研究 理学療法士の観察における言語化能力の向上を目的としたシステムの開発 私が行っている研究は理学療法士の観察における言語化能力の向上を目的としたシステムの開発です.
理学療法士ってどんな職業?
理学療法士は病気やけが、高齢などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を支援する職業です.もしかしたら,皆さんの中にもスポーツなどでけがをしてしまって,理学療法士のリハビリテーションを受けた方がいるかもしれませんね.
運動機能が低下した状態,つまり独力で歩行したりベッドから起き上がれなくなったりした時に,リハビリテーションを受けることで歩けるようになったり,ベッドから楽に起き上がれるようにと改善します.
昨今,高齢化が深刻な問題となっている日本において,理学療法士の提供するリハビリテーションは重要な役割を担います.
高齢によって身体機能が低下した人々に対して,十分なリハビリテーションサービスを提供することは,医療コストの削減やQOL(生活の質)の向上につながります.
理学療法士を支援する研究って?
理学療法士の抱える問題の一つとして,知識伝承の難しさが挙げられます.理学療法士は観察→方針決定→治療→再観察・・・ということを繰り返しながら患者へアプローチします.このプロセスにおいてベテランと新人との間で知識・技能の差が大きく,その差を埋めるための方法論が「とにかく経験を積め」しかないないのが現状です.
「職人技」という言い方をすると想像しやすいかもしれません.例えば,観察の一種に「目視」があります.ベテランと新人では患者の歩行を観察し状態を推定することにも差が生じます.
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こういった経験によって生じている差に関して分析し,属人的であった知識を共有可能にしていくことで,「とにかく経験を積め」以外の方法論を確立する上で重要になると考えられます.
本研究では,複数の理学療法士に歩行している患者の映像を観察してその患者の状態を言語化してもらい,そのデータ分析によって得られる知見を用いた理学療法士の観察における言語化能力の向上を目的としたシステムの開発を行っています.
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この図は,理学療法士が行った動作分析テキストを解析して可視化したモノです.テキストを理学療法知識の最小単位であるPBPU(Problem-based Physiotherapy Unit)に分解し,「観察事象」(観察)とその「解釈」(緑),そしてそれらに基づく「推測」(青)にラベル分けして可視化し,その因果関係をリンクすることで,そのテキストに含まれる知識を視覚化しています.これをみることで,この動作分析テキストの特性を理解することが容易に行えます.
発表論文