構成要件充足性についての自白成立性
大阪地裁は、
「自白(民事訴訟法179条)は,具体的な事実について成立
するものであり,ある事実を前提とした抽象的な評価について成立する
ものではない。この点,被告製品の構成に係る原告及び被告らの主張に
係る「緊密に挿嵌」との文言は,嵌合突起8(下方膨出部80)を嵌合
孔10に挿嵌させたときの状態を評価したものであり,事実そのもので
はない。また,前記ア認定の事実経過からしても,原告は,本件訴訟に
おいて,被告製品が原告製品と同様,有底短円錐状の嵌合突起8を嵌合
孔10に挿嵌させた際,嵌合突起の外周面と嵌合孔の内周面とは接触せ
ず,隙間ができることを念頭に置きつつ,このような状態も「緊密に挿
嵌」に該当するとの認識のもと,被告製品の構成について「緊密に挿
嵌」との文言を用いて特定したのに対し,被告らも,原告製品に依拠し
た形状を備える被告製品を販売等してきた経過もあり,原告と同一の認
識のもとで,上記状態を「緊密に挿嵌」と表現したものといえるから,
やはり「緊密に挿嵌」は事実そのものを摘示したというより,上記のよ
うな物理的な状態を評価したものである。そのため,かかる抽象的な評
価の前提となっている嵌合突起8や嵌合孔10の形状等の事実関係につ
いて自白が成立したと見る余地はあるものの,挿嵌時の状態が「緊密に
挿嵌」と表現されるべきものとの点について自白が成立したとはいえな
いし,ましてや構成要件Cの一部である「緊密に挿嵌」を充足するとの
点について自白が成立したともいえない。」とした。
控訴審も判決を支持。