使いやすいインクを小さく選ぶ
万年筆インク、あるある
万年筆で書くということは、万年筆用のインクで書くということでもある。万年筆を買うと付録のようについてくるカートリッジに入ったインクで書くのが最初という人もいるだろうし、万年筆用ボトルインクが好きになり、そのインクで書きたいがために万年筆とコンバータ (カートリッジの代わりに差し込み、インクを吸入する容器) を買ってはじめる人も少なくないのでは。あるいは、プレゼントされたペンがピストン式のインク吸入システムの万年筆で、やむをえず (?) ボトルに入ったインクを買う人もいるかも知れない。 (ちなみにぼくは、2番目のインクからはじめたクチ)
いずれにしても、万年筆インクを初めて使うと、戸惑うことがある。たとえば、長く愛用してきたノートに書いた途端に文字が滲んでしまったり、裏写りしたり。あるいは、外出先でメモ帳に書いていたら、インクが乾く前に文字が小指でスレてしまったり、降り始めた雨粒で字が滲んでしまったり。
でも、ご安心を。万年筆インクには、こうしたインクの欠点というか使いづらさを解決してくれるインクがある。そしてさらに言うと、好きな万年筆とインクで書く楽しみを知るうちに、これらの欠点がほとんど気にならなくなったりすることも多い。
(ニヤリ)
カートリッジインクも楽しい
最初から肩肘張って、ボトルインクを買う必要は、もちろんない。カートリッジインクは、とにかく便利。とくに短い旅で予備のカートリッジを持ち歩ける手軽な安心感は捨てがたい。しかも、例えば J. Herbin のように、カートリッジでもたくさんの色を用意してくれているインクメーカーもある。ペンをつくったメーカー以外のカートリッジを使える場合も多い。 ボトルインクを小さくはじめる
それでもやはり、ボトルに入った万年筆インクの多様さは、本当にすばらしい。だからその醍醐味を、できる範囲で小さくはじめながら味わって見るのはいかがでしょうか。
たとえば、万年筆に付いてきたカートリッジインクを使い切ったときがチャンス。カートリッジを捨てたりせず、水で洗い (流水で何度かすすぐだけでたぶんオーケー。心配な人は、何かの容器に入れた水に30分ほど放り込んでおくとより安心)、空のカートリッジにボトルインクを入れる。
ボトルインクの値段は、1000円弱から3000円のあいだが多い。万年筆を置いてある文房具屋には、だいたい何種類かのボトルインクのストックがある。品揃えが豊富なのは、伊東屋や丸善などの大手リテイル (販売店) や書斎館のような万年筆専門のリテイル。手頃なのは、駅ビルなどに入っている文房具リテイル。意外とたくさんボトルインクを置いてあるところがある。 あと、たとえばシリンジ (注射器)やアイドロッパー (スポイト) があると便利。プラスティック製なら東急ハンズや他の DIY のリテイル、あるいはオンライン・リテイルで数100円で買うことができる。シリンジの針が尖っていない、まさにインクをペンに入れるために売られているんじゃないか、というものもよく売っている。ガラス製のかっこいいアイドロッパーを使うのも、ちょっと楽しい。 もちろん、そのペンにあったコンバーターを買うのもいい。万年筆を買ったリテイルには、だいたい置いてあるはず。オンラインでも購入可能。500円から2000円の価格で、比較的手軽に入手できる。
さぁこれで、好きな色のインクとペンで文字を書いたり、絵を描いたりする楽しさがあなたのもの。ぼくは最初の頃、ペンとインクの組み合わせが悪くてペンを壊してしまわないか、ちょっとドキドキした。でも、おっさんの個人的経験だと、現行の万年筆 (=元気なメーカーが今もたくさんつくり続けている万年筆) で、現行の万年筆用インク (=同左のインク) を使うなら、大体の組み合わせは大丈夫。
リテイルの人や一部のサイトでは、万年筆とインクの組み合わせの難しい部分を強調する人もいるけれど、それほどには難しくないはず。つまりテキトーでオーケー。もし、インクが詰まったりして書けなくなったら、そのカートリッジやコンバーターを外して、水洗いしてあげればいい。それでも心配というあなたは、万年筆のメーカーがつくっているボトルインクからはじめれば、安全性はさらに高まる。
(ぼくのようなインク好きからすると、ほんの少しつまらない気もするけれど..)
書い方のオススメは、最初から2種類の色を買うこと。2つなら選ぶときの気楽さは2倍以上。無理にひとつにしぼらなくていいし、選択肢も適度に広がる。くらべる楽しさも加わる。
(これがまた実に楽しい)
広大なインクの海の浜辺で小さくはじめる
それでも、選択肢がたくさんあるというのは、初めての人にとって悩ましいもの。オンライン情報も豊富過ぎて (そうか、このページもそのひとつですね)、読むだけでくたびれたりする。そういうあなたのための、ぼくが気づいたコツは以下。
頑張って「ベストの色」をすぐに探し出そうとしない
たくさん買おうと意気込まなくていい
使う色をしぼる
ぼくの場合は、ブルーブラック blue black と呼ばれる色が好きになったので、この色ばかり試すうちに、自分の好きなブルーブラックが分かってきた。好みは少しずつ変わるけど、ずっと好きな色はこのインクかな、という感覚
今、一番よく使っているのは、丸善エターナルブルー Maruzen Eternal Blue。暗い青の中に緑か赤が少し混ざったようなブルーブラック。流量のいい太めのニブ (ペン先) や、flex nib と呼ばれるよくしなるペン先で書くと、色の濃淡や微妙な変化がつくのだが、これがすばらしい
用途をしぼる。たとえば..
フリーライティングしたり、ゆっくり文章書いたりするのに使うインク
とにかく好きな色
文字や文章を思わず書きたくなる色
リライティングに使うインク
いわゆる校正に使う、赤や茶色
Jot down (閃いたアイディアを書きとめる) に使うインク
速乾性のものがベスト
フィールドノート
速乾性だけでなく防水性も必要
ペンのデザインや色に合わせるのも楽しい
おすすめサイト
Box: 魅力的なインクをつくりつづけるメーカー