正義論
ロールズは本書にて、正義の根拠としての仮説的契約について論じている
人間は、正義に根ざす不可侵性を持ち社会全体の福祉でさえ、これを侵すことはできない。正義により守られたその権利は政治的な交渉や社会の利益の計算に左右されることはない。
ロールズもまた功利主義に反対した人物
前述の憲法制定会議の開始前のような、参加予定の人々が他の参加者を相互に全く知らない状況のこと
無知のヴェールが人種、姿形、資本、権力などあらゆる特徴を覆い隠し、その状態で取られた合意のみが正義たり得るとロールズは主張する
仮説的契約の効力は現実の契約よりも強いのか?
このためには「現実の契約」の道徳的効力について、2つ明らかにするべきことがある
1. 如何に拘束乃至義務を負わせるか?
同意に基づくもの、即ち自律的な理性によって
契約が相互の利益の手段である場合、即ち相互性(互酬性)によって
2. 如何に契約が生み出す条件を正当化するか?
カント、ロールズ共に正当化しないと主張する
契約や合意それ自体は道徳的な効力を持たない(契約はそれ自体の公正さを保証しない)
合意した内容が公正であるか、常に問い直すことができる
続いて現実の契約の道徳的限界について述べる
同意あるいは契約の事実は義務があることの十分条件では無い
例えば詐欺のケースでは合意が取り付けられてもそれは合意条件が公平という意味ではない
参加者の交渉能力次第で自律性による義務は成立しない
同意あるいは契約の事実は義務があることの必要条件ですらない
即ち、相互性があれば同意が無くとも義務が発生するという意味
ただし参加者の知識の差次第で相互性による義務は成立しない
例えば「相互な利益」の価値観が両者の間で正しく共有されなければ義務が成立しない
契約に義務を発揮させる自律性や相互性は現実においては成立しないことがある
偶然性に左右されず実現が保証される契約はどのようなものであるか?
それが参加者の能力や知識が平等であり、全員が同一の場合である
以上が、無知のヴェールに包まれた(平等な人々の間の)仮説的契約だけが正義の原理について考える唯一の方法だ、とカントとロールズが主張する理由である ではその正義の原理はどのようなものか?次の議論へ…