“アットプロト/ブルスコ計画について”(原題:Bluesky プライベートベータ アップデート)
2023年3月2日
ジェイ・グラバー
Blueskyが始まったとき,私たちはソーシャルメディアの基本的な機能をウェブ自体のような基本的なインフラストラクチャに変えるプロトコルの構築に着手しました.昨年,初期のウェブの開放性と創造性を取り戻すことができる次世代ソーシャルアプリの基盤であるATプロトコルをオープンソース化しました.まだ数ヶ月の段階ですが,その間,ベータ版アプリ(=ブルスコ,bsky.app)をテストするためにウェイティングリストから人々を招待し始めました.
ブルスコは何のためのものだと思いますか?
このアプリは,開発者にはATプロトコルで何かを構築する方法を学ぶためのリファレンスクライアントとして.ユーザーには分散型ソーシャルアプリの使い心地やカスタマイズ性,高性能なパフォーマンスや安全性を確認するための着陸場所として機能することが期待されています.
単独でプロトコルだけ構築することもできましたが,実用的な仕様を作るためには,実際にそれを使うユーザーと協力する必要があると考えます.製品の学習にあわせてプロトコル開発を後押しするアプリを作り,“ATプロトコルの上にTwitterがどのように構築し得たか”をも示すために,アプリにはとてもシンプルなマイクロブログの形式を選びました.
現在の私たちの狙いは,ATプロトコルを完成させ,ブルスコにATプロトコルがもつ斬新な機能を反映させることです. 今後数ヶ月で実現したいことは次のとおりです.
(1) ドメイン名をユーザー名やアカウントポータビリティのために使えるようにする.
(2) 投稿内容のチェック(=モデレーション)と評価をおこなうシステムの実現.
(3) アルゴリズムによって投稿の選択とカスタムフィードを作るシステムの実現.
これらの機能については,導入される度に詳しく説明するつもりです.
今のところ,決定的に重要だと考えられる部分(特にモデレーションシステム)が仕上がるまでは,ブルスコは招待制になります.私たちは,皆さんが安全で楽しい体験ができるようにしたいので,ユーザーの増加を抑制しつつ,最優先の機能としてモデレーションツールを開発しています.
私たちは,分散化は目的達成のための手段と考えます.最終目標はユーザーには選択肢を,開発者には自由を,コンテンツのクリエーターにはコントロール権を提供することです.ATプロトコルはソーシャル・メディアにとっての新たなスタートになります.というのも,“単一の中心を持つサービス”の利便性や規模に,“単一の中心を持たないプロトコル”の開放性と柔軟性を組み合わせるエコシステムをATプロトコルは構築できるからです.
ユーザーについては,ひとたびアカウントを作ると,“単一の中心を持つSNS”とほとんど変わらない感覚でブルスコを使えます.ですが,もしご自分のサーバーでホスティングしたくなったり,あなたの個人サイトのユーザーネームを使いたくなったたりしたら,そうすることも可能です.あなたがブルスコの投稿表示やモデレーション体験が気に入らないなら,友達やデータを失うことなくサービスを変更したり,“プラグインエコシステム”(*ナイへブ注:なんぞこれ)を使ってフィードやモデレーターを入れ替えたりすることも可能です.
開発者については,ATプロトコル上で自由にアプリを作ることができます.というのも,オープンプロトコルは“ロックオープンな”API群だからです.ですがもし,別の投稿表示方法やコンテンツモデレーションを導入したいだけなら,それをプラグインでおこなうためのインターフェースを設計しているのでアプリからアクセスしてください.また,もし新しいソーシャルアプリを作っているなら,現在おこなわれているようなユーザーの電話帳から引っ張り上げるのと同じ要領で,ATプロトコル利用者のソーシャルグラフやインタレストグラフを利用できるようになります.
クリエイターについては,これまでソーシャル・プラットフォームで観客を醸成するために多くの時間を費やしてきたことと思いますが,そのつながりを維持するためにフォロワーのメアドリストを確保したいと考えることはなかったでしょうか.というのも,メールはプラットホームから独立した,オープンなプロトコルだからです.これに対して,ATプロトコルで作られたアプリによる観客との絆は,長期的にその関係を仲立ちするサービスがどう変化したとしても,メールのようにフォロワーと直接的つながりを保つことができるものになります.
もう何年も前から,“自分のデータと人間関係が自分のものになればどんなに素晴らしいか”,“透明性のあるアルゴリズムとその選択ができたら”,“ソーシャル・プラットフォームがどういうふうにモデレートされているかについてもっと説明責任が果たされ,ユーザーがコントロールできるようになれば” といったことが言われ続けてきました.
何年も前から私たちもこれを望んできました.いま私たちは,このような目標を達成できるようなシステムを設計し,構築しました.私たちは自分たちが作ろうとしている社会の未来に興奮しています.そして,オープンで自治的な生態系に命を吹き込むこの旅にみなさんが加わってくれることを望んでいます.