「おもしろくてダメになる」ものづくり教育コンテンツ入門②
ソダクエ1 に学ぶ「のめり込む自分」の育て方(後編)
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5. 失敗力:ソダクエ1 に学ぶ「のめり込む自分」の育て方 前章までに,ものづくり初学者がのめり込むようなるためには試行錯誤の中で起こる失敗のツラさの処理が課題であり,ゲームがこの問題にうまく対処していることを示しました。本章では,失敗を恐れないマインドセットのつくり方について言及します。さらにトライ&エラーを通した考える力の養い方を具体的に示し,『のめり込む』ためのサイクルを説明します。
本章は長いので,先に各章のまとめを次に示します。次節から,具体的に示していきます。
5.1 『自分を盛り上げる力』:失敗を恐れない 『自分上手』のつくり方
・失敗を恐れず実行するためには自信が必要
・ 手早く自信をつけるには自分を盛り上げて思い込むこと
・自分を盛り上げる力 = 自分上手
・自分を盛り上げるテクニック①:常に自分を肯定する
・自分を盛り上げるテクニック②:自分でほめて強化する
5.2 『自分で考える』ことの教え方
・教育で重要なのは『考える』ことを教えること by シーモア・パパート
・そのためには自分のアイデアを試し,試した結果を検討,批判するを体験させることが必要
・①自分のアイデアを試すための力 →5.3 「軽率に仮説を試す力」
・②試した結果を検討,批判するための力 →5.4 「失敗をプレゼンする力」
5.3 『軽率に仮説を試す力』
・アイデアを思いついたらすぐ実行 がのめり込むカギ
・アイデアではなく,試すところに楽しさや価値が生まれる
5.4 『失敗をプレゼンする力』
・失敗をしたときに必要なのは客観的・論理的に検討すること
・失敗をプレゼンするメリット①:試した結果を客観的に検討できる
・失敗をプレゼンするメリット②:失敗の原因を外的要因にもとめることにより,モチベーションの低下を防げる
・失敗プレゼンが『失敗力』につながる
5.5 楽しんで成長する「ワシを育てろ」サイクル
5.6 補足:ソダクエ1は本当に教育的なのか
5.1 自分を盛り上げる力:失敗を恐れない 『自分上手』のつくり方
失敗を恐れずに実行し成功するためには, 自信,自己肯定感が不可欠です。ここで初学者は壁にぶつかります。自信というものは成功を積み重ねるから得られるものであり,まだ何者でもない初学者がいきなり自信を持つことは不可能だからです。これはものづくりに限らず,勉強やスポーツでも同様であり,この最初の一歩(これはもっとも大きな一歩でもあります)をどうするかが問題になります。
実は,この問題にはチートともいえる有名な解決方法があります。思い込むことです。「俺スゲェ~」と思い込ませることさえできれば,自信をつけることができます。わかりやすい(?)マンガの例を挙げれば,柔道部物語では「俺って…天才だあああ~~!!」を発声を繰り返し,はじめの一歩では会長がワタを抜いたミットでいいパンチ音をださせていました(例が古すぎるのですが,主人公が初心者からはじまる最近のスポーツマンガの例を知らなくて……。いや,「つばめティップオフ!」がありましたね)。 ものづくりであれば,何かがあるたびに自分を肯定してほめる,ほめちぎって盛り上げるスタンスを身につける必要があります。私の周囲でものづくりに秀でている人は,ほぼこのスタンスを持っていました。ものづくりに限らず,創作に携わる方にも心当たりがあるのではと思います。
同様の例としては,こんな話もあります。以前にマサチューセッツ工科大学(MITの略称で知られる工科系トップ大学の一つです)を訪問した際,教員の方に「MITの学生は入学時から優秀なのか?」と質問しました。その教員の返答は,「いや,日本と変わらないだろう。学部生はまだ知識がない。ただ,『自分ならデキる』という自信がすごい。だから積極的にチャレンジして力をつけていく」というようなものでした。このことからも,自信と自信をつけるためのスタンスの重要性がわかります。能力があるから自信があるのではなく,自信が能力を育てるのです。
ただ,ここまでの話を納得できたとして,すぐに自分をほめちぎれるものでしょうか。自分で自分をほめてくださいといわれても,中々できない人もいるはずです。そこで自分をほめて盛り上げる『自分上手』のモデルが必要になります。ソダクエ1のプレーヤであるソダさんは,自分上手を学ぶための最高のロールモデルです。ソダクエ1のエッセンスを取り入れれば,子どもたちがHIKAKINさんを真似るような自然さで都合よく自分をほめる『自分上手さ』を学ぶことができます。 以下に具体的なシーン事例を紹介します。
事例紹介:
自分を盛り上げるテクニック①:常に自分を肯定する
https://www.youtube.com/watch?v=pdRAsO4-9PE&feature=youtu.be&t=116
音量調整の設定画面に対し
「OK,OK,OK。理解した。完全に理解した。」
と,自分の理解を肯定してします。
自分を盛り上げるテクニック②:自分でほめて強化する
https://www.youtube.com/watch?v=pdRAsO4-9PE&feature=youtu.be&t=1054
城内でカギがないと入れない場所に気がついたソダさん。
「はいはい。わかった。理解した。理解した。」(常に自分を肯定)
「まだ早いってことだな。俺には。」
「OK,OK,OK。わかった。わかった。わかった。頭がいい。人は学習する生き物だ。」(自分でほめて理解した内容を強化)
常に自分を肯定し,流れるように自分でほめて強化していることがわかります。
この
「常に自分を肯定」→「自分でほめて強化」
という自分上手のフローがつくれるようになれば,たとえ根拠が弱くても自信を生み出すことができます。この自信こそが,失敗を恐れずに実行するための原動力になるのです。
5.1 自分を盛り上げる力:失敗を恐れない 『自分上手』のつくり方 のまとめ
・失敗を恐れず実行するためには自信が必要
・ 手早く自信をつけるには自分を盛り上げて思い込むこと
・自分を盛り上げる力 = 自分上手
・自分を盛り上げるテクニック①:常に自分を肯定する
・自分を盛り上げるテクニック②:自分でほめて強化する
5.2 『自分で考える』ことの教え方
前節で失敗を恐れずに実行する力,すなわち自分をほめて盛り上げる『自分上手』の身につけ方について説明しました。これは,ものづくりおいては最初の一歩の踏み出し方といえます。
次に必要になるのは,トライ&エラーを通して『自分で考える』ことを教えることです。
もっとシンプルにいえば私はデューイやモンテッソーリ,ピアジェと同意見で,行動し,自分がしたことについて考えることにより,子どもは学ぶと信じている。だから教育におけるイノベーションの基本的な要素は,(子どもが自ら手を動かして)実践する方が良く,自分がしたことについて考える方が良いやり方に違いない。 そのためには,まず自分のアイデアを試し,試した結果が「正しいか間違っているか」以上の基準で検討,批判されることを体験させることが必要になります(この順番も重要です)。この自分のアイデアを試すために必要になるのが5.3節で示す「軽率に仮説を試す力」であり,試した結果を検討,批判するために必要になるのが5.4節で示す「失敗をプレゼンする力」になります。
5.2 『自分で考える』ことの教え方 のまとめ
・教育で重要なのは『考える』ことを教えること by シーモア・パパート
・そのためには自分のアイデアを試し,試した結果を検討,批判するを体験させることが必要
・①自分のアイデアを試すための力 →5.3 「軽率に仮説を試す力」
・②試した結果を検討,批判するための力 →5.4 「失敗をプレゼンする力」
5.3 軽率に仮説を試す力:イノベーションを生むチャレンジの数の打ち方
本節では,「軽率に仮説を試す力」について説明します。
「なぜ『軽率に仮説を試す力』なのか?」
「単に『仮説を試す力ではいけないのか?』」
「むしろ仮説は慎重に立てた方が良いではないか?」
おそらくそう思う方もいるでしょう。
ダメです。仮説を試す段階では軽率になってください。
なぜ軽率であることが必要かを説明するために,まずは事例から見てみましょう。
軽率に仮説を試す力 事例①:ダンジョンでピンチになりようせいのふえでなんとかしようとするソダさん
https://www.youtube.com/watch?v=BthocGbJq3M&feature=youtu.be&t=2438
城に帰ることができる「キメラのつばさ」がダンジョン内で使えないことに気が付き,ノータイムでとりあえず持っている「ようせいのふえ」を使っています。ただし,問題解決には至りませんでした。
軽率に仮説を試す力 事例②:どくの沼地でピンチになりキメラのつばさを使ってみるソダさん
https://youtu.be/BthocGbJq3M?t=2664
命からがらダンジョンの外に出るも,毒の沼地に囲まれピンチに陥ります。とりあえず,先程は役に立たなかった「キメラのつばさ」を使っています。今回は無事に城に帰ることができました。ここで,「キメラのつばさ」が屋外でないと使えないことを学習します。
これが「軽率に仮説を試す力」の例です。事例①では失敗し,事例②は成功していますが,失敗・成功は重要ではありません。大切なのは「これかな……?」と思ったことをとりあえずすぐに試す軽率さです。
アイデアを思いついたとき,慎重に検討しすぎることは禁物です。手を止めてアレコレ考えてしまうと,結局やらないということが起こりがちだからです。思いついたらすぐ実行する。自分のアイデアをすぐに試すことが,楽しさや新しい発見につながり,のめり込むカギになります。
これ関しては,あの人 (のbot)もこう言ってます。 ものを作る人にとっては,テンションをいかに保つかが全て.だから必要なものはいつも近くに置いておく.糸鋸の刃が折れて,その替えがない時,買いに行くという余計な作業が発生するだけで,テンションが保てなくなってしまって作ろうとしていたものが完成しないままになることなんてのがよくある.
今の研究環境って「これをするとこうなる」という先回り論が強すぎるでしょう.これは考えもの.なまじ知ってしまうと雑念が生じるし,「どうせ無理だろう」と心にカギがかかって創造性を削いでしまう.考えるより行動です.もっとやんちゃな研究者が増えるとうれしいんですけどね.
また,どんな良いアイデアも試さなくては絵に描いた餅です。アイデアを試してこそ,はじめて大きな価値や楽しさが生まれます。新しい発見,イノベーションは熟考よりも,行動から生まれるのです。
コレについては本田宗一郎氏は次のように述べています。 人生は『見たり』,『聞いたり』,『試したり』の3つの知恵でまとまっているが,多くの人は『見たり』『聞いたりばかりで』一番重要な『試したり』をほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない。
以上,からも自分のアイデアをすぐに試すことの重要性がわかるでしょう。
Leap before you look(見る前に,跳べ)
繰り返しになりますが,アイデアの良し悪しをアレコレ検討する前にまずは試してみる姿勢こそが重要です。自分のアイデアをすぐに試すことが楽しさや新しい発見,ひいてはのめり込む力につながるのです。
アイデアが頭の中に思い浮かんだッ!
その時スデに行動は終わっているんだッ!
5.3 軽率に仮説を試す力:イノベーションを生むチャレンジの数の打ち方 のまとめ
・アイデアを思いついたらすぐ実行 がのめり込むカギ
・アイデアではなく,試すところに楽しさや価値が生まれる
5.4 失敗をプレゼンする力:結果の検討・批評のしかた
前節では,軽率に仮説を試す力の重要性,アイデアを思いついたら,アレコレ考える前に試すことがのめり込むカギであることを示しました。
では,常に考えなくてもよいかといえば,そうではありません。考えるの自分のアイデアを試した後。試した結果に対して,考えることが大切になります。そのために必要なのが失敗をプレゼンする力です。こちらも事例から見てみましょう。
失敗をプレゼンする力 事例①:あくまのきしにチャレンジし二度目の敗北を喫するソダさん
https://youtu.be/BthocGbJq3M?t=21111
ドムドーラ訪問3回目(過去2回は死亡)。前回ボコボコにされたあくまのきしが固定モンスターであることに気づいたソダさん。「実はゴーレムじゃない?」と仮説を立てて,ようせいのふえを使う……も,効かず敢え無く散ることに。
これまでのトライ&エラーの結果をプレゼンし,
あくまのきしは固定モンスター
あくまのきしはゴレームではない
あくまのきしは現段階で倒すべきキャラではない
という3つの結論を導いてます。
失敗をしたときに必要なことは論理的に検討することです。自分を責めることでも,反省することでもありません。反省しすぎるとモチベーション低下につながり,むしろマイナスに働きます。
失敗をプレゼンすること利点は,自分のアイデアを試した結果を客観的に検討できることにあります。
失敗をプレゼンすることには,もう一つ利点があります。次の事例を見てみましょう。
失敗をプレゼンする力 事例②:あくまのきしに二度目の敗北を喫した後のソダさん
https://youtu.be/BthocGbJq3M?t=21476
ドムドーラで3回連続で死んでしまい,通常であればかなり心が折れそうになる場面です。
まず即座に自分上手を発揮し,自分を盛り上げてます。
さらに,流れるように
「(キラキラがあるのに敵がいるのは)悪質な罠よ」
「マップを見て次の街まで距離があるのが悪いよね」
「あそこまでいくと南じゃなくない?ラダムート?の」
と,失敗の原因を検討し,
「村人も悪いね。被害者な気がしてきた。だまされたわ。俺は。」
と,まとめています。
この「失敗の原因を外的要因にもとめることにより,モチベーションの低下を防ぐこと」こそが,失敗をプレゼンことの2つ目の利点です。ものづくりに限らず,チャレンジは常にモチベーションとの戦いです。失敗したときに「自分が悪い」と結論づけるとモチベーションの低下につながり,そこで思考が止まります。失敗の原因は,できる限り自分以外の外的要因に落とし込めるまで分析するべきです。
その点,ソダさんは「悪いのはオレじゃない」,「人を責めてもはじまらない」のメンタリティで,常に失敗の原因を客観的に検討し,外的要因に落とし込んでいます。
失敗をプレゼンする力 事例③:ドムドーラでだいまどうにやられた後の失敗プレゼン
https://www.youtube.com/watch?v=BthocGbJq3M&feature=youtu.be&t=20467
ドムドーラ探索(1回目)でだいまどうに殺られたソダさん。この失敗を外的要因に落とし込めなさそうな状況ですら,力技で外的要因に落とし込むプレゼン力が光ります。
このような失敗の原因を外的要因にもとめる失敗プレゼンは,「人のせいにしない」という教育を受けて,実践してきた方には異様に見えるかもしれません。しかし,最優先なのは,次のトライにつなげることであり,そのためにはモチベーションの低下は絶対に排除すべきなのです。
失敗プレゼンができるようなると,進んで失敗できるメンタリティが育ちます。これが失敗力です。何も考えず不用意に失敗するのではなく,考えたアイデアを試したときに失敗には価値があります。価値があると分かっていても,人は失敗を厭います。失敗をしたくないものから,楽しい成長過程に変えるのが失敗プレゼンなのです。
本節の最後に一つ追加です。これまで,試した結果が失敗してたときの話ばかりで,成功したときの話をしていませんでした。
成功したときはどうするか。
そのときは,「オレって天才」のメンタリティで,客観的に成功の原因を検討し成功プレゼンをすればよいでしょう。
繰り返しますが,大切なのは,結果が次のトライを生むことなのですから。
5.4 失敗をプレゼンする力:結果の検討・批評のしかた のまとめ
・失敗をしたときに必要なのは客観的・論理的に検討すること
・失敗をプレゼンするメリット①:試した結果を客観的に検討できる
・失敗をプレゼンするメリット②:失敗の原因を外的要因にもとめることにより,モチベーションの低下を防げる
・失敗プレゼンが『失敗力』= 進んで失敗できるメンタリティにつながる
5.5 楽しんで成長する「ワシを育てろ」サイクル
https://gyazo.com/07e6803b4d1bc63569485cc1b7931289
これまでに述べた
自分を盛り上げて軽率に仮説を試し,失敗をプレゼンして自分を盛り上げる
このサイクルを楽しめるようになれば,成長は加速します。次々と発想してはトライ&エラーを繰り返し,めきめきと考える力を身に着けていきます。もはや「成長」や「努力」なんて発想すら不要です。おもしろければ,のめり込んでおのずと学ぶのですから。この段階に至った学生は貪欲で 「オレは勝手に楽しんでる。なんなら,まわりがオレを育ててくれ。」
と,自分で「ワシを育てろ」と言ってくるまでになります。
この「ワシを育てろ」の境地をめざした自分を盛り上げる力,軽率に仮説を試す力,失敗をプレゼンする力の重要性を理解することがソダクエ1教材の目標でした。
重要性さえ理解してしまえば話は早いです。
あとはソダ語録を真似るのみです。
「OK。頭がいい」 ← 自分を盛り上げる
↓
「これ◯◯なのでは?」 ←軽率に仮説を試す
↓
「完全に理解した」 ←自分を盛り上げる
↓
「✕✕とか悪質な罠」←失敗をプレゼン
↓
「人は成長する生き物」←自分を盛り上げる
とサイクルを回しているうちに螺旋状にのめり込んで行きます(沼に引き込まれとも言います)。
のめり込む人材の完成です。
ここまで説明すると,時折話題になる「ゲームは子どもに悪影響である」とか「ゲームののめり込み過ぎるのは危険だ」と言った意見は,一面的な見方に見えます。ゲームばかりしている子どもからゲームを奪うという発想は,せっかく「のめり込む」力を身につけた子どもたちの力を削ぐ可能性があるからです。ものづくり教育の視点から見れば,ゲームをやめさせるのではなく,ゲームを通して「のめり込む」力を身につけた子どもたちに,ゲームに換わる次のステップを用意する方がメリットが大きいと考えています。
5.6 補足:ソダクエ1は本当に教育的なのか
本章で1点,大切な補足があります。
「ソダクエ1は本当に教育的なのか?」という問についてです。
答えはYESでもありNOでもあります。
ものづくり教育という視点を持って見ると,教員として学ぶべき点が多く,見る度に新しい発見があります。11時間視聴する価値があるでしょう(個人の感想です)。
しかし,ノーカットで小学生が見ていいものかといえば即答はできず,とくにローラ姫救出のくだりなどは,子どもに悪影響なのではと心配する声があがっても不思議ではありません(だからこそウケるかもしれませんが)。
清濁併せ呑む覚悟が必要なプレイ動画です。だからこそ,曇りなき眼で視聴して,自身で判断してください。
ここでは,ソダさんが多くのゲームをプレイする現代の若者の心情を代弁するシーンを紹介しておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=BthocGbJq3M&feature=youtu.be&t=27214
「ヌルくあって欲しいという子どもの気持ちがわかる。あまりにキツイとココロ折れるのよ。なにせ現代は娯楽が他にいっぱいあるので。」
「しんどくなったらやること他にいっぱいある。ある程度の難易度をキープしつつストレス軽減するリメイクはまあエライと思う」
ここで言及されていることは,ゲームだけでなく,教育と楽しさを考えるときには避けては通れない課題と考えています。
6.おわりに
最後に,加速したものづくりを継続させるためには,もう一つ大切なことがあります。それは,「失敗しない試し方」です。そんなものがあるなら最初から教えろと言われてしまいそうですが,これは,すでに学んでいる方も多いのではないでしょうか。「失敗しない試し方」とは,理科教育,工学教育そのものです。学校の授業を通して身につけた知識,手順が,皆さんを些細な失敗から守ってくれます。
従来の理科教育,工学教育では,「こうすると失敗しない」ということは学ぶことはできますが,失敗のしかたや,失敗したときの立て直し方といったものは明文化されていませんでした(大学ではプロジェクト実習や研究を通して学びます)。これは教員の親心からなのかもしれませんが,失敗を避けることばかり教えられていたせいか失敗すると落ち込んでしまう学生さんも少なくありません。ですので,失敗のしかた,失敗したときのフォローのしかたを学ぶ教材の必要性を感じていました。
このソダクエ1 に学ぶ「のめり込む自分」の育て方は,ソダクエ1の事例を見てゲラゲラ笑っているうちに失敗力ともいえる失敗のしかた,失敗のフォローのしかたを学ぶヒントが得られるように執筆しました。読者の皆さんが学生さんならば,是非ソダクエ1をものづくり(もしくはチャレンジ)に生かしてください。教員ならば,学生にゲームをノーヒントでプレイさせ,失敗シーンをプレゼンさせる検討会を開いてもいいかもしれません(私は試すつもりです)。界隈の方はお疲れ様でした(こんな最後まで読みます??)。
ソダさんのように,自分を盛り上げて軽率に仮説を試しては失敗し,失敗をプレゼンしては自分を上手に盛り上げてまた仮説を試すということを繰り返しているうちに,世界を変えられる力を身につけているはずです。
この「ワシを育てろ」に至るサイクルをエンジンにしておもしろくて,ダメになるところまでものづくりにのめり込む人が一人でも増えることを切に願います。
7.謝辞
本稿の題材となったソダクエ1をプレイ配信してくださった曽田すかいさん,スポンサーの感電さん,ソダさんのプレイを支えてくださった小東さんをはじめとする視聴者の皆様に深く感謝いたします。 関連資料:
関連研究:
山崎 洋一, “のめり込むものづくり教育のためのゲーム実況をモデルとした失敗の学習サイクル,” ITを活用した教育研究シンポジウム2020, C-06, pp.75-76, 2021.3
宇田悠佑, 山崎洋一, 杉村博一, 色正男, “STEAM'S を活用したロールプレイング型ロボット教育コンテンツの開発 ,” ITを活用した教育研究シンポジウム2020, C-05, pp.71-73, 2021.3
山崎 洋一, “ オンライン学習時の孤独感を解消するソーシャルVRを活用した共在空間「スマイルクラス」,” ITを活用した教育研究シンポジウム2020, B-05, pp.53-54, 2021.3
山崎洋一, "超スマート社会のためのIoT・ロボット技術を包括した教育コンテンツ," ITを活用した教育研究シンポジウム2018, 201-1-5, 2019.3
山崎洋一,元木 誠,"Wiiリモコンによる身体動作を用いたロボット制御教育と学習支援",平成23 年電気学会電子・情報・システム部門大会,CD-ROM version, pp.531-532, 2011.9
https://gyazo.com/71c7de59f100448c29cdb7f29fbd171b