筋力トレーニング方法事件
知財高裁
平成25年8月28日判決言渡
平成24年(行ケ)第10400号 審決取消請求事件
事件の概要
「【請求項1】
筋肉に締めつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻付け,その緊締
具の周の長さを減少させ,筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ,
もって筋肉を増大させる筋肉トレーニング方法であって,筋肉に疲労を生じさせる
ために筋肉に与える負荷が,筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するものであ
る筋力トレーニング方法。 」
が産業上利用可能性なし、医療行為であるとしてその特許性が争われた事案。
裁判所の判断
「(1) 産業上利用可能性について
本件発明は,特定的に増強しようとする目的の筋肉部位への血行を緊締具により
適度に阻害してやることにより,疲労を効率的に発生させて,目的筋肉をより特定
的に増強できるとともに関節や筋肉の損傷がより少なくて済み,さらにトレーニン
グ期間を短縮できる筋力トレーニング方法を提供するというものであって,本件発
明は,いわゆるフィットネス,スポーツジム等の筋力トレーニングに関連する産業
において利用できる技術を開示しているといえる。そして,本件明細書中には,本
件発明を医療方法として用いることができることについては何ら言及されていない
ことを考慮すれば,本件発明が,「産業上利用することができる発明」(特許法29
条1項柱書)であることを否定する理由はない。
(2) 医療行為方法について
原告は,被告が本件発明を背景にして医療行為を行っている等と縷々主張する。
本件発明が,筋力の減退を伴う各種疾病の治療方法として用いられており(甲17,
29等),被告やその関係者が本件発明を治療方法あるいは医業類似行為にも用いる
ことが可能であることを積極的に喧伝していたこと(甲63,67,68等)が認
められる。しかし,本件発明が治療方法あるいは医業類似行為に用いることが可能
であったとしても,本件発明が「産業上利用することができる発明」(特許法29条
1項柱書)であることを否定する根拠にはならない。 」