反脆弱性
タレブは不確実性(継続的な確率的試行)に晒された対象の性質を3つに分類した
脆弱
確率的試行によって、不利益しか被らない対象
頑健
確率的試行によって、不利益しか被らないが、その不利益を許容する仕組みを持つ対象
反脆弱
確率的試行によって、不利益よりも得られる利益が大きい、または利益のみが得られる対象
確率的試行に晒されるほど、大きい利益が得られる
不確実な状況について、頑健さだけを考えるのは誤り
タレブは頑健さと反脆さを上手く合わせるバーベル戦略を推奨している 反脆い物の見つけ方作り方はオプション性、否定の道、賢者の石などなどあれこれ比喩されてるので本書をどうぞ
(抽象的対象はともかく)物理的には無際限に反脆いものよりも、頑健さに反脆さが備わったものの方がよく見られる
ある程度までは許容ができて、そこで済めば利益が得られる
身近な例では獲得免疫や筋肉など
arxivにも同じ内容が上がってるけどこっちの方が改訂してるっぽい?ので
ちなみに本の後ろに概要としての数学的説明がのってる
avashe.iconこっちだけ読んだ、ペーパーは多分私には無理
avashe.icon以下著書への言及
そのキャリアで得られたアイデアを専門的知識が無くてもわかるようにあの手この手で例えたエッセイと言える
そのため分厚いわりに同じような話が続くし、適用例に同意できない思想が混じっていたりして読む気が失せる
実際けんかっ早いスタイルなので過去の本でも評価は論争的らしい
この本の8割はともかく残りの2割だけで読む価値がある
特に和訳版『反脆弱性』の下巻の付録ⅠⅡ、補足と参考文献では確率の知識を仮定して真面目に話してくれる
一週目は本編に時間を掛けすぎないスタイルがおすすめ
まず真面目に読んで、途中から言いたいことがわかってきたら(=飽きてきたら)斜め読みで面白いところだけ拾う
仕上げに付録、もっと厳密性が欲しければ前述のテクニカルペーパーを読むと良い
タレブは確率ではなく脆さによって意思決定すべきであり、脆さを避け頑健さと反脆さを得た構造へ移れと主張する
確率分布の形を見て、構造的に正のブラックスワンを味方につけろということ
また、脆さを他人に転化することで自身だけ反脆くあろうとする人を倫理的に批判する
典型的には「実践しない」コンサルタントや思想ないし理論家、編集者が挙げられている
リスクテイクして生存し続けている=身銭を切っている人は他人へ脆さを転化していないという点で倫理的なのであり、その人の理論には実世界で通用する真理が含まれている 余談だがタレブ曰く経験則(ヒューリスティック)は反脆い方法論である
人間の寿命という観点における脆さが人類という種の反脆さに転化されている...人類種ゆるせねえ!!
本書ではこの概念を様々な例に敷衍して全方面をDisっていく
タレブは機能をふんだんに盛り込んだ最新機種をありがたがるガジェットオタクを「ネオマニア(最新性愛症)」と呼んでDisったりするので、テッキーのことは好きじゃないと思う
自分が居たことがある金融の分野は丹念にDisる、ハーバードやビジネススクールもDisる
長い年月は確率試行回数を稼ぐ強力な方法なので、長い年月を経て残っている対象全てに反脆い性質があると思ってよい
その究極的な対象が自然である
ありとあらゆるスケールにおいて反脆さという構造を利用している
特にその長く残っている対象があなたにとって下らなく見えるなら、何らかの仕組みを見逃している可能性がある
意図的に反脆さを抽出しようとするエンジニアリングが加わるものの、時間の試練に勝ち残った対象への肯定的態度や人間の理性がその実証結果に劣るとする態度はエドマンド・バークの保守主義的と言える