Minute Paperの質問 2022.02
ソヨル・エルデネ:
①エクイティー詳細のところで、大法官が汚職を受け取っていましたか。
「エクイティーは、大法官の足の大きさによって変わる」という言葉の通り、人によると思います。優れた学者であったトマス・モア(Thomas More)は賄賂(わいろ)など受け取らなかったでしょう。逆に、汚職で悪名高い人物として、トマス・ウルジ(Thomas Wolsey)がいます。
②大法官と裁判官との人間関係がどうでしたか。お互いを嫌っていましたか。
大法官とコモン・ロー裁判所の裁判官ということですね?「お互いを嫌っていた」というより「ライバル関係」にあった2人の人物として、エドワード・クック(首席裁判官)とフランシス・ベーコン(後に大法官)がいます。詳しくは、Encyclopedia Britannica、Wikipediaなどで調べてみてください。 ホラン:
①先例と判例の違いは何か。
「先例」と「判例」というのはほとんど同じ意味です。ある事件について、前にも同じような事件があれば、それは「先例(precedent)」と呼ばれます。「判例」というのはある問題について、裁判所の判決の集積があることを意味します。
②コモン・ローとエクイティーの裁判官の独立性がどのようにあったか。
裁判官の独立(⊂司法権の独立)は、1701年の王位継承法(Act of Settlemet 1701)3条に「裁判官は、国王の満足する間ではなく、非行なき限り、その職を維持する。ただし、国会の両院による弾劾の場合を除く。」と規定されたことにより確立されました。それ以前は、国王が任意に裁判官を任命し、罷免していました。しかし、裁判官の地位は高く、法律家のギルドの最上位を占めるサージェント(sergeant at law)の中から選ばれることが慣例となっており、エドワード・クックのように国王に対して厳しい意見を述べた人もいました。 ツァサンゴー:
①エクイティーに大法官が果たしていた役割
授業でお話しした通り、大法官はエクイティーの成立に決定的な役割を果たしました。コモン・ロー裁判所で救済を得られなかった人々は、国王に対して(後には大法官に直接)請願を行い、大法官はそれに救済を与えましたが、それがエクイティーになっていったのです。そして、大法官はエクイティー裁判所の長になりました。 ②裁判所の判決に陪審の決定の影響
英米法においては、「事実問題は陪審に、法律問題は裁判官に」という諺(ことわざ)があります。つまり、被告人が犯罪事実を行ったか(=有罪か無罪か)を決定するのは陪審です。陪審の出した結論を評決(verdict)といいます。しかし、陪審員たちは普通の市民で、法律のことは分かりませんので、裁判官が陪審に対して説明を行います。これを説示(jury instruction)といいます。中世の時代は、陪審は裁判官に従属していましたが(裁判官が審理をやり直させたり、偽証罪により処罰されることがあった)、近代に入って、裁判官から独立した事実認定者(fact finder)であることが確立されました。
補足:
決闘裁判について、モンテスキューの『法の精神』に書かれていることを、以下のページに掲載しました。