている ホルモンは体液中に分泌されて、遠く離れた標的臓器に効果を発揮する
神経系には中枢神経系と末梢神経系がある
中枢神経は、末梢神経から情報を受け取り、感覚、運動、意思、情緒、反射、呼吸など、コントロールする
末梢神経は、目や耳、手足、体幹、内臓などから情報を送る
神経伝達物質は、小分子ですばやく作用するものと、分子量が大きく、ゆっくり作用するものに分けられる
前者はアセチルコリンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)など
後者にはサブスタンスP、エンドルフィン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)、成長ホルモンなどが含まれる
主な中枢神経系については、以下のサイトがわかりやすい
https://www.akira3132.info/Central_Nerve_system-top-img01.jpg
主なホルモンについては、以下のサイトがわかりやすい
音楽と痛みに関する、興味深い話
人間の脳は、脈を動かしたり心臓を動かしたりする脳幹と、感情を表す大脳辺縁系、性欲や性欲などの視床下部によってなる「旧脳」と、その上の、思考や言語を司る大脳新皮質という「新脳」にわかれます。ある種の音楽を聴いたり、心地よい音楽を聴くと「エンドルフィン」とか「ドーパミン」という物質が新脳内に出てきます。「エンドルフィン」にはモルヒネを上回る鎮痛作用があり、「エンドルフィン」は「快」の感覚を与えるホルモン「ドーパミン」の作用を延長させる働きがあります。そして聴覚は5感の中で最も原初的な器官であり、脳に直接作用するのです。
クラシック音楽の長い楽曲は「あ、この後にこういうメロディが来るな」という記憶を呼び戻すメリットがあります。想定していた記憶通りのものが起こると、人間はとても「快楽」を感じます。更にクラシック音楽は複雑な構成を持っています。複雑な構成上に美しいメロディを乗せ、それに合わせて数十の楽器による和声を作る。こうした複雑な構造をしているため、メロディを覚えた後も、聴くたびに新しい発見があります。作曲家がものすごくたくさんの伏線を引いており、その発見をする感動が、神経伝達物質を活性化します。また、様々な楽器が使用されているために幅広い周波数が含まれており、音の豊かさもエンドルフィンやドーパミンを分泌することを助けます。
〜〜〜以下、各物質の一覧〜〜〜
ドーパミン
脳内ドーパミン作動性神経の中にある細胞内でアミノ酸のチロシンを原料とし、酵素による2段階の反応によって合成される
同じ細胞内にある分泌小胞に取り込まれて蓄積され、神経細胞が刺激を受けたときに細胞外へ分泌され、作用を発揮する
この刺激には2種類のものがある
嗅覚や視覚など五感による刺激のほか、感情や求愛など本能的な行動によって起こる一過的な「外的刺激」
睡眠欲や食欲、性欲といった脳内で常に起こっている持続的な「内的刺激」
ドーパミンは中枢で主に神経伝達物質として働く 運動機能や認知機能、報酬と嫌悪、神経内分泌や視覚に加え、脳の覚醒や睡眠、記憶学習、動機形成などあらゆる行動を左右する
一方で、身体の隅々における末梢でも多くの機能を担っている 腎臓をはじめとする内臓における血管の拡張や、消化管における副交感神経への作用で胃の運動を緩和するなど
ドーパミンは報酬系での快情動を介し、ヒトや動物を行動に駆り立てる「快楽物質」として、半世紀以上に渡り広く認識されてきたが、その後の研究で「報酬予測誤差」(ドーパミン神経細胞は予測した報酬と実際に得られた報酬の違い)を表現するという解釈に変わった
報酬を得た瞬間にドーパミンが分泌されるのではなく、予測と報酬との間で差が生じた際にドーパミン神経細胞が反応する
ドーパミン神経細胞の持続的な活動は動機形成と深く関わり、報酬の得られるタイミングが近付くにつれて、ドーパミンの放出量が増える
さらに2手先、3手先の行動選択にも関与し、神経細胞の見せる反応は長期的な報酬の情報も表現できる
一度ドーパミンの放出(成功体験)を経験すると、脳は同等 かそれ以上のドーパミンの放出を皆様に要求する
これが、やるき、がんばりの動機付けと なり、次の成功へ導く一方、脳は、報酬系でのドーパミンの放出を簡単に得る方法があることを経験的に知る
(中毒状態)
アルコール・麻薬・覚せい剤などの依存を形成する薬物の多くはドパミンを活発にする作用があり、そのために報酬系が活性化するので、これらの薬物を使用すると快感をもたらすと考えられる
例 ニコチンはドーパミン、ノルアドレナリン(覚醒、食欲抑制)、セロトニン(気分の調整、食欲抑制)、アセチルコリン(覚醒、認知作業の向上)などの神経伝達物質の分泌にも関わっている
喫煙してニコチンを常時摂取するようになると、これらの神経伝達物質の調節をニコチンに委ねてしまい、自分で分泌する能力が低下する
長時間のネットやゲームの利用により、脳内のドーパミン受容体の数が減ったり、感受性の低下が起きる
ドーパミンが分泌されすぎると、その刺激に耐性ができ、さらに強い刺激を求めるようになり、その結果、脳はその刺激を常に求めるようになり、「やめたくてもやめられない」「それがないと我慢ができない」状況になる
ゲームとドーパミンについては、この資料も参考にしたい
セロトニン
ヒトではおよそ90%が消化管に、8~9%が血小板に、残りの1~2%が脳に分布
原料になるのは必須アミノ酸のトリプトファン
ドーパミンの原料となるチロシンと違って体内で作り出せないため、普段から食事で取り入れることが必要(豆腐や味噌などの大豆食品のほか、米や穀類、卵、ごま、チーズやヨーグルトというような乳製品など)
睡眠に深く関わるメラトニンの前駆物質としても有名
食事からのトリプトファンを用いて脳の神経細胞内でセロトニンが作られると、日中に浴びた光の情報によって夜間にメラトニンへ変換される
神経細胞における情報伝達だけでなく血管内での血液凝固や腸の蠕動運動にも関わっている
ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる作用を持っている
情動や攻撃性のコントロール、行動における柔軟性などに影響を与える
生理的な機能として、体温調節や痛みのコントロールを担う
不安や恐怖などネガティブな情報を察知した際にオキシトシンがセロトニンの分泌を促し、うつ症状を緩和させるように働く
メラトニン
松果体から分泌されるホルモン
魚類や両生類に始まり、鳥類、齧歯類、ヒトを含めた霊長類に至るまで多くの動物で産生され、繁殖や渡り鳥の飛来などの季節性リズムや、日々の睡眠や体温、ホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている
体内時計に働きかけることで覚醒と睡眠を切り替え自然な眠りを誘う作用があり「睡眠ホルモン」とも呼ばれている
朝、光を浴びると、脳にある体内時計の針が進み、体内時計がリセットされて活動状態に導かれる
また、体内時計からの信号でメラトニンの分泌が止まる
メラトニンは目覚めてから14〜16時間ぐらい経過すると体内時計からの指令が出て再び分泌される
徐々にメラトニンの分泌が高まり、その作用で深部体温が低下して、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになる
メラトニンは眠りを誘うほかに、抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促すなどの作用がある
オキシトシン
オキシトシンは、幅広い動物種で保存されているペプチドホルモンの1つ
脳の視床下部で作られ、主に脳下垂体を介して血中に放出される 産生部位は、視床下部の視策上核と室傍核
下垂体で産生されたオキシトシンが下垂体後葉に送られて、ホルモンとして血中に放出されるほかに、下垂体を経ずに視床下部から長い神経の軸索を通って標的細胞に運ばれてオキシトシンを分泌する
オキシトシン作動性神経は脳内や脊髄にもある 視床下部で9個のアミノ酸から合成される
鎮痛や不安の軽減、共感や他者への信頼感、摂食欲求の抑制、抗ストレス作用や摂食抑制など多岐に渡る作用を持つ
家族や心を許せる相手、ペットなどとのスキンシップのほか、リラクゼーション施術による肌の触覚刺激によっても分泌される 乳腺の平滑筋に作用して母乳の分泌を促したり、子宮の平滑筋に作用して子宮の収縮を促したりする。内在性のオキシトシンも妊娠・出産時に増加するため、「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」「抱擁ホルモン」とも呼ばれる
脳で痛みを察知するとオキシトシンがβ-エンドルフィンの分泌を促し、結果的に痛みを抑える
生理的な作用のみならず、社会行動にも関わるとされる。子を世話する母性行動を起こす作用があり、出産経験の無いメスマウスにオキシトシンを投与すると母性行動が起こるなど、様々な動物種でデータが得られている
β-エンドルフィン
高揚や鎮痛、抗ストレス作用を担っている
31個のアミノ酸から成り、異名は脳内で自製される脳内麻薬(または「脳内モルヒネ」)
有酸素運動によって高めの血圧が下がりやすくなったり正常化したりするのは、β-エンドルフィンが働くからと考えられている
その分泌量が、安静時に比べると運動や負荷がかかったときには約3倍から5倍に増加することから、運動後の爽快感や精神的ストレスの解消に大きく貢献すると言われている
性行為やおいしいものを食べたときにも分泌される
アドレナリン
副腎の中の髄質から分泌されるホルモン
主な作用は、心拍数や血圧上昇など
目の前の恐怖や不安に対して、体と脳が戦闘モードに切り替わり、立ち向かうことができる
自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まり、その結果、主な作用として、心拍数や血圧上昇が上昇し、体のパフォーマンスが高まる
覚醒作用があり、集中力や注意力も高まる
アドレナリンは脳内ではほとんど分泌されず、また、副腎髄質で分泌されたアドレナリンは血液脳関門を通過することができない
ノルアドレナリン
激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出されたりする
交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態にする
副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす
ノルアドレナリンの分泌を促すものは、痛み、かゆみ、寒暖差、人間関係などのストレス
ノルアドレナリンは、脳内で神経伝達物質として分泌されるため、恐怖や怒り、不安などの精神的な作用にかかわる
ノルアドレナリンが不足すると、やる気や集中力が低下し、また、逆にノルアドレナリンが過剰に分泌されると「パニック障害」を引き起こす原因になるといわれている
アセチルコリン
運動神経の神経筋接合部、交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出され、機能する
副交感神経や運動神経に働き、血管拡張、心拍数低下、消化機能亢進、発汗などを促し、また、学習・記憶、睡眠などに深くかかわっている
パーキンソン病では脳内のドーパミンが不足して脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、相対的にアセチルコリンの活性が強くなって運動機能の障害が起こる
逆に、アセチルコリンの不足はアルツハイマー病に代表される認知障害などの症状を起こすことが知られている
ヒスタミン
ヒスタミンは食物から直接体内に取り込まれるほか、生体内で合成される
末梢神経系では胃酸分泌、免疫反応、子宮や気管支などの不随意筋を収縮させる
中枢神経系においては神経伝達物質としても働く
脳におけるヒスタミンの作用は、覚醒、興奮などをもたらし、血圧や痛みの調節に関与する
ヒスタミンは生体内で、アミノ酸であるヒスチジンから合成される ヒスチジン脱炭酸酵素 (HDC) により必須アミノ酸であるヒスチジンから合成され、主にヒスタミン-N-メチル基転移酵素やジアミン酸化酵素等で分解され、その後、イミダゾール酢酸となり排出される
末梢では主に肥満細胞に貯えられ、刺激に応じて放出されアレルギー反応に関与する また 摂食によってエンテロクロマフィン様細胞から遊離され、胃酸分泌に関与する
中枢では、視床下部乳頭体にヒスタミンニューロンが集まっており、そこから脳内各部位に投射し、神経伝達物質として働く 睡眠・覚醒、摂食調節などに関与している
肥満細胞中に高濃度で存在し、肺・肝臓・胃粘膜・大脳にも存在し、それぞれの生理機能を担っている
サブスタンスP
正常に食べ物を飲み込んだり、咳をしたりできるように、神経に働きかける物質
通常はのどや気管の神経の中に蓄えられている
この物質が不足すると嚥下や咳の反射が鈍くなる
その他、参考