番号で情報整理
ジョーク好きの2人が列車に乗り合わせた。だがこの2人はジョークを言い飽きてしまっていた。
2人: 「ジョークをいちいちしゃべるのは面倒だから、ジョークに番号を付けて番号で呼ぶことにしよう。」
A:「8番」
B:「ははは。」
B:「25番。」
A:「ははは。」
こう繰り返している内にAが、
A:「125番。」
というと、2人とも「わっっはっはっはっはー。」と大笑いした。
そばの人:「え、まだそんなに面白いジョークが残っていたんですか?」
2人:「いやね、今のは初耳のジョークだったんだよ。」
「名前の効用」で紹介したTinyURLやBit.lyのようなURL短縮サービスは長いURL文字列と短い文字列を対応づけるデータベースを保持しており、ブラウザから短い文字列が送られてくると長い文字列に変換して返すという処理を提供していますが、これらは一種のデータ圧縮サービスだと考えることもできます。TinyURLやbit.lyはあらゆるURLを6〜7文字に圧縮していることになりますが、世界中のあらゆる情報は13バイトに圧縮できるという説もあります■。4バイトでIPアドレスを特定し、そのマシン上のファイルの位置を9バイトで表現すれば13バイトに収まるからです。これは冗談としても、使い方を限定すれば、ファイルを特定するために必ずしも長い名前を利用する必要はないかもしれません。自分が扱う可能性のあるデータが10万種類以下なのであれば、ファイル名などを利用せずに5桁の数字だけですむはずです。 世の中では様々なものが番号で管理されています。ほとんどの商品に13桁のバーコードが印刷されていますし、書籍には10桁または13桁のISBNが割り当てられています。このようなIDは商品にもともと印刷されているものですが、会社の備品を管理したり図書館の蔵書を管理したりするために、組織独自のバーコードやQRコードを貼り付けて管理する方法も広く使われています。 大きな組織ではこのような管理手法は意味がありますが、小さな組織や家庭などではこのような手法が必要になることはまずありません。しかし番号を利用してちょっとした管理や情報共有を行なうと便利なことがあります。限られた環境で利用する場合、桁数が多い番号は必要ありませんし、一時的に区別がつけば良いこともあります。
例えば、論文の参考文献表記や書籍の注釈番号は1〜2桁の数字が利用されています。このようなIDは、ひとつの論文や本の中でだけ使われるものなので、単純な数字で充分だというわけです。
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論文中では通常[数字]という表記で参考文献を示します
http://gyazo.com/0014191914f28de849d69985f5d19eeb.png
参考文献リストは論文の最後に並べておきます
この論文中では、[2]は「Watch What I Do」という本のことだということになり、何度か参照する場合でもいちいち「Watch What I Do」と書かなくても2とだけ書けばよいことになります。 同じように、たとえばオフィス内の情報を共有するとき、オフィス外のことは考えなくてもよいのであればオフィス内のあらゆる情報に「123」とか「456」とか短い番号をつけておけばよさそうです。例えば、「戦略会議20140123.pdf」という名前の文書ファイルを印刷した紙には「123」と書いておき、123という番号からこのファイルにアクセスできるようにしておけば、紙から元ファイルに簡単にアクセスすることができます。「123」という番号だけから中身を判断することはできませんが、中身の詳細については別の場所に書いておけばよいでしょう。オフィスで使うファイルには長い名前がついていることが多いようですが、こういう名前は紙の上に記録するのが面倒ですし、名前を使ってファイルにアクセスするのも簡単ではありません。ファイル名であらゆる属性を表現することはできないのですから、とりあえずその場所で区別可能な短い数字を使えば充分です。
ファイルがネット上で共有されていれば、ファイルを他人に渡す場合にメールなどで送る必要はなく、「123番のファイル」と伝えるだけですむでしょう。ファイルの名前が長い場合、口頭では伝わりにくいのでメールなどを使う手間が必要になってしまいます。
「名前の効用」で紹介したGyampを利用すると、簡単にこのような運用することができます。まずオフィス内で共通に使う名前(e.g. 「delta」)を決めておき、情報共有するべきWebページがある場合はそのページに新しい番号(e.g. 「1234」)をつけてhttp://delta.gyamp.com/1234として登録しておきます。オフィスの中では「delta」を使うということが完全に了解されていれば、このページの情報を他人に伝えるとき「1234」という番号だけ伝えることによって、オフィスの人間が簡単にその情報にアクセスすることができるようになります。 扱うデータすべてに適切な名前をつけるのは面倒なものです。「戦略会議資料1.pdf」「戦略会議資料2.pdf」のようなよくわからない名前をつけるぐらいなら、「123.pdf」「124.pdf」のように番号だけのファイルを作っておいて「123」が何を意味するかを別のところに書いておく方がマシでしょう。自動に連番がふられるような仕組みを用意しておけばよいでしょう。
簡単にこのような情報共有ができれば、日常的な「コピペ」操作でも短いIDを活用できるようになります。普通のコピペ操作の場合、「コピー」操作をすると決まった領域に文字列がコピーされ、「ペースト」操作をすると同じ領域から文字列がコピーされることになりますが、ひとつの領域しか使われないので複数の文字列を同時にコピペすることができません。たとえば、あるWebページのタイトルとURLの両方をコピペしたい場合、タイトルをコピペしてからURLをコピペしなければなりません。番号がついたコピペバッファを使うことができればタイトルを「1」にコピーし、URLを「2」にコピーするといったことができるようになるでしょう。Gyampはこのような用途にも利用することができます。
番号利用のバリエーション
番号を使った情報管理にはいろんなバリエーションが考えられます。
前述のgyamp.comを使った例では「delta」のようなIDを決めて使う必要がありましたが、このようなIDは自動的に設定することが可能です。たとえば、LAN環境などから現在地情報を調べて、それをもとにしてIDを決めるようにすれば、自宅とオフィスで自動的に異なるIDを使うことができるでしょう。
書籍や商品につけられているバーコードやISBNはそのまま利用すればよいでしょう。http://gyamp.com/(ISBN)/(ページ番号)のようなURLを使うことができます。
あらゆる情報を番号で管理できるようになれば、メールにメッセージを記述するほとんど必要なくなるかもしれません。メッセージ本体はネット上のどこかに置いておいて、「8番」「25番」「ははは」といったコミュニケーションができるようになるでしょう。冒頭の話がジョークでなくなってしまうことになります。
現在のところはメールで添付ファイルが山のように飛び交っていることがまだまだ多いようですが、クラウド時代にはWeb上に様々な文書や資料を置くことがあたりまえになるでしょうから、メッセージの肝心な部分は留まる情報としてネット上に置いた上で「流れる情報」としてメッセージを送ることが普通になるかもしれません。メールと完全に同等に使おうとする場合、短い数字を使う方法はセキュリティの問題があるでしょうが、適度なセキュリティを保ちつつ情報のやりとりを簡潔にする方法が重要になってきそうです。 身のまわりのものを番号で管理する
Gyampはネット上の情報を整理するのに便利ですが、身の回りのものを管理するのにも利用することができます。たとえばオフィスで無線LAN接続のプリンタを利用しているとき、プリンタのIPアドレス、インクの型番や値段、マニュアルのような情報にアクセスしたくなります。このような情報はメーカのサイトやプリンタの設定を調べればわかりますが、調べるにはある程度時間がかかってしまいます。最近流行の拡張現実(AR)技術を駆使すれば、プリンタを見るだけでこれらの情報を知ることができるようになるかもしれませんが、近い将来にそのようなシステムを準備するのは難しそうです。 私はGyampを使ってこのような情報を管理しています。手順は以下のようになります。
プリンタに数字(e.g. 170)を書いておく
そのプリンタに関するあらゆる情報を書いたWikiページを用意する
これをhttp://Gyamp.com/delta/170のようなURLに登録する
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パソコンに貼り付けた数字
このようにしておけば、プリンタの上に書いてある数字を利用してネット上のプリンタ情報に簡単にアクセスすることができます。数字をもとにネット上の情報にアクセスするやり方はバーコードでおなじみのものですが、バーコードは印刷するのも読み取るのも機械が必要なのに対し、ペンで数字を書くのは簡単ですし、数字は目で読むことができます。WebページやPDFを印刷したとき、印刷された紙からもとのURLや関連情報を知ることができなくなってしまいがちですが、紙に「1234」のような数字を書き込んでおいてもとのURLをhttp://Gyamp.com/delta/1234に登録しておけば、もとの情報に簡単にアクセスすることができるようになります。
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印刷物に書き込んだ数字
このように、数字を使って情報をhttp://Gyamp.com/場所の名前/番号に書いておくことにより、実世界の情報とネット上の情報を簡単にリンクさせることができます。また、同じ場所にいる人に対して「93番の資料が...」のようにして情報共有することができるようになります。
クリアファイル整理法
1993年ごろ、A4の紙が入る封筒(「角2」サイズ = 240mm × 332mm)を使う「超整理法」という書類整理手法が提案されて話題になりました。超整理法とは、あらゆる書類を同じサイズの封筒に入れて棚に並べておき、取り出して利用したものは必ず一方の端に戻すという単純な書類整理法です。新しく使った順に書類が並ぶことになるので検索しやすい場合が多く、手間をかけずに書類の管理ができるのが利点です。現在もこの方法を利用している人は多いようですが、超整理法による書類の整理には以下のような問題があると私は感じています。 封筒にタイトルを書くのが面倒
封筒の中身が見えない
あまり使わない古いファイルを捜すのに時間がかかる
古いファイルの存在を忘れて同じファイルを作ってしまう可能性がある
封筒のサイズ(角2サイズ)がA4より大きいのでA4書類用の棚で整理しにくい
コンピュータが充分普及した現在、以下のような方法でもっと単純に書類の管理ができる気がします。
番号を書いたクリアファイルに書類を入れる
クリアファイルを番号順に並べる
番号と中身の対応をGyampに書いておく
この方法は非常に単純ですが、以下のようなメリットがあります。
ファイルにタイトルやキーワードを書く必要がない (番号しか書かない)
大きさがA4に揃っているのでA4用の棚や文房具で整理しやすい
クリアファイルは透明なので中身を確認しやすい
テキスト検索すれば、どの番号のクリアファイルに何が入ってるかすぐわかる
番号順に並んでいるので、番号がわかればすぐ書類がみつかる
書類の属性などを沢山記述してかまわない (e.g. レシート/領収書/確定申告用/etc.)
「超整理法」の基本的な考え方を踏襲しながらIT技術を利用するこのような方法を導入したおかげで、私は書類を整理するのがとても楽しくなりました。
この方法を周囲に紹介したところ、次のような様々な意見をもらうことができました。もっともな懸念なのですが、実際にしばらく運用した経験では大きな問題になっていることはありません。
番号と中身の対応を書くのが面倒なのではないか?
⇒ 確かに手間はかかるが、「超整理法」や「山根式袋ファイル」のようにファイルにペンでタイトルを手書きするよりもパソコン上でテキスト編集する方が私には楽である 「超整理法」の場合は要らないファイルが端に溜まってくるが、私の方法だと要らないファイルがわかりにくいのではないか?
⇒ 棚が一杯になったら要らなそうなファイルを抜き出してしまえばいい気がする
ソートするのが大変なのでは?
新しく作成するファイルは一番端に置くだけなのでソートする必要はない。古いファイルを使った後で棚に戻す場合は番号順を気にする必要はあるがたいした手間ではない。
場所を移動したいときどうするの?
⇒ 番号をつけなおせば良い
というわけで、 現状では毎日沢山の書類をクリアファイルで整理中です。長年使い続けあれると良いなと思っています。